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完全フィクション
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「しかし気味が悪い仕事よね・・・。」

重い鉄の扉を閉めると、あたり一面の砂漠を歩き出した。

「まぁそう言うなって。いい金もらってんだろ?仕事は仕事で割り切った方がいい。」

同僚は伸びをしながら言った。

「あの闇の向こうに何がいるのかしら・・・。」

「それは知らない方がいいだろうな。」

同僚が意地の悪そうな笑みを浮かべる。

「俺たちの前任の1人は子供だったそうだ。」

「子供!?」

「ああ。毎回同じようなことの繰り返し。しかも渡せれているシナリオに沿って
まるで自分たちが話してるかのように演技しながら話さなければならない。
子供だからな。好奇心に負けたんだろう。あの線を越えて闇の向こうを
確認しようとしたらしい。」

「それで・・・?」

「気がついたら、骨も残さず血と肉片だけが転がっていたんだと。」

「どういうこと?」

「俺たちだって闇の向こうの何かが出てきた時(?)の感覚は、
うまく説明できないだろ?それと同じさ。一番しっくり来る言葉が、
『気がついたら殺されていた。』なわけさ。」

「誰に聞いたの?」

「君の前の僕のパートナーさ。彼は無事任期を終えて辞めたがね。」

「そう・・・。」

「あまり深く考えず、ただ言われたことだけしてればいい。
後は気持ちを切り替えて、日常を楽しもう。」

「・・・そうね・・・。」

納得は行かなかったが、納得せざるを得ないことを理解するしかなかった。
自分の命を捨ててまで知ろうとは思わない。

「おっ、空港が見えてきた。」

私達ひとりずつ一台用意されている空港に着いた。

「それじゃ、またの仕事の時間に。」

「ええ・・・。」

お互いが同時と言っていいほど、セスナに乗り込んだ。
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さらに同僚は続けた。

「そして、情報で有利になるとは限らない。
君にとって不都合だったり不愉快だったりするのかもしれない。
しかし面と向かってそれを咎めることすら出来ない。
君はただ、悶々と怒りを自分自身に沈めて行く事しか出来ないんだ。」

「まぁ、正規の手段ではない以上、それは当然のリスクよね。」

「まあね。知らない方がいいこともあるって事さ。
何でもかんでも知っていることが、自分に有利に働くとは限らないからね。」

「ましてや開き直って、そうであることを自覚して続けたとしても、
それはただ醜く可哀想な行動でしかないわね。
意味もないことを利益もなく続けるなんて、正気の沙汰ではないもの。」

「うん。利益があるならまだしも、リスクすら感ぜられる行動だからね。」

「私達が忠告してるのは、私達のためではないわ。
偽善といわれても仕方ないけど、君自身のために言っているの。
自分の心情的なリスクだけでは済まない可能性だってあるのよ?」

「そう、僕らは、命令されてるとはいえ、君自身の事を思って忠告しているんだ。
これは脅迫ではない。警告だと思ってくれても構わないよ。
毎回同じこと言うようで悪いんだけどね。」

「お互いに利益があるのなら、打算的に考えてもすぐにやめるべきだと思うわ。
たとえ受けて立とうなんて思って開き直っても、先には破滅しかないのよ。」

「僕らは別に君を挑発しているわけじゃないんだ。それだけは理解して欲しい。
平和的解決を望んでいるだけなんだよ。自分だけは大丈夫と言う考えが、一番危険だからね。」

「どう考えたって君のやり方は法律で許されるべきことではないもの。わかるでしょ?
いくら情報を得てないように振舞っても、証拠はいくらでも回収できるわ。」

「・・・・そろそろ時間だね。まぁ、猶予のあるうちによく思い直すことだよ。
僕らだってよってたかって君を潰したくなんかはないからね。
平和的解決が出来るうちに、違法な情報の取得をやめることだ。・・・じゃあ、帰ろうか。」

私は同僚に促され、荷物を持つと彼と共に電灯を消した後、階段を登っていった。
彼の言葉と共に、何かが闇の奥にやってきた。
私はこの感覚をこの場所以外で感じたことはない。

