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完全フィクション
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「座布団ぐしゃーw」

親戚の子供を預かった。

目の前で山積みされた座布団に突っ込んだ
風呂上りの子供。トランクスとTシャツで座布団にまみれる。

「おいおい、あんまりいたずらするんじゃないぞ。」

人の話を聞いているのかいないのか、ウフフアハハと
座布団にまみれながら笑っている。その姿がどうにも
可笑しくて、こちらまで笑ってしまう。ウフフ。アハハ。

「座布団の海なんです。すいません。」

「なんで謝ってるんだよwせっかく風呂入ったのに埃まみれになるぞ。」

ビシッ!と敬礼のポーズを取った子供。

「埃まみれじゃありません!座布団まみれです!」

「そこにこだわるのかよwほらほら片付けてやるからどいてろ。」

部屋の隅に逃げて、体育座りで座布団を俺が片付けているのを
何が楽しいのか、笑顔で眺めている。子憎たらしいなぁ・・・・w

俺は別段子供が好きではない。が、何故か子供に好かれる。
俺なんかよりもっともっと子供好きな奴なんていっぱいいるのに。
俺の両親にしろ、とある友達にしろ、子供を見るだけで顔が
笑顔に変わりくしゃっと潰れたようなにやけ顔で喜ぶ。

どちらかと言うと俺は特に強い父性本能?もなく、
寄って来ればかわいがるし、向こうが興味なければ
こちらも話しかけることもなく、普段通りに過ごす。

子供だって人間なんだから、いろんな奴がいるし、
ある程度の年齢の差は考慮するが、一人の人間として
接することにしている。だから子供にとってすれば
そんな俺の態度が自然体に見えるのかもしれない。

俺が座布団を片付け終わると、待ってましたとばかりに
座布団に飛び込む子供。勢い余って頭を壁にぶつける。

「大丈夫か?すごい音したぞ。」

覗き込むと、無表情のまま寝転んでいたが、俺の顔を
見るなりニタァと笑って、エヘヘヘヘヘと照れ笑い。
起き上がらず、片付けた座布団の上でもみくちゃになる。

「しょうがねぇなぁ・・・・w」

子供が興味なくなったところで片せばいいかと苦笑しながら、
なんだか可笑しくて転げまわる子供を眺め続けた。
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彼女は黙ったまま、読書を続けた。

僕は後ろから優しく抱き締めて、頭をなでる。
彼女は特に何を思うわけでもなさそうに、
無表情でこちらを振り向いた。かわいい。

彼女の瞳に見つめられると、動けなくなって
しまいそうなほど恥ずかしくなって、こちらは
挙動不審なほどに緊張してしまう。

少し自分の心をごまかすように話し始めると、
彼女はくるっと首を傾げたり、キョロキョロ目線を
ずらしたりして、興味があるのかないのかわからないが
こちらの話をとりあえずは聴いているようだ。

彼女の心はまったくわからない。だからまるで
自分の心が彼女に見透かされているかのような
錯覚に陥る。いや、見透かされているのだろう。

何より、見透かすも何も、自分の気持ちを彼女には
伝えてあるのだから、何も隠していないのだが。

彼女の気持ちは、きっとこっちを向いてはいないだろう。
だけど彼女と目が合い、話をしてるだけで浮かれてしまう。
学生時代のような恋心を抱いているのだろうか。

それ以上に、本当に彼女に惹かれている自分がいる。
全く持って恥ずかしい話なのだが、否定のしようがない。

彼女の向かいの席に座りなおし、再びこちらには
興味なさげに読書を始めた彼女を見つめる。
それだけで幸せだなぁ。一緒にいる彼女も幸せを
感じているといいなと思う気持ちは、贅沢だろうか。
彼は特に僕の親友というわけではなく。
だけどもよく僕の家に相談をしに来る。

「どんなアプローチも彼女は嫌いみたいなんだ。
嫌われてるのかな?いつの間にか、
彼女と話すことが楽しかったはずなのに、
何を話していいのかわからなくなってしまった。」

