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完全フィクション
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何もかもから逃げたくなって、私はここに来た。

誰もが迷うと言われるこの森であれば、誰にも邪魔されずに、見つからずに、ゆったりのんびりと過ごせるだろうと思っていたからだ。もしかしたら自分はもう二度と戻れないのだと言う可能性も頭を掠めたが、なんて事は無い。既にもう逃げ出した時点で、色々なものを取り戻す事は不可能だろう。このまま死んでしまっても構わないし、それもまた自然に還ると言う意味では、今の自分にとってとても有意義であるように思えた。

森と言うものは、そこかしこの景色が変わらない。文明の利器なんて一つも無いし、大きな木や石がたまにあるだけで、それを目印にするには、いかんせん都会生まれの都会育ちの私には、特徴が無さ過ぎた。

もしかしたら良く言われている『同じところをグルグル回っている状態』に陥っている可能性もあるが、私には方向すらわからないし、この鬱蒼とした木々に阻まれて、陽の光すらここには届かないのではないかと思えるぐらいの暗さと涼しさがあった。

ともかく夜ゆっくりと過ごせる場所を探そう。穴倉ぐらいあるかもしれないし、いざとなれば下は葉っぱだらけなのだから、誰に気兼ねする事も無くそのまま寝てしまっても良いだろう。

「私は自由だ。」

そう呟いたら自然と笑いが込み上げて来た。色々なものに疲れ果ててここに来た私にとって、笑ったのは一体何年振りだろうか。考える事すら面倒なので、ひとしきり笑った後、とりあえずの落ち着く場所を探す事にした。





いかん。いかんな。

私は都会生まれの都会育ち。

いつまで経っても景色は変わらない。

どこを歩いているのかもわからないし、何より飛び回っている虫が鬱陶しい。

葉っぱの上に寝転がってみたものの、身体に蟻が這って来る。

「キモチワルイ。」

このままでは歩き回るだけになりそうだ。

ちょうど良く座れそうな石も無い。

スマホも時計も置いて来たので、どのぐらい時間が経っているのかもわからない。

太陽を見つける事が出来ないからどうにも出来ない。

私は焦っていた。

自由を求めてやって来たのに、自然に翻弄され、蹂躙され。とっくのとうに心は折れていた。

「帰りたい…。」

なんだか泣けて来た。





どのぐらい経っただろうか。遠くの方からエンジンの音が聞こえて来た。

「車だ!」

嬉々として車道があるであろう事を思い浮かべて走り出した。肩で息する程全力疾走した後、私は車道に辿り着いた。

「助かった~…。」

ひとしきり泣いた後、私は大声で笑った。

なんだ。結局は都会生まれの都会育ちである私にとって、自然と寄り添って生きて行くなんて土台無理な話だったのだ。

もう夜だ。明日、迷惑を掛けたみんなに謝って、いつもの生活に戻ろう。

嫌だったはずの日常生活が急にいとおしくなって来た。

私の居場所へ。

帰ろう。
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占星術だかなんだか知らないが、他人にたかだか12星座だか13星座だか知らないがともかくそんな少ない選択肢で人生や運勢を決められたくない物である。

「何座と何座だから相性が悪い」

とか、そんなものに頼って生きて恥ずかしくないのかお前はと問いたくなる。が、しかしどうにもそういうものが好きそうな女性に限らず、男性でも好きな人間もいて、あろうことか家族専属の占い師に運勢を占ってもらったりするような人間もいる事に驚愕した。

私としてはあまり運がどうとか、不確定で見えないものに頼りたくなど無いのだが、いかんせん結構な人数、それは少なくない数の人間が信じていたりするものだから、もしかしたら実際、それが偶然だとしても救われる人間がいるとするのなら、それはそれで仕方無かったのだろうか、本人が良いのならそれで良いのかもしれないと、私なりにともかく理由を付けて納得する事にした。どうしようもない物にイライラしてもしょうがないからだ。

そんな訳で占星術に限らず占いの話になれば、私は特に信じていないがそれで救われれば良いのではないかと聞き流すようになった。聴いてもらえればその占いの効果を説明して何やら機嫌の良い表情を見て、ああ、これで良かったんだなと思えるようにもなった。