何も存在していないと感覚では認識しているのに、
頭の中に「何かがいる」という思考が浮かんでくる。
この状態をうまく説明できる術が私にはない。

「君は今日も見ているのかい?
その情報が正確かどうかもわからないというのに」

同僚が話し始めた。それに私も言葉を続ける。

「あら。わからないということは真実って可能性もあるんじゃないの?」

「いや、見ているところから、わざとそう見せられている可能性もあるよ。
『情報を得ている』というカマをかけたりしている限りね。」

「でも、情報なんて常にそんなものでしょ。100%正確に伝わる情報
なんてありえないと思うわ。報道なんかがそうじゃない。」

「確かにね。でも、彼が望んでいる情報を得ようとしているのを
無駄だと教えてあげているんだよ。むしろ関係を悪化しかねない。」

「随分と親切なのね。お互いどんな人間か自己紹介すらしてないのに。」

「まぁそれが僕の仕事だからね。・・・さて、君はそれでも見続けるのかい?
それはあまりにも卑怯で、芳しくない方法だというのに。
正確な情報が得られない以上、見続ける意味があるのかな?」

「確かに卑怯な手口ではあるわね。でもそれは同時に彼が臆病なんじゃない?」

「そうかもしれない。情報を卑怯な手で得ないと、関係を保てないというのは
あまりにも悲しく、そして虚しくはないかい?」

闇の向こうの雰囲気が、変わった気がした。
石材で出来た入口の鉄の扉を開けると、長い階段が続いている。

たいした明かりもないが、下に降りるまでは壁のレンガ自体が
ぼやっと光る素材で出来ている。懐中電灯よりは暗いが、
全体的にほのかな明るさがあるので、階段を踏み外さなくて済む。

階段を降り切るとだだっ広い部屋に出る。今度は逆に真っ暗なので、
最初に教えてもらった階段一番下の電源で唯一の電灯をつける・・・はずだが、
今日は同僚が先についていたらしく、部屋の明かりはついていた。

彼は何も言わず、部屋の真ん中で腕組みをして時間が来るのを待っている。
まだ約束の時間ではないので、私を待っていたわけではない。

私も部屋の隅に荷物を置くと、彼の横に並んで立ち、時間が来るのを待った。
彼と私が向いている方向には、闇が続いている。唯一の電灯にかさがついている為、
奥まで電灯の光は届かない。彼も私も時間まで他言は許されていない。

ただひたすら時間が来るのを待つ。彼と私の足元には、白線が引かれている。
これ以上闇の側へ行ってはいけないと指示されている。
指示を破れば、命の保証がないということも伝えられている。

私と彼の側にある時計の秒針が、約束の時間を指した。
彼がゆっくりと、いつものように口を開いた。

「それじゃあ始めようか。」
とあるアーティストがこんなことを言っていた。
この歌は私のことではないかとか、自分の周りの話ではないかと言う
ファンレターが送られて来たらしい。もちろん実際は違うのだが。

偶然から共感を得られればその歌は売れると思うのだが、
中にはあまりにも自分の状況に似ている為、そういった勘違いが起こることがある。

しかしこれは全くの勘違いであり、ネットでの文章、小説、歌に至るまで、
名指しにでもされていない限り、ほぼ自分である可能性はゼロに等しい。
例えば名前が同じだったとしても、まず自分のことではありえないだろう。

ではなぜこういった「自分ではないのか」というある種被害妄想のような
勘違いが起こるのか。それは、その出来事に何か自分の心に
ひっかかるものがあるからだ。そしてその多くは罪悪感であると思う。

作品に対して、「自分のことではないのか」という思いが沸き上がった時は、
まず自分の心を洗い直してみることだ。罪悪感の答えがそこにあると思う。
「それは決め付けすぎではないか」という方がいたら、単にそれは認めたくないだけ。
自分の心と向き合わなければ、この勘違いはなくならないと思う。

深層心理の奥にある罪悪感と根拠のない被害妄想。
それは自分の心と向き合って生きていないという証明にもなる。
ごまかさずに向き合っていけば、自分にとって幸せな未来が待っているはずだ。
どんな結果であろうとも、自分に嘘をつかないことが
全力で生きていくことになるのだから。
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1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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