忍者ブログ
完全フィクション
[1]  [2
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

自分自身でも何を考えているのかわからないが、ナルコレプシーと言うものなのだろうか、状況や場面を選ばずに私は寝てしまう。

人間の三大欲求とは良く言ったもので、自分の中から湧き上がり溢れ出て来る睡眠欲求に私は抗う事が出来ず、いや抗う気すら起きる事無く、いつでもどこでも24時間営業のように眠ってしまうのだった。

上司や先生は私の人生の中で私の身勝手とも言えるこの体質に割と寛容に、半ば諦観を含めた面持ちで、一定の理解を示してくれるのであった。きっと私は幸運なのだと思う。

私はいつも通り欲望に従って眠りに就いていた。

目を覚ませばいつの間にか麗しの君がよだれを垂らし眠りこけていた私のそばに佇んで微笑んでいた。

何かの夢でも見ているのだろうか。

「君の事、好きだから。」

恥ずかしそうに走り去った君の表情はぼやけていて、寝ぼけている自分には

「ああ、これはきっと夢なんだろうな。」

と思うのには充分過ぎるほどの脈絡の無い唐突な出来事だった。

現実かどうかなんて今は関係無い。それよりもとにかく今は眠い。私を静かに眠らせて欲しい。

一度は目を覚ましたものの、私は再び深い深い闇へと、眠りに落ちて行った。





目が覚めて。

私は一連の出来事を反芻してみる。あれは夢だったのだろうか?夢では無いとしたら、私は答えを返すべきだろうか。正直麗しの君に対して、好感以外の感情を持ち合わせていないし、こちらからお願いしたいぐらいで、願ったり叶ったりな話だ。

麗しの君は何だかそわそわして顔を赤らめながらやたらと話し掛けて来るし、何やら私と仲良くしたそうである事は間違いないようだ。

なんだろうな。何と返したらいい物やら。

それからと言うものの、一週間悩みに悩み抜いた。いつでもどこでも眠ってしまう眠りのコンビニエンスストアの様な私が、まともに人と付き合えるかどうか心配だったし、何よりも人生で何回も無いイベントなので、何か心に残る様な気の利いたセリフを返そうかと思いあぐねいてみたものの、考えれば考える程眠くなってしまう。そしていつも通り寝てしまう。

だんだんとその事自体がめんどくさくなって来て、麗しの君がわざわざ自分から私の事を好いていると言って来たんだ。これはもう乗っかって付き合っちゃえば良いんじゃないかと、割と楽観的に答えを返す事になんら気遣いする事も無く返した方が良いんじゃないかと思った。だから君に言ってやったのさ。

「私も君が好きだよ。何だか眠ってばかりの人生で、君と過ごせる時間は限られているかもしれない。何よりも一番は睡眠になってしまうけれど。」

告白を果たした後の一週間の君よりも赤い顔で、

「嬉しいよ、ありがとう。」

と言われた。

あれ、良く考えたらこれはプロポーズになってしまってやしないか。

それよりもまた眠くなって来たし、まあいいや。君と添い寝出来るなら、それはきっと幸せな人生なのだろうと思いながらもまた、眠りに落ちた。
PR
人は、左右対称では無いのだが、何となくちゃんと中心があって、左右対称な気がしてしまうのは、無駄な…と言うか細かい部分を省いて見える事に起因しているのかもしれない。

生きて来て面白いな、と思うのは、初めて会った時は外見しか情報が無く、その外見からしか判断する事が出来ない。しかしながらだんだんと相手と会話を交わし、内面を知り、深く付き合っていく事で、初対面の頃とは大概違った面を情報として受け取り、いつの間にかその後から受け取った情報に則した外見に変わって見えているような気がするから面白い。

もちろん服装だって髪型だってしわの数だってきっと毎日変わって行っているんだろうとは思うのだけれど、何となく、初対面の外見だけを見ていた時とは別人のような気がしてならなくなる。それは良い事でもあるし、時に悪い事でもあるのだけれど。





だから可愛いな、とか綺麗だな、とかかっこいいな、とか外見に魅力を感じても、内面がダメだったら全てが台無しになってしまうと思っている。せっかくの美しさや魅力あふれる外見でも、憤怒や嫉妬に彩られると、途端にその色彩はモノクロームとなり、魅力を失ってしまう。

だから外見と内面が魅力的で、私の好みの、それでいて気性の合う相手である事が、一緒にいる為には必要で、理想でありながらも、現実的に判断材料になり得る素材だと思う。

だから私は、落ち着いて、長い時間を掛けて、ゆったりと余裕を持って、友人でも、仲間でも、恋人でも、未来の家族でも、根気よく探す。そしてそれこそが私にとっての、そして人間全体にとっての幸せに辿り着く為の近道なような気がしてならない。

