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最近巷で噂の流行っているチョコレートがある。

何故か包装にはアルミと真っ黒い紙が使われているだけで、名前の無い、それでいて物凄く美味しくて中毒性のあるチョコレート。

移動式の屋台のようなトラックで販売されているらしく、お目にかかる事自体が難しい。それでいて中毒性が高いと言うのだから不思議だ。当然、一部で問題にもなり始めている。…のだが。

記者としてこれ以上無いネタだと思い、脚を使って地道に調べる事にした。



半年も経って実態が掴めない所に、信頼できる筋からそのチョコレートだけを入手する事が出来た。中毒性が高いと言う噂通り、ほんの少ししか分けてもらえなかったのだが、それでも実物があると無いとでは情報の数が違う。

万が一のことを考えて、食べるのはやめておくことにした。曰く、女性や子供の前に現れる事が多いと言われているその屋台。まるで怪談のようだが、実は今回分けてもらえたのも子持ちの話好きな主婦から分けてもらったのだった。

見た目、匂いなどは特に何の変哲も無い。聴けば、味は極々普通のチョコレートに近いそうなのだが、何かが違うらしい。

知り合いに頼んで成分分析をしてもらった。一つ分かったのは、どんな種類かはわからないが、動物性の脂肪が含まれているのでは無いか、との事。

ラードか牛脂を混ぜているのか…?それにしたって、臭くなりそうなものだが…。



また半年経ってからの事。全くの偶然だとは思うが、その移動式の販売トラックにで合う事が出来た。購入しようとすると、

「あんたはもう持っているだろう。それを食べれば良いじゃないか。」

と透かされてしまった。

「何故それを?」

「あんたからこのチョコレートから匂う独特な、ほのかな香りがしたからね。俺は鼻が良いんだ。悪いな。ヒッヒッヒ…。」

と気味の悪い笑みを浮かべ去って行った。



それから何年も経って。やっとの思いで工場を突きとめる事が出来た。いや、正確に言えば工場長と、工場を見せてもらえる約束を取り付けたのだ。時間通りに待ち合わせ場所に現れた工場長。見た目小奇麗な紳士だが、服装はコックそのものだ。

「製造過程を知りたいのか?」

「問題にも上がっている。調べたくなるのも無理は無い。」

「それでは、こちらにどうぞ。」





彼が工場の中で見たものを世間に発表する事は無かった。彼は工場から二度と出る事は無かったからだ。そして、彼もまたチョコレートの

「おっと!これ以上は企業秘密ですよ。ふふ。」
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