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完全フィクション
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彼女とはネットの世界で出会った。

彼女の文章に惚れ込んで会話を重ねた。

彼女はそれほど口数が多い方では無いように思えた。

個人的に…とはいえネットの上だけだが、彼女との逢瀬を日々楽しんでいた。

彼女に会えるチャンスがあった。

以前から思っていた事だけれど、あまり感情が読み取れない。

良く言えばクールビューティーであり、本人も以前付き合った相手と何やら感情の交換が噛み合わないであろうエピソードを聴いていたりした。

彼女から誘ってくれる事もあったが、上手く予定が合わなかったりもした。

当時色々な事で傷ついていた事も原因ではあると思うのだが、自分のペースを乱される事に、心がかき乱された。

思わせぶりな言動をする時もあるけれど、自分にはあまり興味が無いのではないか…と不安にさせる何かがあった。

ともすればそれが不思議な印象を与えられて、魅力的にも感じられていたのだが、面と向かって会ったりしていたにも関わらず、どうにも色々な面で噛み合わなかった。

今思えばそれが相性が悪いと言う事なんだろうと振り返る。

振り返る…の、だが、何故か彼女の顔が思い出せない。何故だろう。

人の顔を覚えるのは得意な方では無い。話した事も無い重役の顔など覚えられないぐらいだ。

しかしながら少しばかりでも好意を抱いていた相手の顔の輪郭や特徴などすらも忘れてしまうとは、何だか狐につままれたような気分にさえなってしまう。

ただでさえ感情の読めない相手だったので、自分の事をどう思っていたのか、全く以てわからない。

仕事が忙しかったり、故郷が興味深かったり、何かと周りの人間に気に入られたり、接する相手によっては印象が違ったりと実に面白い人であった事は間違いない。

病弱なようでそうでないような。何ともつかみどころの無い人であったと思う。

それは故意にかどうかはわからないが、元々持っている資質の面も大きく作用しているように思われた。

色々な出来事や教えてもらったエピソードなどを思い出してこうして文章にしてみても、どうにも彼女の顔は思い出せない。

最初から最後まで何を考えているのかもわからず、何一つ噛み合わない印象だけが心に残ってしまった。だからと言って今それが残念だと思っている訳でも無いのだが、何となく今でも元気でいるであろう、時に不思議な表現のまま彼女なりの感情を露わにしているのかな。誰かが振り回されているのかなと思い返して、どうにも懐かしくなった。

本当に色々な人間がいるものだと、彼女を思い返しては痛感するのであった。

機会があったら自分をどう思っていたのか事細かに聴いてみたい気もするが、今更どうこうしたい訳でも無く、きっと聴いてもさらに難解で新しい疑問が生じたりするのだろうなと苦笑した。
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親に誘われて、川に釣りに来た。

虫が好きでは無いので付けてもらう。その時点で釣りを存分に楽しめてるとは言い難いのだが、苦手なものは仕方が無い。水面に釣り糸を垂らすと、教えてもらい糸を軽く探りながら、魚からのアタリを待つ。

のんびりとした時間。雲が流れている。

長い。

これは来るまで非常に退屈であるなと思いながら、少し眠くなったりしながらも、来るかどうかもわからない引きを待つ。

しばらくして。何かに引っ張られる感覚。竿が曲がる。

来た。

初めてのことで興奮しながらもリールを巻いて糸を手繰り寄せる。

大当たりとは行かないまでもハゼが釣れた。

ピチピチピチ。

宙を舞い近寄るぶら下がった魚を取ろうとする。

びたん!

額に当たった。親に笑われる。照れ笑いを浮かべる。初体験ながらどうにも向いて無いな、と思う。でも釣れたのは素直に嬉しい。楽しい。

それから何匹か釣れた。大漁とまでは行かないまでも、ビギナーズラックなのかそれなりに楽しめたような気がする。

持って帰って食べる事になった。自転車で今日一日を振り返りながら親と話す。家に帰って家族に話す。笑われた。一家団欒。

親が調理してくれた。自分で釣った魚を食べる。美味い。何だか不思議な気持ちになる。揚げて甘辛いたれがかかっていた。でも釣りにハマりそうにはないな。ごはんに合うけど、一日ああしているのは何となく自発的にそうしたいとは思わなかった。

向き不向きがある趣味なのだと思う。考え事をしていたら魚は逃げてしまいそうだし、寝てしまえば竿が手から離れて流れて行ってしまうかもしれない。釣り人に聴かせたら笑われてしまうであろう事を思いながら、釣って来た魚と夕飯を平らげた。余は満足じゃ。