「うん。嫌われてるかどうかはわからないけど、
恋愛対象として付き合いたくはないのかもしれない。
僕は彼女と会った事がないから、あくまで憶測だけど。」

「もっと彼女と仲良くなりたいし、もちろん出来れば
恋仲になりたい。でも僕にはその術も、わからなくなってしまった。」

「ふむ、片思いまっしぐらだねぇ。」

「微笑ましく見てる場合じゃないよ。どうしたらいいんだろう。」

「僕が君の立場だったとしても、
ちょっと手段は思い浮かばないな。」

「そんなぁ。」

女々しいなぁ、と思いながらも気持ちはわかる。
僕も真剣に人を好きになったことがあるから。

「彼女は無口だし、俺の言葉も面白くないのかもしれない・・・・。」

ついに自己嫌悪が始まってしまった。
『彼女』とやらは強敵そうだもんなぁ。

「んーアプローチもダメ、話題も見つからないんじゃ
あきらめた方がいいんじゃないか?話さなくても彼女とやらが
楽しさを感じていてくれるのならまだ救いがあるんだけど。
それは僕には全く判断がつかないから、わからない。」

「でも彼女が好きなんだよ。人間性も、笑顔も。
素敵な創作センスや、頑固なところもね・・・・。」

「頑固なんじゃあますます曲がりそうにないじゃないかw」

「そうなんだよねぇ・・・・・。」

彼と初めて会った時は、豪快な人間と思ったけど、
(実際僕以外の人間の前では豪快なままだが)
これじゃあまるで恋するおなごだよ。

「彼女が好きになってくれて、向こうからアプローチ
してくれるといいけどね。あくまで希望的観測だけど。
可能性の低いギャンブルやってるようなもん。」

「一緒にいても、好きで好きでたまらないんだけど、
先に釘を差されてるから手の出しようがない。
顔を合わせた時に、ごく一般の知人のような
立ち振る舞いしか出来なかったよ・・・・。」

「うーんその条件じゃあ僕も同じ目に遭ってただろうな。」

「どうしたらいいんだろう。」

どれだけ長い時間二人で考えても、答えなんて出るはずがない。
だけど、僕に話すことで彼の苦しみが少しでも紛れるのなら、
彼が僕を尋ねて来た意味もあるんじゃないかと思う。
彼の恋が幸運にも成就するのを祈るしかなかった。
死にたいって言うから。

自分なんて必要無いなんて言うから。

生まれてこなければよかったとか言うから。

苦しくて仕方ないとか言うから。

もう生きていたくないとか言うから。

平気で自分を傷つけるから。

人に刃物を向けるから。

言葉とは裏腹に、人を巻き込んでも同じことを繰り返すから。

自分は良くても相手がダメとか言うから。










一人残らずバラバラにしてやった。
ぐちゃり。足の裏に感じた違和感は現実のものだった。

「ああ、いやだなぁ。昨日食べたトマトのせいだろうか。」

足の下には、潰れたトマト。よく見ると床一面にトマト。
いや、もしかしたら地面なのかもしれないが、全く見えない。

「あれだけトマト嫌いだって言ってるのに・・・・。」

ひとつひとつ踏み潰しながら歩いていく。
足の裏の感触が実に気持ち悪い。

「トマトなんて足元に敷き詰めるもんじゃないな。
トマトだけじゃない。どんなものでも、足元になんて
敷き詰めちゃいけないものなんだ。」

誰かがアニメに出てくるイガグリのような真っ黒な
妖怪を敷き詰めたいとか言ってたけど・・・。

あれ?自分が言ったんだっけ。なんにしろ
想像以上にこの状況はウザイ。なんとかしてほしい。
が、敷き詰めてしまったものは仕方がない。

その上を歩いていくしか、進むことは出来ない。
羽があるわけでもないから、飛ぶことも出来ないし。
いや、羽があってもペンギンみたいに飛べない奴だっている。

ああ、そういえばペンギンってかわいいなぁ・・・・。

こんなことを考えている間にも足元で着々とトマトは潰されていく。
大体なんでトマトなんだ。ピーマンだったらまだマシだったのに。
オクラだったらやだな・・・。と言うか、野菜である必然性がない。
納豆とかだったら最悪だ。グチョグチョだ。ネチョネチョだ。

真っ赤じゃんか・・・。しかも血の色ではない鮮明な赤。
酸っぱい匂いがツンと鼻をつく。味が甘くても、匂いは酸っぱい。
こんな足蹴にしたトマトの味なんて確認したくもないが。

「これじゃあいつ拭いていいのかわかりゃしない。」

それでも一面に敷き詰められたトマトを、
踏み潰して進むことしか、繰り返し踏み潰して
進むことしか、自分には為す術がなかった。
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1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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