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完全フィクション
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私の胸には、大きな傷がある。

正確に言うと、胸の谷間にだが。

小さい頃心臓を患って、一命を取り留めたものの、当時の医学の技術では最善を尽くしたのだろうが、大きな傷が残ってしまったのだ。

他人がそうだったとしたら、気にする事は無いと言うだろうけど、自分の事になれば話は別だ。やはり見せるのは躊躇ってしまうのが当然だと思う。

とある男性と出会い、恋愛へと発展した時も、秘密を打ち明けるまでに時間が掛かった。もちろん相手は受け入れてくれたし、愛撫だってしてくれた。だけど私の心に問題があったのだ。

私を受け入れてくれた人と長い時間一緒に過ごしたかった。だけど私は実家に住んでいたし、まだ自由でいられるほどの立場では無かった。だからやらなければいけない事がある時に、話もしないのに電話を繋いでいてもらったり、プレゼントを要求したり、どこかに行きたい時も自分で調べたりもせずに甘えまくって任せきりだった。今思えば相手が億劫に感じるのも仕方の無い事だと思う。

相手も相手で、メールや電話の数は半端無かった。今思えば共依存だったのかもしれない。でもそれも当時は心地良かったし、繋がっていると思える実感があったのだけど。

だんだんと疎遠になって行き、大して連絡も取らなくなっていた。相手の家にお邪魔する事もあったけれど、私は浮気をしてしまい、相手にそれを打ち明けた後、逃げ帰るようにその場を立ち去った。

相手が私に、プレゼントに掛かった費用の返済を要求して来た。最初は何で今更とも思ったし、怒りもあったが、裏切ったのは私だ。見苦しくも色々弁解はしたけれど、相手が本気なのがわかって、渋々従う事にした。まとまった金など無かったので、分割をお願いした。今思えば我ながらずうずうしいにも程があるのだが、それに関しては相手も了承してくれた。

そして半年ほど掛けて私は、私のトラウマを受け入れてくれた相手をぞんざいに扱った後裏切り、代償を支払って別れた。

そして今現在に至るまで、まともな男に知り合えてもいない。私はお世辞にも美人とか可愛いと言われるような類の人間では無いし、きっと自分が思っているよりもはるかに思いやりや相手を想う気持ちが足りないのだと思う。

売れ残りと言われても、良い相手も見つからなければ、良い相手が見つかっても、私を愛してくれなければ意味が無い。そしてそれを自分で無意識に選択しているであろう、思い当たる節の多さに苦笑した。
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「○月○日、空いてますか。」

彼から誘いがあったのはついさっき。彼は私を大きく裏切ったくせに、証拠もあると言うのに、謝ろうともしなかった。そしてしらばっくれたまま時は流れ、ある日こんな誘いがやって来たのだ。

本来ならどうしようもないクズのような人間を相手にしている暇は私には無いのだけれど、どんな馬鹿面を下げてやって来るのか、笑ってやろうと思ったのと、どんな顔をして会える恥知らずなのか興味があった。

この連絡が来る前、私はブログを書いていた。「大切な人を大切にしよう」と言う、ごくありきたりな内容だった。まさか私のブログを今更読んでいるストーカーの様なキチガイじみた行為は、最悪でもしていない事を願う。私の勘違いであると良いのだけれど。



当日、時間より早く彼は迎えに来た。普通の顔をして謝る事も無く。最早人間としての最低ラインを超えた、哀れな奴なんだと、その茶番劇に付き合ってやる事にした。当然面白いはずも無く。情報交換だけが唯一のメリットだった。退屈な時間は流れて、単純作業のように私は乗ってやった。

別の知人も連れて来たのだが、そちらは懐かしい顔ぶれ。再会を楽しみ、息災を喜んだ。コイツラもまあ、流されているか騙されているのかわからないが。当事者では無いから放っておいてるだけかもしれない。本当の友達とやらでもあれば、彼を咎めるであろう。その関係の希薄さを薄ら笑う。

