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透明な隔たりの向こうに君がいるとして、私が触れる事は出来ない。

細胞同士がくっついている以上、隙間はあるのだが、理論上でしかなく、私自身がその隙間よりも大きければ、入る余地もある訳が無い。





君はいつも心を閉ざしている。多分家族にも。それは誰に開かれる事も無く、一人ぼっちで終わるのかもしれない。それは環境だったり経験だったり、色々なものが作用しているのだと思う。

「誰も信じられない。」

が口癖で、私を目の前にしてその言葉が言えるのはとても肝が据わっているなと、皮肉交じりに感じる。しかしながら特に距離を縮めた訳でも、親密になった覚えも無いと、私自身に自覚があるから、特にそれがどうと言う事でも無く、現状を甘んじて受け入れるに至っている。





君はモテる。高嶺の花とはよく言ったものだが、どうやら人は手に入らないとわかり切っていても、それを手に入れたいと言う一種の反骨精神のような妙な欲求に駆られるらしい。何かと縁があり、そばでそのやり取りを見守っている私にとっては、

「またか。」

と口を出してしまう程に繰り返された、不毛な、そして一方的な恋愛のアプローチを見せられることになる。勘違いして欲しくないのは、本当に心の底から。嫉妬も羨望も無く、うんざりしているだけなのだ。その様な私を、当事者たちはどう見ているのかは知らないが、正直、たまたま場に居合わせただけで、結果のわかっている劇空間の一部になっている事自体、飽き飽きしているのである。だから全てを見届ける前に帰ってしまう事が多くなった。…いや、最近はもう冒頭でおいとましているかな。





「私は君を以上のような理由で、恋愛対象としては見れない。すまないね。」

何を勘違いしたのか、君は本日、何やら勇気を振り絞って決心したような面持ちで、私に告白して来た。私には愛する妻もいるので、特に不足している事も無く。断りの言葉を入れた瞬間、目の前で君は号泣しているのだった。

こういう時人は、本能的に優しく思いやろうとするのかもしれないが、私にとっては知人に過ぎない君をどうこうしようと思う気などさらさら無く、中途半端な優しさは、却って未練を残す事になるだろうなと、淡々と応対する事にした。

そしてまた私は、全てを見届ける事無く、君の前から立ち去る。君は何か大きな勘違いをしているだけだと思うし、何より性格だけ見てもお付き合いしたいとは思えない。それだけの要素を見せびらかした自業自得だ。そしてそれについて私が咎めた事も聞き入れなかった。上手く行くとは思えない。

背中で君の号泣を一瞥し、振り返る事無くその場を去った。

君には見えなかったみたいだね。私と君の間のアクリル板。
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1987/01/14
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