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椅子に括られて。

猿轡を噛まされて。

目隠しをされて。

今が昼なのか夜なのかもわからない。

そんな部屋に監禁されている。

いつのまにかこんな状態になって。

それからどれぐらい経っただろう。

あまりの繰り返しの毎日に記憶すらも曖昧になっている。

何故か一人の異性が世話をしてくれている。

食事、排泄…。基本的欲求から生まれ出でるものに対しては全て片付けてくれているようだ。

もちろんそんな状況を望んでなどいない。

出来る事なら今すぐここから逃げ出したい。抜け出したい。

しかしながら気が付けば睡眠もベッドに縛られてきちんと?眠れてしまっている。

いつしかこの状態に安堵感すら覚え始めている自分が腹立たしい。

しかしながら今の所上手い方法が思い付く訳でも無く。

きつめに縛られている訳でも無いのだが、絶妙な所で自由は奪われているようだ。

たまに呼吸音が聞こえるが、あまり話しかけては来ない。

それは知っている顔なのか、全く知らない顔なのか…、

興味は尽きないけれどもとにかく聴くことも見る事も出来ないのだ。

悔しくて悔しくて涙が出ることもある。

その涙を優しく指やタオルのようなもので拭いてくれる。

そんな優しさがあるのなら、何故自由にしてくれないんだ!

叫んで訴えかけてもウーウーと呻くだけになる。

なんでこんな仕打ちを受けなければならないのか。

全く思い出せない。何が原因かもわからない。

ただ毎日、望んでもいないいたれり尽くせりの中に身を溺れさせるだけだ。

最初の頃はこんな目に遭わせた奴を殴ってやりたいとも思ったが。

今ではもうただただなぜこんなことをしているのかと問い質したいだけだ。

しかし今がどんな状態でどんな時間なのかもわからないまま。

私は死んでいくのかもしれないな…。と漠然と思った。





「あの患者さん、とても植物人間とは思えないわ。」

「一体どうしたんだい藪から棒に。」

「だって涙を流したり、何かを言おうとしているように見えたりすることもあるのよ。」

「脳波はほとんど動きすら感じられないんだがね…。」

「私のことはわからないかもしれないけれど、何かうっすらと感じるものがあるのかしら。」

「こればかりは我々でも本人でも無ければわからないのかもしれないな。人体の神秘だ。」

動けない人間の少しだけ希望の込められた錯覚。それとも幻想だろうか。

私は自分がいつかそうなるかもしれない可能性を思うと、真摯に職務を全うし続けることが救いなれば良いと、柄にもなく神に祈った。
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誕生日:
1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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