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完全フィクション
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「何のことかな?」

とりあえず男はとぼけてみせた。

「あ、とぼけても無駄ですよ。埋めてるとこ見てるし写メで撮ってあるんで。」

「・・・・!」

「あまりにも夢中で気がつきませんでしたか?こんな言葉がありますよねぇ・・・
バレなければ犯罪じゃないって。でも、バレてしまったらそれは立派な犯罪なんですよ。」

さらに青年は続ける。

「あと、あなたキーホルダー落としていってますよ?自分では完璧な作業をしたつもりでも、
これだけ証拠を残してしまうものなんですねぇ。勉強になります。」

・・・からかっているのか・・・?それとも、恐喝でもするつもりか・・・
どうせ1人殺してるんだ・・・いっそのこと・・・・

「あ、先に言っておきますけどね。ちゃんと家族にどこへ行くか伝えてあるんで、
当然のごとく僕が帰らなければ捜査の手が入りますよ。そうしたら、埋めた死体も
白日の下にさらけ出すことになる。」

まるで男の心を読んでいるかのように、青年は続けた。

「それはあまり賢い選択とは言えませんねぇ・・・。」

青年をにらみつけ、男は言った。

「何が目的だ。」

「別に・・・殺人者が自分の罪がバレた時、どんな顔するのか見てみたかっただけですよ。
警察に言うつもりもありません。・・・信用できないでしょうがね。」

青年は、おびえることもなく続ける。

「僕はねぇ、ここに自殺しに来たんですよ。この世があまりにも面白くないもんでね。
で、首でもくくろうかと準備しているところに、地面を掘る音がする。人生の最後に、
何て衝撃的で興味深い光景に出会えるのかと感動しましたよ。

それで、あなたが埋めてからずっとここであなたが来るのを毎晩待っていたわけです。
家族にはドライブと偽ってね。あ、初日以外はですけど。

もう私はここでは自殺しませんし、ぶっちゃけ、あなたに殺されるのなら
それはそれで満足です。どうせ自殺するつもりだったんですから。
今日はあなたの顔を見れたので、満足して帰宅するつもりです。」

逆に、男の方が恐くなってきたようだ。青年は、氷のような冷たい目で、
淡々と目の前の殺人と自分の自殺について語っている。それがこの上ない恐怖だった。

「お気をつけてお帰りくださいね♪」

男が何も出来ないでいるのを察すると、青年はおよそこの場にそぐわない
優しい笑顔で男に告げた。その後姿を追うことは(少なくとも男には)出来なかった。








-一週間後、男は自首した。警察の話しによると、異常なほど憔悴しきっていて、
気味が悪いぐらい素直に全てを自供したそうだ。
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男はここに半年前、死体を埋めた。
カッとなったとはいえ、殺人を犯してしまったのである。

今のところニュースで報道されている気配はない。
誰にも見られていない・・・はずだった。

犯人が現場に戻ってくるというのは本当だな・・・

男はそう思いながらも、埋めた場所が気になって深夜車で山奥に来ていた。
埋めた場所は覚えている。まさか目印をつけるわけにもいかないから、
自分でも見つけるのは容易ではないと思っていたが、思った以上に
男の罪悪感は強かったようで、風景をまるで写真に写したかのように
覚えていた為、埋めた場所を見つけることが出来た。

きっと他人から見ればなんてことはない山の風景なのだろう。
夜目が慣れてきたとはいえ、暗闇の中でなんの変哲もない場所を
見つけ出すのだから、男の記憶の中に相当強烈に残っているようだ。

・・・大丈夫。掘り返されたりはしていない・・・

見た目は何の変哲もない、埋めた場所に変化がないのを確認し、
きびすを返したその時だった。

「こんばんは」

この時の男の心臓は、外に聞こえるぐらいにドキッとしただろう。

「こんな夜中にこんな山奥で何をしてらっしゃったんですか?」

それはこちらが聞きたい。男は心の中で思った。
見たところ、おとなしそうな青年がこんな山奥で何をしているんだ・・・?

そして、意地悪そうな笑顔を、青年は浮かべた。

「まさか、埋めた死体がどうなってるか確認しに来たんじゃないですよね?」

男の心臓は、まるでエンジンのように激しく鼓動を打ち始めた。

部屋の隅で膝を抱えていると、心の中の光景を覗く事が出来る。

深い、深い闇が井戸の奥底でわだかまっている。誰にでも覗くことは出来る。
しかし、誰にも理解することは出来ない。

何人もの親友を「死」という形で失い、それでも閉ざされていた心の扉は
愛する人によってこじ開けてもらうことは出来た。
その後、いろんなことがありすぎて扉の奥は再び闇に閉ざされることとなる。

「生きている」というその事実だけでも、亡くなっていった親友を思えば、
幸せなことなのだと思う。しかし、生きていても苦しみはある。
がんじがらめで先の見えない未来は、自分自身を深淵へと誘うには
格好の材料だ。

心の闇を、ただ、奥へ奥へと。

それは誰にも気づかれることはないかもしれない。
それは確実に心を蝕んでいく。

ようこそ、深淵の闇へ。
そして男が見ている中でPCに向かうことすらしないのに、
毎日あざ笑うかのごとくブログは更新されていった。

「畜生!なんて趣味が悪いんだ!」

盗撮や盗聴の時点で趣味は最悪のはずだが・・・。
こういう人間は自分の悪いことを認めず、相手の悪い点
(時にはそれは逆恨みでしかない)ばかりに怒りを向ける。

「畜生!畜生!畜生!」

そして・・・画面に映るアイドルが、カメラ目線で笑った。

『ア ワ レ ナ オ ト コ ネ』

「うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」














・・・・・・・あれから何時間たったろう。部屋の中央には不気味に笑う男が、
よだれを垂らし、放心状態で動かぬまま壊れていた。

カメラには何事もなかったかのようにいつもどおり過ごすアイドルが
映し出されているだけだった。
男はとあるアイドルの家に盗聴器を仕掛け、盗撮カメラを仕掛けた。
その台数は複数台。どうやって仕掛けたのかは知りたくもないが、
男は今日もアイドルをのぞいていた。

しかし、妙なことに気付いた。

いつもなら自分のブログに書き込むはずのアイドルが、書き込んでいなかった。
しかし、ブログは何故か更新されていた。最初は事務所側で更新したと思ったのだが、
ハッカーとしての腕が超一流であるこの男が、出来うる限りの手段を尽くして調べても、
アイドルの所有するPCから書き込んだという情報しか得られなかった。

「どういうことだ・・・?」

ほんのささいな出来事なのだが、いつものぞいていたはずの、
何でも知っている気でいたはずのアイドルが、予想外のことをしている。
それだけで性格破綻した男をイラつかせるには十分だった。

しかもその書き込みは、まるで自分のことを言われてるように思えてしまう。

『最近盗聴されてるみたい。キモい。』
『こんなことやったって永遠に理解なんか出来ないのに』
『人間として終わってるわ』

しかし、男が24時間体勢で録画しているはずのビデオには、
いつもどおりの生活をするアイドルしか写っていなかった。
どう見ても盗聴器や盗撮カメラを探しているようには見えない。

一体何故気付かれたのか?
それ以前にPCに書き込んでいないのに、どうやって更新しているんだ。
彼女の使用している携帯の機種では更新できないはず。

みるみるウチに表情が豹変し、窓ガラスを割る男。
「落ち着け・・・落ち着け・・・なにかカラクリがあるはずだ。」
そういって毛布にくるまる男の顔は、もはや普通ではなかった。
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1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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