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完全フィクション
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何もかもがつまらなかった。





引きこもってから何年が経っただろう。きっかけなんて覚えて無いし、別段何も無かったのかもしれない。家族と仲が悪くなった訳では無いから、家から出ないだけで、普通に話した。家族は何も言わなかったし、今までと何が変わった訳でも無くて、普通に生活していた。働かなかったけど。だから俺みたいなのは引きこもりなような、ニートなような、そんな所までどっちつかずのつまらない人間だったんだ。

ありがたい事に家族はちゃんと経済面でも面倒見てくれた。色々あってみんな亡くなってしまって、俺一人になってしまってからも、充分過ぎる程の蓄えを残してくれたので、とりあえず家の中で一人で生きていく事が出来た。生活するべき衣食住はネットで注文して届けてもらうだけで事足りた。別に人に会うのが嫌な訳でも無かったので、荷物も問題無く受け取れた。

と、言う訳で絶賛引きこもり継続中である。誰に迷惑を掛けるつもりも無いし、家族の蓄えをありがたく使わせてもらいながら、一人で生きていくつもりだ。運動したり栄養にも気を遣って生きてるからか、これと言って病気になった事も無い。元々節約とか大好きだし、支払いなどは家族が口座引き落としにしてくれていたおかげで、本当に家の中だけで人生が完結してしまっている。

とりあえず家の中で出来る興味のある事は片っ端からやってみたし、それなりに楽しめた。かと言って熱中するものも無かったのだけれど。つまらないなあとか、飽きたなあとか思う事はあっても、別にそれが外に出たいと言う理由までには辿り着かない。居心地が良いからかな。暇があれば掃除をしたり、模様替えをしたりして。

実は暇にまかせて自作のダストシュートを作ってしまったので、自分の部屋からゴミ置き場にゴミを出す事も出来る。家の前がゴミ置き場になってるにも幸運だった。。ゴミの分別もネットで把握してるし、ちゃんと分けている。ご近所様に文句を言われた事も無いので、特に問題は無さそうだ。

とはいえ他人から見たらきっと俺の様な人間はゴミのような人間として認識されているであろう事は想像に難くない。だけど自覚もあるから別に腹も立たない。そんな生き方をしているのだから、仕方のない事だと思う。

もし自分を分別するとしたら何ゴミだろう。きっと感情の薄い自分は、燃えないゴミだな。何に熱中する事も無いし、燃える事なんてこれから先も無いだろう。惰性で生きていく。そしていつか死ぬ。

ニュースで車が突っ込んでビルが爆発したとか、大勢の人が殺されたとか。子供が殺されたりもしているらしい。やれやれ。同じゴミでも、他人に迷惑を掛けるようなクズにはなりたくないものだな。

俺が恵まれているだけなのかもしれないけれど。
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テーブルの上でコロコロと転がすと、それは何とも気持ちが良かった。私は泣いていた。





昨日の夜から徹夜で作った。あの人の喜ぶ顔が見たくて、私は本当に、情けない話だけど今までで、人生で一番頑張ったと思う。自分で食べても、ショラティエが作ったんじゃないかって思う程美味しかった。これなら大丈夫。あの人に美味しく食べてもらえる。その時は想うだけでにやけ顔が止まらなかった。

朝からテンションが高かった。寝不足の顔を隠さなきゃって想って、一生懸命丁寧に顔を洗ったり、うっすら化粧もして。ナチュラルメイクってやつで、すっぴんに見えるように頑張った。集中出来たからかもしれなけど、思い込みでも良い。鏡を見た時の私は、今までで一番きれいだったと思う。

一日中あの人の事を考えながら、あの人の行動を追った。まるでストーカーみたいだわ、と自虐的に苦笑した。でも笑ってる場合じゃない。渡さなきゃ。あの人に好きですって。付き合って下さいって言わなきゃ。たくさん頑張って来たんだから。大丈夫。勇気を振り絞って。頑張れ私。

あの人は色んな人に好かれているから、なかなか一人になってはくれなかった。あの人に彼女がいない事はわかってる。確認してある。私を選んでくれるかはわからないけれど、せめてあの人に伝えたい。あなたが好きですって、ちゃんと自分の口から伝えるんだ。





やっとの事であの人が一人になって。都合よく人気のない建物の裏側なんか行くものだから、チャンスだと思ったの。その時確かに、私は勇気を振り絞った。

でもね、私が声を出すその直前、あの人は別の女の子にチョコレートをもらう所だったの。私は咄嗟に物陰に隠れたし、女の子もあの人も夢中で周りに気を配れなかったみたい。私がいる事は気付かれなかった。

