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行列を何時間も並んで入ったそこには何も無かった。

光さえも、だ。

ただ私がそこにいて思ったのは一種の安堵感みたいなものがあった。

何があるかわからないし、普通であれば恐怖を感じていたのかもしれない。

しかしながら私が暗闇にいることに慣れていたと言う事もあって、途中、誰かに蹴躓いて謝るなんてことはあったにせよ、時間を忘れてそこにいてしまった。

気が付けばそこに何時間も滞在してしまった。制作者の意図は全くわからないが、未だ中に入れずにいる、もしくは選別されるのを待つ人たちを思えば、それ自体が制作者の意図の一部なのかなと思案を巡らせたりもした。

誰かが言っていたように拍子抜けと言う訳でも無く、何となく私は満足して帰途に就いた。そして今回のそれが何ら隠されていたものでは無く、それそのものを表していたのだなと感じたのであった。





後になって。何やら痴漢が出没したと言う情報が流れた。

私は運が良かったのかな?中肉中背であの中にいたし、別段美人だとか異性の目を引く様な人間では無かったにしろ、暗闇に何時間もいて判別できるのかはわからない。でもそれは偶然だとか幸運だとかでは無くて、それが真実の様な気がした。

負け惜しみだとか異性の方を持つとかでは無くて、例えば一人の人間がいたずらに発した言葉に対して、私も私もと見栄を張る人間もいるのも私は知っている。それは自分が体感していなかったとしてもだ。息をするように嘘を吐く人間は存在するので、私としては実際にあったにせよそんなに横行するような状態では無かったと思う。別の日にも開催していたので、その時にそんな状態だったらわからないけれど。

でも不思議なのは声が上がったのは開催後の話。そんなの開催中に声を上げれば良いではないかと思ったりする。不思議である。開催者も連絡してくれれば協力すると言う。警察に相談するのが先だと突っ込んでる人間もいたが、そうだとしても協力すると言っているのだから、おかしな話では無いと思う。





そのトラブル自体も織り込み済みの伝えたかったことなのだと言っている人がいたが、私はそちらの方がしっくり来る。

何だかわからないものに自分の意思で足を踏み入れておいて、何かあったら責任を取れと言うのなら最初から入らない方が良いのではないか。本当に何かしようと思えば殺人だって起こりかねない空間であると危険視している人もいた。そう考えると恐ろしくもなるが、少なくともそう言った事件は起こらなかったようだ。

人の心こそ、ブラックボックスなのでは無いかなと、ふと思ったりもした。
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