しばらくして。

とても仲良くなった女性が占い好きである事以外は自分の好みど真ん中で、占いの部分は流して上手くやっていた所に、どうにも困った事になった。

「絶対ね。占ってもらった方が良いよ。良く当たるから。」

彼女の事を愛しているし、仕方が無い、内容は聞き流して乗り切るかと腹を括って、何万回聴いたかわからないそのセリフを受け入れた。彼女としてはきっと私の事を思いやって紹介してくれることに違いないのだから、それを反故にする事もあるまい。

結果的には、誰にでも当て嵌まるようなことを言われたし、特に私の人生に問題は無いようだった。彼女はその占い師が売り出しているヒーリング音楽?のようなものを良く聴いている。このまま行けばきっと彼女ともゴールイン出来る事だろうし、それに関しては彼女との仲を深める為の材料になってくれた占い師に感謝せねばなるまい。





彼女と付き合って同棲するようになって、例の音楽を聴きながらさめざめと泣いてしまう事があるぐらいで、私達の人生は上手く行っていた。様に感じられた。

結婚する事にもなったし、占い師縁の場所で式をあげるそうだ。やれやれ。
新しい事を次々と思い付いて始める事が出来てから、そのまま継続して上手く行く…なんて事が続くと、私は時折自分の色々な経験を振り返るようになった。

それは年齢を重ねて結構な妙齢になってしまったと言えばそれまでなのだが、何よりも今現在が充実していて、心に余裕が出来たからだと言うのもあるのかもしれない。

そう言えば思い出し笑いをする事も多くなった。

「なんだ誰か死ぬのか」

と友人に縁起でも無いツッコミを入れられたものだが、もしそうであるなら、私自身が死ぬことになるのかなと思いついて、一秒後一笑に付した。一応は健康な状態を保てているので、今すぐにとは行かないだろう。

そんな事を考えていたら、私自身の色々な経験や体験を書き留めておきたいなと思うようになった。日記は付けているけれど、行動を記しているだけで、自分自身の考えや感じた事を書いている訳では無い。

それこそ思い付く全てを書き記していたら取り留めのない文章が無限に生まれ出でる事にはなるし、キリが無いのかもしれないが、何だか自分の生きて来た足跡を何らかの形で残しておきたくなったのだ。それは生きている以上終わる事は無いだろうし、ゴールの無い旅路になる事だろう。

だがそれは自分にとってとても意味のある事のように思えた。誰かに読んでほしいと言う訳では無く、ただ自分の為だけに、ひたすら文章を残しておこうと思ったのだ。

一度思い始めるといてもたってもいられなくなり、とにかく思いつく限りの文章を書き留めて行った。それは実に楽しく、相手の反応を窺う事も無く、自分自身がニヤニヤする為だけのある人種にとってはとても無意味な事なのだろうが、個人的には非常に意味のある事だと実感する事が出来た。

書き留めて行くと連鎖反応で次から次へとネタが湧いてくる。自伝を書く人間の気持ちが何だかわからないでも無い気がした。ただこれは自伝と言うにはあまりにもまとまりの無い物だったが、書きながら自分なりに時系列順に並べて行くと、自分の歴史が出来上がって行くようで、思い出が形になるようでどんどん楽しさは増して行った。

忘れたいことだってもちろんあるのだが、幸か不幸かそういう事に関してはあまり覚えていないし、いちいち思い返したくないものを掘り返して思い出す必要性も感じられないかった。

ただの自己満足ではあるけれど、楽し過ぎる作業だ。何事も無い幸せな毎日に、新しい趣味を見つけてしまったのだった。
毎日、繰り返し繰り返し。私は何度も同じ作業を繰り返していた。

始めた頃は熱意自体持っていたものの、燃え盛る炎は繰り返して行くうちに小さくなって、あっという間に火は消えてしまったのだと実感している。

もちろん繰り返しと言っても全てが同じな訳では無い。自分の中でも成長したとか、進化したとか、経験を積んだとか、色々言い換えられるようなものはあるけれども、結局は大筋で見ると同じ事の繰り返しである事は否めない。