眠りに就く前に、布団の中で今日一日を振り返る。そうだな。自分の中で趣味には成り得ないのかもしれないけれど、自分の釣った魚を自分で調理した訳では無いにしろ、自分で食べられたのは貴重な経験だったと思う。

家族みんなに笑ってもらう事が出来たし、また自分が誰かに話して笑ってもらえるかもしれないエピソードも得る事が出来た。そう考えると充実した、意味のある一日だったようにも思える。

子供ながらにそんな可愛げの無い事を考えながら何度も反芻するように思い返して、眠気にまかせて眠りに就いた。



そう言えば、ダボハゼってなんだろう?と大人になってから思い返して調べてみると、どうやら食べても美味しくないものを差していたようだ。食べられない訳では無いのね。なるほど。
何もかもがつまらなかった。





引きこもってから何年が経っただろう。きっかけなんて覚えて無いし、別段何も無かったのかもしれない。家族と仲が悪くなった訳では無いから、家から出ないだけで、普通に話した。家族は何も言わなかったし、今までと何が変わった訳でも無くて、普通に生活していた。働かなかったけど。だから俺みたいなのは引きこもりなような、ニートなような、そんな所までどっちつかずのつまらない人間だったんだ。

ありがたい事に家族はちゃんと経済面でも面倒見てくれた。色々あってみんな亡くなってしまって、俺一人になってしまってからも、充分過ぎる程の蓄えを残してくれたので、とりあえず家の中で一人で生きていく事が出来た。生活するべき衣食住はネットで注文して届けてもらうだけで事足りた。別に人に会うのが嫌な訳でも無かったので、荷物も問題無く受け取れた。

と、言う訳で絶賛引きこもり継続中である。誰に迷惑を掛けるつもりも無いし、家族の蓄えをありがたく使わせてもらいながら、一人で生きていくつもりだ。運動したり栄養にも気を遣って生きてるからか、これと言って病気になった事も無い。元々節約とか大好きだし、支払いなどは家族が口座引き落としにしてくれていたおかげで、本当に家の中だけで人生が完結してしまっている。

とりあえず家の中で出来る興味のある事は片っ端からやってみたし、それなりに楽しめた。かと言って熱中するものも無かったのだけれど。つまらないなあとか、飽きたなあとか思う事はあっても、別にそれが外に出たいと言う理由までには辿り着かない。居心地が良いからかな。暇があれば掃除をしたり、模様替えをしたりして。

実は暇にまかせて自作のダストシュートを作ってしまったので、自分の部屋からゴミ置き場にゴミを出す事も出来る。家の前がゴミ置き場になってるにも幸運だった。。ゴミの分別もネットで把握してるし、ちゃんと分けている。ご近所様に文句を言われた事も無いので、特に問題は無さそうだ。

とはいえ他人から見たらきっと俺の様な人間はゴミのような人間として認識されているであろう事は想像に難くない。だけど自覚もあるから別に腹も立たない。そんな生き方をしているのだから、仕方のない事だと思う。

もし自分を分別するとしたら何ゴミだろう。きっと感情の薄い自分は、燃えないゴミだな。何に熱中する事も無いし、燃える事なんてこれから先も無いだろう。惰性で生きていく。そしていつか死ぬ。

ニュースで車が突っ込んでビルが爆発したとか、大勢の人が殺されたとか。子供が殺されたりもしているらしい。やれやれ。同じゴミでも、他人に迷惑を掛けるようなクズにはなりたくないものだな。

俺が恵まれているだけなのかもしれないけれど。
テーブルの上でコロコロと転がすと、それは何とも気持ちが良かった。私は泣いていた。





昨日の夜から徹夜で作った。あの人の喜ぶ顔が見たくて、私は本当に、情けない話だけど今までで、人生で一番頑張ったと思う。自分で食べても、ショラティエが作ったんじゃないかって思う程美味しかった。これなら大丈夫。あの人に美味しく食べてもらえる。その時は想うだけでにやけ顔が止まらなかった。

朝からテンションが高かった。寝不足の顔を隠さなきゃって想って、一生懸命丁寧に顔を洗ったり、うっすら化粧もして。ナチュラルメイクってやつで、すっぴんに見えるように頑張った。集中出来たからかもしれなけど、思い込みでも良い。鏡を見た時の私は、今までで一番きれいだったと思う。

一日中あの人の事を考えながら、あの人の行動を追った。まるでストーカーみたいだわ、と自虐的に苦笑した。でも笑ってる場合じゃない。渡さなきゃ。あの人に好きですって。付き合って下さいって言わなきゃ。たくさん頑張って来たんだから。大丈夫。勇気を振り絞って。頑張れ私。