他愛も無い話と言えば聞こえは良いけれど。特に面白味も無い時間が続いた。楽しむフリをする。最低な人間が最低である事の確認作業。笑いが込み上げてくる。どこまでゴミクズなんだろう。そして何を想い、私を呼んだのだろう。自分の馬鹿さ加減と、自分の愚行が招いた、心通わぬ人間ばかり周りに集めた寂しさの、藁をも掴むような見当違いの救いを求めたのだろうか。何をしても、何も戻りはしない。時間で信用が解決すると思ってる程、頭がおかしいとは思わなかった。

ああそうか、昔からそうだったよね。どんどん浅く広い人間関係が、虚しく広がって行くだけ。その無様な生き方を、何度繰り返せば思い知るのだろう。きっと反省の仕方も謝罪の仕方も知らないのだろう。ため息とともに反吐が出る。



そして別れ際、どうにかして長く一緒にいようとする、自分本位な彼の想いを断ち切って、さっさと帰宅した。これ以上付き合ってられない。お遊びの時間は終わった。人生が交わる事も、心が通う事ももう無い。
暑い。

こう暑くては水を飲むなだのクーラーを使うと体力が失われるだのと体育会系で叩き込まれた私にも、どれだけ水分や冷暖房が大切か痛感するようになった。何より以前よりも実際にはるかに暑いのだから、こればかりはどうしようもない。ちっぽけな人間たちは自然様には勝てないのだ。

白旗を上げた私は周りに店の見当たらない郊外にいる事を後悔しながらも、どうにか自動販売機を見つけて、水をペットボトルで購入する。別に子供たちが遊んでいる水飲み場でも良かったのだが、どうせ飲むなら美味い水が良い。改善はされているだろうけど、公園の水はどうも実際に飲んでも不味い気がする。

日陰のベンチで一息ついて、水を飲みながら砂場に揺らめく蜃気楼を眺めていた。





運が良いのかどうか、目の前に好きな子が座る事になった。これだからみんなが席替えしたがるのがわかる。もちろん自分の目当てや仲良しの友達と一緒になれるとは限らない。それでも現状を打破する為の手段として、色めき立つのも仕方の無い事だった。

前を見れば彼女がいる。私にとって仲の良い友達でもあり、表には出さないものの憧れを抱いていた美しい彼女が毎日目の前にいると言うその事実が、毎日を楽しくさせてくれた。

真夏にもなれば皆当然夏服になって、思春期真っ盛りの私には、ブラウスから透けて見える下着も、無粋ながら楽しみの一つでもあった。

彼女の屈託のない笑顔と、明け透けな性格。毎日たくさん話をして、たくさん笑った。彼女との思い出はとても素敵だったと言える。



卒業してしばらくしてから彼女と出会う機会もあった。両想いだった事は他の友達から知らされていたが、お互い過ぎた事だと認識していたはずだ。酒の席で、明け透けな彼女らしいツッコミを入れられた。

「毎日下着透けてるの見てたでしょ?あなたの為に毎日考えるの大変だったわよ(笑)」

ここで盛り上がる男女もいるのだろうが、懐かしい思い出として、一言謝った。彼女も私も、素敵な思い出をいかがわしい肉欲で汚したいとは思わなかったのだと思う。愛情とは何か違う…。そうだな。思い出を共有した親友の様な、そんな心持ちだったのかもしれない。





おお。いかんいかん。目を開いたまま回想に耽るなんて、まるで白昼夢じゃないか。仕事をほったらかしにして妄想に耽っている場合じゃない。充分ではないが、涼も取れたし、体力も回復した。それでは日差し降り注ぐ仕事に戻るとしようか。いざ出陣。
最近巷で噂の流行っているチョコレートがある。

何故か包装にはアルミと真っ黒い紙が使われているだけで、名前の無い、それでいて物凄く美味しくて中毒性のあるチョコレート。

移動式の屋台のようなトラックで販売されているらしく、お目にかかる事自体が難しい。それでいて中毒性が高いと言うのだから不思議だ。当然、一部で問題にもなり始めている。…のだが。

記者としてこれ以上無いネタだと思い、脚を使って地道に調べる事にした。



半年も経って実態が掴めない所に、信頼できる筋からそのチョコレートだけを入手する事が出来た。中毒性が高いと言う噂通り、ほんの少ししか分けてもらえなかったのだが、それでも実物があると無いとでは情報の数が違う。

