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「力尽きるまで走り続けますよ、俺は。」

そう言った彼は、何故か今回私と同じ車、同じ装備でこの砂漠のカーレースに参加していた。私も彼も常連ではあるが、イマイチ彼の選択は不可解だった。私にとって最良なものでも、彼にとって最良とは限らないのに。

そして彼の発言も不可解だった。もちろん走り続ける事でトップに躍り出る事は可能だろう。一時的に。しかしまずマイペースを崩さない事がこのレースの定石だし、何よりも彼は誰と戦っているのかが理解出来ない。

例えば彼が私を敵視しての事と仮説を立てたとしよう。私は何も感じない。それはただの愚行であり、トレースであり…何よりも何の意味も持たない事は誰の目から見ても火を見るよりも明らかだった。

彼が無味乾燥な無意味な時間を、労力を費やしてまで浪費しない事を祈るのみだ。何かしらの意味を見出しての事なら、まだ説明が付くのかもしれないが。

このレースは『暗闇のラリー』と呼ばれている。夜になれば灯りひとつ無い氷点下の中で眠らなければならないからか?いや、それは違う。日中炎天下の中走り続けて進む事の方が多いだろう。ならば、何故そう言われているのか。

それは、全て自分との戦いだからだ。車には、ガソリンの消費も計算に入れつつ、燃料も少量も飲料も積みながら、スタート地点では皆同じ場所から顔を合わせて出発するものの、それぞれのルートで、下手をすればどこにゴールがあるのかわからなくなるような、相手の見えない持久戦だからだ。

体力の消耗や限界を感じて中断する選択も重要になってくる。ともすればゴールをどこにするかも、自分自身の決断によって変わって来るのだ。

プランを立てる時に、何を目指すのかが重要になってくる。まず人真似なんて自殺行為はしない。そこに意味を見出す場合以外は。それぞれの目的も違えば手段ももちろん違う。千差万別のレース。だがそれは一人で走っているのと変わりない。

もう既に私の目には当然の如く彼は見えない。彼からも、誰一人見えないだろう。いつ休んで、いつ走っているかすらわからないのだ。

このレースに参加するものは、早く着く事や、勝ち負けを目的にするようなチープな戦いを求めているのではない。それが目的なら舗装された道路で、安全に守られたルールの中で純粋に競うべきだろう。本来、参加すること自体が馬鹿馬鹿しいのだから、それなりの基本を守らなければ、自滅するだけだ。

私は彼の無事を祈った。
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1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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