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私は独りになってしまった。

もちろん子孫はいるけれども、愛するあなたがいない事が、私が独りであると言う証明に、これ以上充分過ぎる理由など存在しなかった。

毎日、事あるごとにあなたに想いを巡らせる。巡らせては、ああ、良い人生だったな、と反芻するように、思い出に浸りながら、何の変哲もない毎日を過ごしている。

死後の世界など信じちゃいないが、私にとってはもしそんな世界があるのなら、あなたと再会出来ると言う希望として信じてみたいとは思っている。

身体もさして動かない。かと言って別に動きたい用事があるわけでも無く。

ありがたい事に子孫に迷惑を掛けない程度には、自分で生活出来るレベルの動きは出来ていた。私にとってそれはとても気に病まずに済む安心であった。

毎日とは言わず、毎週、毎月、毎年とどんどん時間は過ぎて行った。あなたがいないからいつも何も変わらない。食事を摂って、睡眠を取って。あなたがいればほんの些細な事も、楽しかったり、嬉しかったりしたのだろうけど、今は特に何の感慨も沸かなかった。

いつ死んでもいいや。私がそう思っていたのはずっと昔。何も知らない若い頃。それからたくさん経験を積んで、色々な事を覚えて。あの頃とは意味の違うものになってはいたものの、久しぶりにそんな気持ちに毎日なっている事が少しだけおかしかった。

それをあなたがいれば伝える事も出来たし、くだらない事だなと反省する事も出来た。しかし今の私には一人で思い、自己完結する事しか出来ない。それが少しだけ、あなたがいない事が本当に、寂しかった。

子孫はどんどん大きくなって行く。経験を重ねて成長して行く。年齢を重ねて老獪になって行く。私だけが変わらない。あなたがいない私だけが。

ずっとずっと待ち望んでいた時は、気が遠くなるほど繰り返された日常の後に訪れた。

何故わかるのかは自分でもわからないが、今夜、眠りに就いたら私は二度と目覚めない気がした。そんな気持ちは初めてだった。死にたい訳では無かったが、あなたのいない世界で生きていたい訳でも無かった。

この直感があっているかどうかはわからないし、もし天に召されたとして、あなあたに会える保証は何も無いけれど。年甲斐も無く、あなたに会えるかもしれない、そう思ったらワクワクした。

少しだけ…最後に子孫に迷惑を掛けてしまうのはしのびないけれど、順番だから仕方が無い。のんびり、旅立つこととしよう。愛しいあなたの元へ。
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1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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