その人は私とは違った人間である事が当たり前で、私を求めてくれるならなお良い。諦めたらそこで試合終了ですよとは良く言ったものだ。何かのスポーツ漫画の先生のセリフだったかな。





そしてその人を見つける事が出来た。もちろん共通言語になる共通項は趣味などで見受けられるけれど、こうして私が横に並ぶと、まさに別人、アシンメトリーが目で見て取れる。

それはそれでとても居心地が良くバランスが良い物で、肩の力を抜いて歩いて行く事が出来る気持ちの良い二人三脚だ。

シンメトリーである事は、芸術的であるのはもちろんのこと、ある種の、人が人と末永く付き合って暮らして行く為の答えなのかもしれないな、とあなたの笑顔を見て思う。

「私の顔に何かついてる?」

付いてるよ、私との幸せの証が。
辺り一面、腐食された洞窟のような場所にいる。

まるで溶け出したようなその壁、天井、地面に至るまですべてがそうなっているのだけれど、私が手で触ってみると意外にも堅い。溶岩が冷えて固まったような、そんな場所にいるのかしらと思っては見たものの、情けない事に、ここに来る前の記憶が一切無い。まるで私はここで生まれ育ったかのような…。かと言ってここで何年何十年も生きた記憶がある訳では無い。そうだなあ、時間にして一日は経っていないんじゃないかと思う。

もしかしたら何か災害に遭って、頭でも打って記憶喪失になっているのでは無いか。と想いを巡らせてはいるものの、どうにもここ数時間から十数時間ぐらいの記憶しか無く、他はいくら思い出そうとしても思い出せない。本当に今まで私はここで生まれてすぐ植物人間のまま置き去りにされて、今日初めて目覚めたかのような妙な実感がある。しかしながら私がこうして思考しているのは、言葉を学んで知っているからに他ならぬので、その実感は勘違いであるだろうと推察する。

いくら考えてもどうにでも出来ないので考えるのを止めてみる。人間と言うものは暇だとたくさん考える。もしかしたら暇だから人は思い悩み、果ては自殺したりするのかしら。自殺と言う行為は知っている。何なんだろう。

自分の衣服をまさぐっては見るもののの、何も持ち物は持っていない。身分を証明するものも無ければ、誰もいないので服を脱いで確認した所、洋服のメーカーはユニクロだ。何の変哲もないカジュアルな格好である。何のヒントにもならない。

それでは何か探してみようと歩き回ってはみるものの、まず自分の一番古いであろう記憶では既に歩いていたのだ。多分一番最初に試してみたんだと思われる。

後戻りとか先に進んでいるとか言う実感が無い。枝分かれした場所に出たりはするものの、いかんせん今私はどこのどの辺にいるのかもわからない。かと言って食べ物がある訳でも無ければ、排泄欲も湧き上がって来ない。このままだと餓死してしまうのかなあとぼんやりと考えてはみたものの、別段恐怖も感じない。

そうこうしているうちに段々と歩き疲れて来たので、適当な疲れにくそうな所を見つけて座ってみる。そして寝転んでみる。意外と居心地は良い。とりあえず今日はここで休むとしよう。

果たして私は誰なのかもわからず、この場所がどこなのかも知る由も無いが、寝そべりながらなんとなく、人生ってこんなもんだよね、と何もわからないのに思ってみたりしながら私は眠りに就いた。
肉がね、丸見えになると血抜きすればピンクと白になる。

それは筋肉や肉がピンクで白は脂肪のコントラスト。美しいものは新鮮で芸術作品のようだ。

分解する時は関節に沿ってこうグルっと刃物で丸く切って行く。

見て良し、食べて良し。肉とは何と素晴らしいものなのだろうか。





果たしてピンクと白の色は他の物でも芸術作品として成り立つのであろうか。私はじっくりと熟考した上で別の素材を使って表現してみる事にした。

発泡スチロールを使って溶かして見る。色を塗ったり、水に浮かべてみたり。

もしも肉が腐り溶けてガスが溜まり、皮が表面張力でパンパンになった所にぷつん、とナイフや針でつつけば、皮はめくれて裏側が剥き出しになるだろう。その時、まだ肉は美しさを保ったままでいられるだろうか。

それとも醜い外見と腐臭を撒き散らして不快にさせたり、命の尊さを思い知らせてくれるのであろうか。そんな失われた命ギリギリの造詣を表現してみたくなったのだ。そうすると少し茶色がかっている場所があっても良いのかもしれないな。

