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完全フィクション
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日常と言う言葉がなんなのか、私は知らない。





毎日毎日。

数え切れないほどの銃声と血、死体の山、山、山。

普通と言う言葉も、私にはわからない。毎日が異常だと思うけれど、ここではこれが通常で日常と呼ばれる光景だ。

私は子供だから戦わなくて済む。だけど大人はどんどん天に召されて行く。人が死んで本当に天に召されるのかは、死んだ事が無いからわからないけれど。いつか私も大人になる。私が大人になるのと、大人がいなくなって子供の私が戦わなければならなくなるのと、どっちが早いかな。

凄惨とか言う言葉で表現すればいいのだろうか。毎日見れるその光景は私は見たく無いから毎日隠れていた。いつか殺されるかもしれない。その恐怖でいっぱいだった。

昨日まで話していた人が、次の日には死んでいる。そんな事を繰り返していたら、人と話す事もしなくなった。仲良くならなければ悲しむ必要も無い。悲しんでいる余裕なんて本当は無いのだけれど、人間は良く出来ているのか、やっぱり知っている人が死ぬと少しは悲しいらしい。ちゃんと涙が出た。

家族はもうどこにいるのかわからない。私とはバラバラになって、生きているのか死んでいるのかさえわからなくなった。幸い、誰も住まなくなった家を見つけては、食べ物を見つける事は出来た。こんな状態でも自分が生きていたいと思っているのかはわからないが、死にたくは無い。死にたかったとしてもお腹は減る。食欲に逆らえるほど気力も無かったし、何が正しいのかもわからないこの世界で、とりあえず生き残っていられる私は、先人の残した恩恵を素直に受ける事にした。

一体いつまで続くのだろう。自分が望まないこの毎日を、他人である大人がいつまで続けるのだろう。もし終わる時まで生き残れたのだとしたら、平和な毎日を生きてみたい。何をするのかはわからないけれど、働いて、お金を稼いで。家族を探して、生きていたら一緒に仲良く暮らして行きたい。





しかしながら願いは叶わなかった。

私は何故自分が死んだのかさえもわからぬまま、何やら背中から胸に物凄い熱い何かを受けた後、ひどく止める事も出来ない赤い血が広がって行くのを見つめながら、倒れたまま立てず、動く力を失っていくのも感じていた。視界は白くなって行き、意識も薄れて行く。

私は何のために生まれたのだろう。

死ぬ間際に浮かんだのは、そんな疑問だった。

それを誰かが眺めていた気がするが、私には誰だかわからなかった。
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私のクローゼットには、服が数点しかない。寂しい。この空虚な思いを埋める為に、少しずつ買い物をして行く事にした。それほど私は、金持ちなわけでは無いから。

買い物をするのは楽しかった。色々な服を見れたし、小物に至るまで自分に似合うと思われるもの、とにかく見て気に入ったもの、面白さを感じたものなどなど。少しづつ、少しずつ趣味の無い私は何か没頭する事柄を得た喜びに満ち溢れながら、嬉々として服を集めた。

長年かけて集めたコレクション。少額なれど、回数を重ねればかけた金額は結構な値段になったと思う。クローゼットはいっぱいになった。だけど心は満たされない。

今度はクローゼットを買い足す事にした。自分で買った服を自分で着るようになり、私はおしゃれを楽しんだ。それはもしかしたら似合って無かったかもしれないけれど、私自身は楽しかった。そして色々な格好をして、また買い物に出掛けた。それが楽しみに輪を掛けて、さらに私を夢中にさせた。

気が付けば一部屋がいっぱいになった。クローゼットと、洋服で。保管するのも質を保つのにも必要なものがある。クリーニングもめんどくさがらずに出していたし、比較的、私のコレクションは清潔さを保てていたと思う。

そして私はたくさんのコレクションを前にして、何故だろう。以前と変わらない空虚な思いを抱いていた。しかしそれとは別の種類と感じる、満足感があった。クローゼットを開け放って、服が並んでいるのを眺めるだけでも、私の違う部分を満たしてくれていたのだと思う。

