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まさか自分がこんな目に遭う事になるなんて、数年前は思ってもみなかった。



今まで見て来たのは、顔の丸い彼らの無残な姿。気が付けば曲げられたものや、それはもう力任せに折られたものから、時間を掛けてなぶり曲げられたものもいた。

我々はやりづらいのであろう、その誇らしい多叉の鉾のような出で立ちが、ある種危険から遠ざけてくれていたのだった。

いとも簡単に曲げられていく奴らを横目に、あれだけの衆目を晒しながら見るも無残な姿で役割を終えてしまうのはこんなにも悲しい事なのだな、と他人事のように思ったものだった。

しかし。

しかしだ。

どの時代にも勇者はいる。挑戦者もいる。向上心があり、技術研鑽を積み重ねて、想いも寄らないことを成し遂げてしまう達人は、いつの時代にも奇跡的に、いや時代の流れから必然なのかもしれない。

私は信じられないものを見た。

仲間たちが次々と曲げられていってしまうのだ。いとも簡単に。そう、顔の丸い彼らが次々と曲げられていくように。

私は恐怖した。仲間たちの下で、いつしか、明日は私の番なのかもしれないと、とにかく怯えながら、そして選ばれないことだけを祈りながら、毎日の平穏に安堵しては、また恐怖する日々を過ごした。

そして悪い事は重なるものなのだなと思った。ついに私がいる場所を移される時が来た。しかも衆目に晒されるような状況を察することが出来る準備の様子。私はついにこの日が来たのかと覚悟を決めなければならなかった。

我々は頑丈な身体で出来ている。だからこそ挑戦のしがいもあるのかもしれない。

デモンストレーションとばかりに丸い顔の奴らの、新たな犠牲者が積み上げられていく。他人事であれば憐みもしたがそんな余裕は無い。次は私たちなのだ。

そして一人一殺と言わんばかりに、ひとりひとりの前に並べられていく。私はまだ並べられずにいた。仲間たちよ、すまない。私はまだここにいる。

丸い顔のやつらよりは時間が掛かるようだが、凄惨な仲間たちの曲げられていく姿が目に入る。せめて仲間たちの最期ぐらいは見届けよう。覚悟を決めて曲げられていく様子をしかと見届けていた。

すると私が突然持ち上げられた。一番の加害者である憎きあの達人だ。彼に曲げられた仲間たちの数は計り知れない。そして軽そうな雰囲気で私を持った。

「スプーンでもフォークでも、曲げるのはそんなに難しくないんですよ~。コツさえ知っていれば…ほーら!」

視界が歪む。ブンブンと身体を振り回されると、私の身体は四方八方にねじ曲がっていた。

『おお~!』

凄惨な見世物と言うものは時に人の興奮を誘うらしい。私の無様な姿を見て観客が熱狂している。

さらば仲間たちよ。せめて何かを食べる為の道具として、生涯を終えたかった…。まさか曲げられるために生涯を終えることになろうとは…。





無念。
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