同じになってしまっている事に嫌悪感を覚える事もあった。飽きない様に様々な工夫をした。周りからもワンパターンと思われないように。もちろん私自身から見てもだ。

しかしながらそれもいつしかどうでも良くなってしまった。意味の無い事であるとは思わないし、これが私の仕事なんだろうと自分に言い聞かせて、どこか自分の中で諦めにも似た納得をするようになった。

幸い受け入れてくれる人はたくさんいる。それが私にとっては幸せな事だと思ったし、感謝の気持ちがあるから頑張れたし、同じ事の繰り返しを続ける事が出来た。そしてそれは私の生きると言う事への証でもあるのだと思うようにした。

ある日突然繰り返しが嫌になってしまった。見るのも聞くのも心を濁すようになった。始めてからずっと続けて来た繰り返しを止める事にした。すると、たくさんの人が悲しんでくれた。惜しまれながら止める事になった。愛されていたのだと改めて実感した。裏切るようで心は引き裂かれるような想いに駆られたが、それ以上に嫌になってしまった心が元に戻る事は無かった。仕方のない事なのだと思うしか無かった。





そしてしばらくして。私は違う事を始めてみた。それはとても楽しかったし新鮮だった。毎日が新しい事の連続で、止めて良かったと実感するようになった。

しかしそれも長くは続かなかった。新しい事もいつしか繰り返すようになって、結局はそうならざるを得ないのだな、と悟った。諦めて何度も繰り返して、ふとした時に以前やっていたことが懐かしくなった。もう一度始めよう。バラバラになったものを少しづつ集め始めた。





時間はかなり掛かってしまったが、以前の繰り返しをもう一度始める事にした。同じようで同じには感じられない景色。あの時感じていた感覚はもう二度と味わえないのかと思うと、少しだけ寂しくなった。驚いたのは、たくさんの人が待っててくれていたのだ。

私の幸せはここにあったのだと、再確認した。
ある程度時間が経つと、あなたは何事も無かったように声を掛けて来る。私に断わられるのはわかっているはずだよね?それとも反応がもらえるのが嬉しいのかしら。

あなたは今でも、私との思い出にすがって生きているのね。私はこんなにも先に進んでいると言うのに。もうあなたは過去の人。私の中では終わっているのよ。

どうして謝りもせずに許してもらえると思ったのかしら。何が悪いのかわからないままに謝った事はあったわね。それともまるで自分には見当も付かないと、しらばっくれて通用するとでも思ったのかしら。そうだとしたらあなたは本当に卑怯でせこい人ね。自分のプライドを守るのがそんなに大切なのかしら。あなたのプライドなんて、とっくの昔に何の役にも立たない程粉々になって意味の無いものに成り下がったと思っていたけど。本当に気持ちが悪いわ。

裏切って信用を失うと言う事は並大抵の事では取り戻す事なんて出来ないのよ。いいえ、一生取り戻せないものなの。様々な周りの人たちの信用を失って、それでもまだ自分がまともな人間だとでも思ってるのかしら。チャンスはいくらでもあげたわよね。きちんと謝る事が出来なかったと言う事実が、あなたと言う人間の低俗さを証明しているわね。もうチャンスなんてあげないわよ。今までいくらでもあったでしょう?でもあなたは、謝る事よりも恥をかかない方を選んだ。だから今後一切、あなたにチャンスなんてあげないわ。その事自体教えてあげない。

大体そんなこと言わなくてもわかる事でしょう。自分が何をしたかの事の重大さをきちんと理解出来ていればわかるはずよ。それが出来ていないと言う事は、猿でもできる反省すら出来ていないと言う事。あなたは表面上でいくら取り繕っても、その程度の人間なのよ。そんな事は微塵も思っていないのかもしれないけど。

惨めね。悲惨で、とても醜いわ。そして見苦しくて、二度と会いたくないと思わせる。もう全ては途切れてしまったの。おしまいよ。コンテニューも敗者復活戦も、現実にはありえない事なの。特に人間関係の、信用問題においてはね。

とても長い間、仲良く出来ていたから、あなたが裏切った時には本当に落ち込んだわ。でも冷静になって考えれば、あなたと言う人間がそういう事をするような人間だとわかり切っていた事よね。何も驚く事なんて無い。あなたはそういう人間なんだから。

今後あなたと会う事は、もう無いの。永遠に、さようなら。
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