これだけ長い時間かけてやっと気づいたんだ。私が欲しかったのはこれじゃない。





私は、私が本当に欲しかったものを探しに、今まで集めてきた服を着て外に探しに出掛けた。本当に欲しかったものはなかなか見つからない。色んな場所に顔を出して、色んな人と友達になった。似たような人は見つかったけれど、そのたびに私は、これじゃない、この人じゃないと、妥協も出来ずに、出会っては別れ、出会っては別れて探し続けた。どうしても欲しかったのだと思う。洋服とは違う、たった一人の大切な人を求めて。

もちろんたくさんの嫌な目や耐えなければならない事もあった。だけど私にはそれが勉強になったし、たった一人の大切な人を探す為の手段を学ぶ事が出来たと思う。





そして、ついに見つけた。

もしかしたら添い遂げる事は出来ないかもしれない。

でも私は、長い時間を掛けて、育んで行こうと思う。
運動をしていてケガをしてしまった私は、クラスメイトの男子におんぶされて保健室へと向かった。こんな時でも無ければ男の子に抱きつく機会なんてそうそう無いから、ぎゅっと落ちないように抱き付いて、離れないようにしていた。いい匂い。

「あれ?先生いないのか・・・。」

耳を赤くしたままでドアを開けた彼は、私の預け所を見失ってしまった事で困惑しているようなので、助け舟を出す事にした。

「とりあえず重いだろうから、ベッドに下ろして?」

わざと耳元で言ってみる。ビクンと震える彼。

「あ、ああ・・・。そうだな。」

安心したように思いやる気持ちのわかる優しい下ろし方に好感を持った。

「大丈夫?」

「うん。大丈夫だけど、ちょっと痣になっちゃったな。」

正直言っておぶってもらうほどのケガではなかったのだけれど、彼がチャンスとばかりにすかさずおんぶしてくれたので、甘える事にしたのだった。

彼の目が泳いでいる・・・。が、私の痣がある太ももの内側に目が引き寄せられているような・・・あ。そうか。パンツ見えそうかも。

「ま。いっか。」

「え?何?」

「こっちの話。ね、鍵閉めて来てよ。ちょっと休みたい。」

「え?あ、うん。」

「それから、痣になるの恥ずかしいから、キミが包帯巻いてくれる?」

鍵を閉めに行った背中に頼んでみる。

「・・・わかった。」

鍵を閉めて戻って来た彼はちょっと緊張した顔で棚から包帯を出して来た。

「痛かったら、言ってね。」

彼の鼻息が荒くなったように感じる。多分彼の目には、私の今日履いている白いパンツがしっかりと見えているはずだ。

「ん。ありがと。包帯って、なんかちょっと感触気持ち良いかも。」

「それ、なんかわかる。」

「キミの手も。」

「え?」

「気持ち良い。」

「・・・。」

「ね、舐めたい?」

「えっ?」

「私の脚。」

二人の時間が一瞬止まるが、鼻息の荒い赤くなった彼の頷きによって再び動き始める。

白の上に赤が這う。私は気持ち良さに仰け反って声を漏らす。彼の頭を撫でる。愛しくてたまらない。

「凄く・・・気持ち良い。」

彼はこちらを強い目で一度見て、すぐに夢中になって目を閉じる。私は我慢出来なかったから、自分の敏感な部分を触って、彼の頭を撫でながら果てた。

「・・・ありがと。二回目だね。お礼言うの。」

彼はとろんとした目で私を見つめる。カーテンは閉まっている。私は、まな板の上の花。彼に食べられる事にして、自分の皮を綺麗に剥いた。白い果実が露になった。
ここには今、何も無い。

この世界で知らない人間はいないだろう。と言うよりも何人残っているかすらもわからない。

荒れ果てた荒野に広がる、本当に何も無い、起伏すら感じられないどこまでも続く平地は、人類が犯した最大の過ちによって平らにされたものだった。

始まりはほんの些細な事だったと思う。

自分の欲望や支配欲を優先する人間が集まり、それを淘汰しようとする国同士がぶつかってこうなったのだ。

あれ以来、何も感じられない。まるで自分が生きているかのような気分でいるが。もしかしたら死んでいるのかもしれない。それを確認する相手もいなければ、物すらも存在しないのだ。地面と空だけが世界の全てになってしまっていた。

目覚めた時はもう何も無かった。とりあえず出来るだけ歩き回ってみた。最初の場所に目印の服を置いて。目の前にどこまでも続く広がる荒野を見て、それほど広い範囲で歩かずに諦めてしまったけれど。

