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真っ赤に染まった身体を持て余して動けないでいると、
彼女はまるでその場所にそぐわぬやさしい笑顔で現れた。

「やあ。」

「こんにちは。」

「もし、お手すきだったら、俺の胸ポケットから
煙草とライターを取ってくれないか?出来れば
火をつけて俺の口に咥えさせて欲しいんだが。」

「いいですよ。」

純白のワンピースに純白の帽子をかぶった彼女は
不審がることも気持ち悪がることもなく言う通りにしてくれた。

生き返る心地で一服する。煙を吐き出すと、
咳と共に吐血が飛び散るのだが、気分は悪くない。
再び煙草を咥えてから、彼女に尋ねてみた。

「俺は死ぬかねぇ。」

「自分が一番良くわかっているんじゃないですか?確実に死にますね。」

彼女の言葉にへっへっへ。と笑い声を上げる。

「あんた死神かなんかか?」

「さあ。あなたが死んだ後、魂でも連れ去ったら死神でしょうね。」

彼女の笑顔は変わらぬまま、至極最もな返答が返ってきた。

「・・・・・そうか・・・・・・。俺もやっと眠りにつけるわけだ。」

自分の中で『やっと』という言葉を選んだのは、
ずっと自分は死にたがっていたからだと思う。
もっと死に際はうろたえるかと思っていたけれど、
やるだけのことをやって来たのだから、特に不満はない。

自殺をするわけでもなければ犬死でもないからな。
視界が白く霞んで来る。死んだことがないので
わからないが、真っ白になったらきっと死ぬのだろう。

「・・・・・・・・お疲れ様。」

彼女の言葉が耳に届いていたが、もう彼女の
表情は伺い知ることも出来ない。きっと変わらぬ
笑顔で、俺の最後を見取ってくれたのだろう。





・・・・・・・ありがとう。
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年齢:
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誕生日:
1987/01/14
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音楽鑑賞
自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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