あの人は色んな人に好かれているから、なかなか一人になってはくれなかった。あの人に彼女がいない事はわかってる。確認してある。私を選んでくれるかはわからないけれど、せめてあの人に伝えたい。あなたが好きですって、ちゃんと自分の口から伝えるんだ。





やっとの事であの人が一人になって。都合よく人気のない建物の裏側なんか行くものだから、チャンスだと思ったの。その時確かに、私は勇気を振り絞った。

でもね、私が声を出すその直前、あの人は別の女の子にチョコレートをもらう所だったの。私は咄嗟に物陰に隠れたし、女の子もあの人も夢中で周りに気を配れなかったみたい。私がいる事は気付かれなかった。

女の子は私がとても素敵だと思っている人だった。今まで見た事が無いぐらい真っ赤になって。あの人にチョコレートを渡していた。ちゃんと告白もして、あの人からのOKももらえた、女の子は頑張った。頑張ったよ。凄く頑張った。私よりもね。

私は二人に気付かれないように静かに、泣きながら、でもとても嬉しい気持ちと悲しい気持ちに苛まれながら、その場を後にした。これで良かったんだよ。私なんてあの人につり合わないし、あの女の子は本当に素敵だから。私よりもずっとずうっと、幸せになって欲しいと思う。きっとあの人も幸せになれる。





家に帰ってたくさん泣いて。説明出来ない気持ちのまま眠りに就いて、まだ泣いてる。こんなに引きずるような女が相手じゃ無くて良かったよ。あの人を困らせるだけだもの。

私は何度も泣いては顔を洗って、笑顔を作ったりした。

でも気持ちの整理がつかなかった。

こんなにも自分の事しか考えられなかったんだな。私って。
俺は一念発起して、この部屋を出る事にした。

何故かって?このくだらない世の中に鉄槌を下す為さ。

そして何よりもこのくだらない俺の人生を終わらせるために。

最期に大きな花火を上げてやろうと思ったんだ。

有言実行が美しいとされるけれど、犯罪者の美学としては不完全だと俺は思う。

申し訳ないが俺が恨み憎んでいるのは特定の誰かじゃない。この世界の全てだ。

自分でも俺は狂っているのだと、いや、狂ってしまったのだとはわかっていたのだが、溢れ出して止まらなくなった激情を俺自身が、そして他の誰かが止める事なんて出来やしない。

限界はとうに越えていたんだ。何よりも誰に知らせたわけでも無い。俺自身が自分一人で思い付き、これから実行する。失敗したとしても必ず別のアプローチで成し遂げることを考えた。誰にも伝えて無いのだから、失敗した事すら誰に知られる事も無いだろう。無理はしないで良い。確実に成し遂げる事を考えるんだ。

しかしながらそんな心配をする必要は無かった。





実行する日、自分の鼓動は思いのほか静かで、緊張する事も無かった。計画は嘘のように上手く行った。それはまるで神に愛されているかのように。鍵の付いたタンクローリーを見つけた。迷わずそれに乗ればエンジンをかけるのはたやすかった。

大きな会社の、誰もが知っているような会社のエントランスに突っ込む事にした。だがそこで死んではいけない。そんなもの、大した花火ではないし、俺自身まだやるべき事があった。

エントランスには軽々突っ込む事が出来た。途中で飛び降りて無傷だったのはありがたい。とっさに物陰に隠れた。衝撃で爆発した。飛び散った破片で相当の人間が死傷した。こんなものでは終わらない。

武器になるものはたくさん持って来た。改造したエアガンで自作の銃弾を打ち出せば、人間なんて脆いものだった。たやすく殺す事が出来た。バットで殴り殺したり、意外と皆あっけないものだった。あまりに上手く行きすぎて、警察に取り囲まれる頃には疲れ果てていた。だが捕まる訳にはいかない。

人のいなくなったビルのガス栓を開けて回った。どれだけ上手く行くかはわからない。携帯電話を使って、人質を取って警察を牽制しながら最上階に辿り着いた。

導火線に火を点けて屋上へ飛び出した。人がゴミのようだとはよく言ったものだ。見下す景色はゴミだらけ。そして俺自身もゴミでしかない。

ここから飛び降りよう。鉄柵にロープの片側を結びつけると、輪っかを作り首に巻き付けて、俺は大空へと飛び出した。











そんな夢を見た。

家に火を点けて首を吊る間際の妄想。

引きこもってからと言うもの、家族にも迷惑を掛けてしまったせいか、みんな心労で死んでしまった。

蓄えも全て底を尽きた。

後悔は何も無い。

最期に素敵な夢を見た。

さあ、旅立とう。

足元の箱を思いきり蹴とばした。
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