けれども自分だけが無事に?こうしている理由もわからなければ、どうしてこうなったかすら、ショックでなのか以前の事をうすぼんやりとすら思い出せずにいた。理由だけが頭の中にあって、直接的な要因は思い出せなかった。

地獄絵図のような記憶が頭の中に無いだけ却って良かったのかもしれない。ただ、このままだと飢え死にしてしまうのは明らかだったが、何も無い以上、生きる意味も無いのかもしれないとひどく達観した気持ちで思考だけが動き続けていた。

幸い暑くも無く寒くも無い気温ではあったし、眠るのには苦労し無さそうだった。とりあえずはここを拠点にして生きれるだけ生きてみよう。

大きく四角い枠を地面に足で描き、とりあえずそこをそう名付ける事にした。昔の住所の記憶があったので、一番最後の数字を取ったのだ。

先程から口の中が血の味がするが、もしかしたら実際に生きていて、もう長く無いのかもしれないな。悲しみや恐怖に慄きながら最期を迎えるよりは、何も無い諦めの付くこの状態が、慈悲深い何かに救われているのかもしれないとすら思った。

そして、自己を認識出来ているそのことこそが、あっさり消えて無くなってしまったであろう人たちよりも幸福なんじゃないかとすら思えていた。





広島や長崎に落ちた原子爆弾の被災者は、ちょっとした障害物のおかげで助かる者もいたと言う。その後病魔の様な被ばくに苛まれる事になってしまう者もいたのだが、それ以上の兵器がもたらす地獄は、想像もつかない。
のんべんだらり。

意味とか語源は良くわからないけど、雪国の真冬は雪に埋もれて、雪かきすらも意味の無い物となれば、当然家の中に引きこもる事となる。する事なんて何もない。

本当にたまたまだったけれど、あなたが家に遊びに来てくれて、帰れない事が不謹慎ではあるけれど嬉しかった。二人の距離が縮まる為には、小心者の私にはどうしても、少しでも長くと引き留める事は不可能だったから、自然の力でも借りなければこうなる事は出来なかっただろう。

「雪が止むのを待つか。」

そう言って残ってくれたあなたの横顔が少し嬉しそうに見えたのは私の勘違いじゃないって思いたい。先程まであなたとじゃれて遊んでいたウチで飼ってる白い猫も、飽きてしまったのか、部屋の真ん中にある私とあなたが入ったこたつの中で丸くなって眠ってしまっているようだった。猫好きなあなたのする事がひとつ減ってしまって退屈そう。

いつ取られてしまうか毎日心配しながら何も出来ない私は、内気を通り越してただの暗い無口な女に見えるんだろうな、と溜息を吐く。

「退屈か?ごめんな。俺がもっと話し上手だったら良かったんだけど…。」

退屈なんてとんでもない。不甲斐無い自分に嫌気が差してるだけです。

「…そうじゃないよ。」

頭の中ではこんなに饒舌なのに、どうして私はこれしかしゃべれないんだろう。

私の一言で、あなたはこちらを見る。私も見つめ返す。見つめ合ってしまい、顔が耳まで赤くなる。ああダメだ、私はどうしようもないくらいにあなたが好き。どうしたらいいのかはわからないけど、本当に。いつも頭の中はあなたでいっぱい。何もしてなくても、あなたに会えなくても。だから、いつもこうして何も言わずに会いに来てくれるあなたに感謝してる。あなたが好きだから。本当に好きなの。言いたい。でも言えない。拒絶されたら悲しいから。私の全てが終わってしまうから。ああ、どうしたら良いの。

「…すき…」

「え?」

え!?私、なんて言った?今言っちゃったの?ひいい!恥ずかしい!

「…そっち行っても良いか?」

先程よりも自分の顔が真っ赤になっているのがわかる。夢にまで見たあなたの問い掛けに、頷く事しか出来なかった。

こたつの向こう側にいたあなたが、私と同じ場所に入る。身体がくっつく。気持ち良い。

他にする事なんて何もないから。後はあなたに任せて、する事は一つ。

あなたと私の吐息が、部屋中に満ちて行く。



部屋の中には、あなたと私と、
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