忍者ブログ
完全フィクション
[1]  [2
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「文章が好きだから小説をよく読むの。」

彼女は何とはなしに呟いた。

「漫画は読まないの?」

「読まない。」

「なんで?おもしろいのに。」

「なんとなく、かな?」

「俺はやっぱり漫画を読むよ。
教科書で教えてくれない大事なことも
漫画で学んだことは多いし。
もちろん音楽もそうだけど。」

「ドラマとかは見ないの?」

「やっぱり媒体としては漫画が一番しっくり来る。
拘束時間が嫌いなんだよね。
映像だと没頭しちゃうから。

小説も稀に読むんだけれど、
やっぱり読んでる量は
漫画の方が圧倒的に多いかな。」

「私は小説。あなたは漫画。不思議ね。」

「育って来た環境が違うから、てやつ?」

「そうかもしれない。」

そしてまた二人は無言の時を過ごした。
PR
性行為や男女関係を人生の中心に置くと、
それだけで破綻する度合いはグンと増す。

適合するパートナーを探すのは至極当然のことだが、
自分の価値観を相手に押し付けて生きることほど
醜いことはないし、なんら意味も持たない。

また、常識外のことを『価値観の違い』で
片付けることも、愚かなことでしかない。

お互いの思いやりと譲り合い、そして見返りを求めない
愛情こそが本来の絆であり、繋がりであると言えよう。
一方的な感情の流れは、兎にも角にも破滅を招く。

それに気付かない限りは、同じことの繰り返し。
いくら理屈では片付けられないと言っても、
ある程度のすり合わせは絶対不可欠なのだ。

人を憎むことよりもまず自分の
言動を思い返してみるといい。

そこで気付けるような人間なら
同じ過ちを繰り返したりはしないはずだ。
リムショットのカウントで幕を開けると、
ハウリングに近いギターリフが空間を支配した。

ベースの音が鼓動のリズムを狂わせると、
金切り声に近い雄叫びを上げて、地獄の底
からのうめき声のような歌声を響かせる。

四つの音が不協和音のハーモニクスを
矛盾した論理の中でせめぎ合い、紡ぎだす
ことによって、メンバー全員がトランス状態に入った。

こうなるともう止められない。練習でもリハでもなく
ここに存在するのは全員の全力とセンスが作品という
形のない音の塊を・・・・音楽を導き出した。

一度歯車が回りだすと、狂人のような目つきで
それぞれの世界観を一体化させることに執着する。
見据えているのは音楽としての理想郷。

人に理解されるべくモノではなく、
自分たちの全てを叩き付けた上での
納得や満足を超えたケミストリー。

それは一定ラインを超えて快感となり、
恍惚の中にある狂気と欲望が混在する。

まだだ。まだ足りない。この世界に
未だ存在しない本当の音楽を求めて。
例えば自分の弱さを伝えることと
欠点を指摘されて直さないことの
どんな違いがあるのだろうか。

自分は思いを通すことが出来ないくせに
裏切られた時に自分だけは怒ってもいい
そんな勝手な話があるのだろうか。

他人はダメで自分がOKなんて話
どこへ行ってもまかり通るわけないのに

なんだかおかしいね。

とってもおかしいよ。
真っ赤に染まった身体を持て余して動けないでいると、
彼女はまるでその場所にそぐわぬやさしい笑顔で現れた。

「やあ。」

「こんにちは。」

「もし、お手すきだったら、俺の胸ポケットから
煙草とライターを取ってくれないか?出来れば
火をつけて俺の口に咥えさせて欲しいんだが。」

「いいですよ。」

純白のワンピースに純白の帽子をかぶった彼女は
不審がることも気持ち悪がることもなく言う通りにしてくれた。

生き返る心地で一服する。煙を吐き出すと、
咳と共に吐血が飛び散るのだが、気分は悪くない。
再び煙草を咥えてから、彼女に尋ねてみた。

「俺は死ぬかねぇ。」

「自分が一番良くわかっているんじゃないですか?確実に死にますね。」

彼女の言葉にへっへっへ。と笑い声を上げる。

「あんた死神かなんかか?」

「さあ。あなたが死んだ後、魂でも連れ去ったら死神でしょうね。」

彼女の笑顔は変わらぬまま、至極最もな返答が返ってきた。

「・・・・・そうか・・・・・・。俺もやっと眠りにつけるわけだ。」

自分の中で『やっと』という言葉を選んだのは、
ずっと自分は死にたがっていたからだと思う。
もっと死に際はうろたえるかと思っていたけれど、
やるだけのことをやって来たのだから、特に不満はない。

自殺をするわけでもなければ犬死でもないからな。
視界が白く霞んで来る。死んだことがないので
わからないが、真っ白になったらきっと死ぬのだろう。

「・・・・・・・・お疲れ様。」

彼女の言葉が耳に届いていたが、もう彼女の
表情は伺い知ることも出来ない。きっと変わらぬ
笑顔で、俺の最後を見取ってくれたのだろう。





・・・・・・・ありがとう。
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
リンク
最新コメント
最新記事
最新トラックバック
プロフィール
HN:
耕助
年齢:
37
性別:
男性
誕生日:
1987/01/14
職業:
フリーター
趣味:
音楽鑑賞
自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター
忍者ブログ [PR]