発泡スチロールと炎で格闘した。思い切った思い通りの物が出来上がったと思う。出来上がった作品を眺めながら、細部を少しずつ調整する。本物とも見まごうばかりの、我ながら素晴らしいクオリティで出来た気がする。

「一人で眺めるだけで収めておくには惜しいなあ…。」





作品を展示出来るかどうかを審査してくれる調査員に、警察を呼ばれる程のクオリティで、嬉しいやら警察に説明するのがめんどくさいやら色々あったが、何とか美術展の展示へと漕ぎ着ける事が出来た。

正直言って実際の生物だったりましてや人間なんかでこんなものを作りたいとは思わない。これは芸術作品としてのフェイク、もしくは別の素材でその存在感、リアリティを持たせる事に意味があると思っている。

観覧者の中には、気持ち悪そうに口を押さえて通り過ぎる人もいた。それぐらいのインパクトを、心に爪痕を残せたと言う事だ。まずまず自分の中では満足出来た結果だと思う。





美術展が終わり片付けて持ち帰ると、いかにも自分が何のために作ったのか、私は狂ってしまったのでは無いかと言いようのない狂気じみた自虐的な喜びに満ち溢れていた。ワインボトルを片手に、芸術作品を眺めながら、その痛々しさすら感じさせてくれるクオリティに惚れ惚れする。





突然。





抑え込んでいた欲求が溢れ出すように湧き上がって来た。いけない。そんなことをしてはただでは済まない。止めろ。止めるんだ。

頭の中の善心とは裏腹に何かに誘われるように立ち上がった私は、鋭利なナイフを手に取った。
透明な隔たりの向こうに君がいるとして、私が触れる事は出来ない。

細胞同士がくっついている以上、隙間はあるのだが、理論上でしかなく、私自身がその隙間よりも大きければ、入る余地もある訳が無い。





君はいつも心を閉ざしている。多分家族にも。それは誰に開かれる事も無く、一人ぼっちで終わるのかもしれない。それは環境だったり経験だったり、色々なものが作用しているのだと思う。

「誰も信じられない。」

が口癖で、私を目の前にしてその言葉が言えるのはとても肝が据わっているなと、皮肉交じりに感じる。しかしながら特に距離を縮めた訳でも、親密になった覚えも無いと、私自身に自覚があるから、特にそれがどうと言う事でも無く、現状を甘んじて受け入れるに至っている。





君はモテる。高嶺の花とはよく言ったものだが、どうやら人は手に入らないとわかり切っていても、それを手に入れたいと言う一種の反骨精神のような妙な欲求に駆られるらしい。何かと縁があり、そばでそのやり取りを見守っている私にとっては、

「またか。」

と口を出してしまう程に繰り返された、不毛な、そして一方的な恋愛のアプローチを見せられることになる。勘違いして欲しくないのは、本当に心の底から。嫉妬も羨望も無く、うんざりしているだけなのだ。その様な私を、当事者たちはどう見ているのかは知らないが、正直、たまたま場に居合わせただけで、結果のわかっている劇空間の一部になっている事自体、飽き飽きしているのである。だから全てを見届ける前に帰ってしまう事が多くなった。…いや、最近はもう冒頭でおいとましているかな。





「私は君を以上のような理由で、恋愛対象としては見れない。すまないね。」

何を勘違いしたのか、君は本日、何やら勇気を振り絞って決心したような面持ちで、私に告白して来た。私には愛する妻もいるので、特に不足している事も無く。断りの言葉を入れた瞬間、目の前で君は号泣しているのだった。

こういう時人は、本能的に優しく思いやろうとするのかもしれないが、私にとっては知人に過ぎない君をどうこうしようと思う気などさらさら無く、中途半端な優しさは、却って未練を残す事になるだろうなと、淡々と応対する事にした。

そしてまた私は、全てを見届ける事無く、君の前から立ち去る。君は何か大きな勘違いをしているだけだと思うし、何より性格だけ見てもお付き合いしたいとは思えない。それだけの要素を見せびらかした自業自得だ。そしてそれについて私が咎めた事も聞き入れなかった。上手く行くとは思えない。

背中で君の号泣を一瞥し、振り返る事無くその場を去った。

君には見えなかったみたいだね。私と君の間のアクリル板。
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
リンク
最新コメント
最新記事
最新トラックバック
プロフィール
HN:
耕助
年齢:
37
性別:
男性
誕生日:
1987/01/14
職業:
フリーター
趣味:
音楽鑑賞
自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター
忍者ブログ [PR]