女の子は私がとても素敵だと思っている人だった。今まで見た事が無いぐらい真っ赤になって。あの人にチョコレートを渡していた。ちゃんと告白もして、あの人からのOKももらえた、女の子は頑張った。頑張ったよ。凄く頑張った。私よりもね。

私は二人に気付かれないように静かに、泣きながら、でもとても嬉しい気持ちと悲しい気持ちに苛まれながら、その場を後にした。これで良かったんだよ。私なんてあの人につり合わないし、あの女の子は本当に素敵だから。私よりもずっとずうっと、幸せになって欲しいと思う。きっとあの人も幸せになれる。





家に帰ってたくさん泣いて。説明出来ない気持ちのまま眠りに就いて、まだ泣いてる。こんなに引きずるような女が相手じゃ無くて良かったよ。あの人を困らせるだけだもの。

私は何度も泣いては顔を洗って、笑顔を作ったりした。

でも気持ちの整理がつかなかった。

こんなにも自分の事しか考えられなかったんだな。私って。
俺は一念発起して、この部屋を出る事にした。

何故かって?このくだらない世の中に鉄槌を下す為さ。

そして何よりもこのくだらない俺の人生を終わらせるために。

最期に大きな花火を上げてやろうと思ったんだ。

有言実行が美しいとされるけれど、犯罪者の美学としては不完全だと俺は思う。

申し訳ないが俺が恨み憎んでいるのは特定の誰かじゃない。この世界の全てだ。

自分でも俺は狂っているのだと、いや、狂ってしまったのだとはわかっていたのだが、溢れ出して止まらなくなった激情を俺自身が、そして他の誰かが止める事なんて出来やしない。

限界はとうに越えていたんだ。何よりも誰に知らせたわけでも無い。俺自身が自分一人で思い付き、これから実行する。失敗したとしても必ず別のアプローチで成し遂げることを考えた。誰にも伝えて無いのだから、失敗した事すら誰に知られる事も無いだろう。無理はしないで良い。確実に成し遂げる事を考えるんだ。

しかしながらそんな心配をする必要は無かった。





実行する日、自分の鼓動は思いのほか静かで、緊張する事も無かった。計画は嘘のように上手く行った。それはまるで神に愛されているかのように。鍵の付いたタンクローリーを見つけた。迷わずそれに乗ればエンジンをかけるのはたやすかった。

大きな会社の、誰もが知っているような会社のエントランスに突っ込む事にした。だがそこで死んではいけない。そんなもの、大した花火ではないし、俺自身まだやるべき事があった。

エントランスには軽々突っ込む事が出来た。途中で飛び降りて無傷だったのはありがたい。とっさに物陰に隠れた。衝撃で爆発した。飛び散った破片で相当の人間が死傷した。こんなものでは終わらない。

武器になるものはたくさん持って来た。改造したエアガンで自作の銃弾を打ち出せば、人間なんて脆いものだった。たやすく殺す事が出来た。バットで殴り殺したり、意外と皆あっけないものだった。あまりに上手く行きすぎて、警察に取り囲まれる頃には疲れ果てていた。だが捕まる訳にはいかない。

人のいなくなったビルのガス栓を開けて回った。どれだけ上手く行くかはわからない。携帯電話を使って、人質を取って警察を牽制しながら最上階に辿り着いた。

導火線に火を点けて屋上へ飛び出した。人がゴミのようだとはよく言ったものだ。見下す景色はゴミだらけ。そして俺自身もゴミでしかない。

ここから飛び降りよう。鉄柵にロープの片側を結びつけると、輪っかを作り首に巻き付けて、俺は大空へと飛び出した。











そんな夢を見た。

家に火を点けて首を吊る間際の妄想。

引きこもってからと言うもの、家族にも迷惑を掛けてしまったせいか、みんな心労で死んでしまった。

蓄えも全て底を尽きた。

後悔は何も無い。

最期に素敵な夢を見た。

さあ、旅立とう。

足元の箱を思いきり蹴とばした。
「さよならは、言わないよ。」

先輩に別れを告げて、車に乗り込む。振り返れば、寂しそうに見つめる先輩の姿。

本人もそうだし、家族も。金遣いが下手くそで、いつも金を貸して欲しいと無心して来たり、突然居候になったりした。本来なら怒って突っぱねる所だったが、金の事以外では楽しく話せる先輩との生活は、様々な事でへし折られていた心にはありがたい存在だった。