万が一のことを考えて、食べるのはやめておくことにした。曰く、女性や子供の前に現れる事が多いと言われているその屋台。まるで怪談のようだが、実は今回分けてもらえたのも子持ちの話好きな主婦から分けてもらったのだった。

見た目、匂いなどは特に何の変哲も無い。聴けば、味は極々普通のチョコレートに近いそうなのだが、何かが違うらしい。

知り合いに頼んで成分分析をしてもらった。一つ分かったのは、どんな種類かはわからないが、動物性の脂肪が含まれているのでは無いか、との事。

ラードか牛脂を混ぜているのか…?それにしたって、臭くなりそうなものだが…。



また半年経ってからの事。全くの偶然だとは思うが、その移動式の販売トラックにで合う事が出来た。購入しようとすると、

「あんたはもう持っているだろう。それを食べれば良いじゃないか。」

と透かされてしまった。

「何故それを?」

「あんたからこのチョコレートから匂う独特な、ほのかな香りがしたからね。俺は鼻が良いんだ。悪いな。ヒッヒッヒ…。」

と気味の悪い笑みを浮かべ去って行った。



それから何年も経って。やっとの思いで工場を突きとめる事が出来た。いや、正確に言えば工場長と、工場を見せてもらえる約束を取り付けたのだ。時間通りに待ち合わせ場所に現れた工場長。見た目小奇麗な紳士だが、服装はコックそのものだ。

「製造過程を知りたいのか?」

「問題にも上がっている。調べたくなるのも無理は無い。」

「それでは、こちらにどうぞ。」





彼が工場の中で見たものを世間に発表する事は無かった。彼は工場から二度と出る事は無かったからだ。そして、彼もまたチョコレートの

「おっと!これ以上は企業秘密ですよ。ふふ。」
絶望と言うものは、生きる力さえも失ってしまうものだ。

しかしながらそこから這い上がれば積んで来た経験が幸せへと誘う材料にだって成り得る。ドン底まで転がり落ちたさらに底の底から、やっとの事で辿り着いたスタートラインは明るかった。

負の感情、負の遺産が溜まってゼロでは無いにしても、マイナスからのスタートでも前に進む事が出来る。

例えさらなる纏わり付くような乞食がいたとしても意に介さない。適当にあしらって自分の道を突き進むだけだ。

その道を歩くのも走るのも、そして景色を眺め存分に楽しみながら進むのも自分次第。そこに他人の入る余地なんて無い。これは俺の人生だから。誰が変わりに生きてくれる訳でも無い。

本当に大切なものは、人間の心にある。断じて地位や名誉や名声などでは無く。金は生きる為の最優先の手段であって、大事ではあるけれど、一番大切なものでは無い。一つを守れば他を捨てなければいけないと言う訳でも無い。そう言う意味では強欲に全てを抱えて歩いて行って良いんだ。もちろん捨てるべきどうでも良いものもたくさん存在するけれど。

とかくこの世はつまらないなんて想いは、楽しむ心が無いからそう思うようになるのだ。状態が悪ければ楽しめるものも楽しめなくなる。少しづつ積み重ねて見た同じ景色は、違った風に見える。





何もかもを捨て去って、どうでも良くなったとある誕生日の日の夜。実家で御馳走になった後、誰もいないホームで、音楽を聴きながら冬の寒さに包まれて心地良さを感じていた。

「これから先、俺の人生には何も無いのだろうな。」

ポツリと呟いた。

本当にそう思っていた。もういつ死んでもいいんだな、と。充分楽しんだ。これ以上の奇跡は無いじゃないか。

かといって自殺がしたい訳でも無く。ただ淡々と。自分の人生を諦めていた。

家族と少しでも多くの時間が過ごせればいいかと。そう思っていた。

死んで行く事に後悔なんて無かった。怖くも無かった。俺の人生はここまでなんだと痛感していた。





はずだった。





色々あって今はまたスタートラインに立っている。

かかとのすぐ後ろにはいつだってボーダーライン。

絶望を超えて来たと言う事は、そういう事なのだ。

もう後ろは、振り返って眺めたとしても、後ずさりはしない。

もし万が一後ずさりしたとしても、また前を向いて歩いて行ける。

永遠なんて無いけど、やっとのことで辿り着いた、掴んだこの状態は、自分の意思で手放す事は無いだろう。
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