最初の頃は何度もおごってもらったけれど、どちらかと言うと最後にはこちらの方がおごる回数も金額も多くなっていた事だろう。

子持ちの彼女と付き合うのに掛かる金額がどれほどのものか知らないが、彼は自分のケツを自分では拭けなかった。要するにダメ人間だ。

かと言ってコミュ障と言う訳でも無く。どちらかと言えば誰もが一緒にいて楽しいと思えるような要素を持っていたと思う。それだけにもったいない。金遣いのだらなしなさで去って行った人脈も少なく無かっただろう。

きっと最後には先輩は孤独になった。それは俺が先輩に見切りを付けたからだ。冒頭のセリフは、せめてもの手向け。とは言え家も金も無くなった先輩に泊まる所と食を一晩分提供してやったし、新しく何とか泊めてもらえる施設が決まった時には、生活用品も買ってやった。

それが全て終わり、まともに一人で生きて行けるようになるまで、連絡もして来るなと伝えたのだった。

だから先輩の努力次第ではまた会う事もあるだろう。それは何年掛かるかもわからない。でもこのままじゃいけないと思った。それは先輩の為でもあるし、人生を建て直した自分にとって、先輩にも自分の力で人生を建て直して欲しいと強く願ったからだ。

これまでだってずっと先輩を助けて来た。きっと充分過ぎる程だろう。それでも先輩は自分の力で自分の人生を何とかしようとは思えなかったらしく、ホームレスにまで落ちぶれてしまったのだ。

それは先輩自身がああはなりたくないと思っていた先輩の親御さんそのものであり、あまりにも同じ末路に数奇な現実を感じずにはいられなかった。…いや、持っていた人格からこうなることは必然だったのだろうと思う。

そして当然付き合っていた子持ちの彼女からも三行半を突き付けられた。とはいえ別に結婚していた訳でも無く。そこもだらしないと言えばだらしなかったのだと思う。

先輩には危機察知能力と覚悟があまりにも足りなかったのだ。自分の人生を自分の足で歩いていなかったのだ。

願わくば、見違えるような姿で、いつか再び目の前に現れてくれる事を願う。
「どいつもこいつも浮かれやがって。」

そんな事をぼやきながら私の友達が空き缶を蹴り飛ばした。

「何が面白いんだか俺には理解出来ないわ。」

そう言って唾を吐き捨てる。

私の友達はガラが悪い。当然の事ながら人もあまり近寄りたがらない。

私だけじゃないかな。こうして何らかの理由を付けて定期的に会ってるのって。

あまり私にも詳しくは話してくれないけど。家族とも上手く行って無いみたいで、いつも家の外にいるから、何となくそばにいる私といつも一緒にいる。

私といても、楽しくないのかな。それとも、一応あなたなりの照れ隠しだったりするのかしら。

別に私とあなたは恋仲と言う訳でも無いし、誰がどう見ても私とあなたが一緒にいる事に首を傾げられそうな…実際何度も首を傾げられた事もあるけど…そんな不揃いの二人。

不良、なんていったら何だかあなたが陳腐になってしまうような気がするけど。でもあなたはやっぱりそんな風にカテゴライズされて色眼鏡で見られてしまうんだろうね。

私は一つ、溜息を吐いた。

「お。お前も不満があるのか?(笑)」

あなたが笑う。

あなたは私があなたと同じ気持ちだって思ってくれたから笑ってくれてるのかな。

私の気持ちとあなたが一緒でいてくれたら、私はどんなに幸せになれるだろう。それはもう笑う、なんてどころじゃなくて、狂喜乱舞してもおかしくないぐらい嬉しくなれるのだろうけれど。

だけど私はあなたと一緒の気持ちでいるのか、確かめるのがとてもこわい。

だからこうして曖昧な関係のまま。ずっと一緒に毎日を過ごしているの。

あなたは気付いてる?それでいてはぐらかしているのかしら。気が付かないふりをしてくれてるのかな。

あなたもこわい?

無口な私は、あなたに微笑み返す事が出来ない。勇気が無い。あなたともっと心を近づける勇気が。

もし上手く行ったとしても、あなたと途中で上手く行かなくなったら、もっともっと辛くて苦しい。だって私は一生、永遠にあなたと一緒にいたいと思っているから。私はとても失敗を怖がっているの。

でももう限界かも。私の心はあなたでいっぱいで。みんなが怖がるあなたを好きで好きでたまらなくて。もう二度と離れたくないって思う程に、引き裂かれるような思いでいつも手を振ってるんだよ。

ねえ、私といて楽しい?私といたい?

「私の事、好き?」

あなたがはっとした顔をする。

しまった、口に出してしまった。

もう後戻りは出来ない。

でもね、私はもうあなたがどんな答えを出しても受け止める事にしたの。

だってあなたが好きだから。

「俺は-…」
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