忍者ブログ
完全フィクション
[1]  [2
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

泥水の上に張り倒されて、頭を彼女の足で踏みつけられる。

「あなたには泥水をすする姿がお似合いよ。」

特に何の反論をする気もなければ反抗する気にもなれない。
確かに俺には醜く薄汚れているのがお似合いだから。
彼女は嘲笑混じりに俺を見下し、言葉を続けた。

「あなたは醜いままでいるの。それがあなたの生き様だから。」

地べたを這いずり回り、醜くあがいてこそ俺の姿。
そんなことは自分自身が心底痛感している。

ここで、彼女がひどく冷たく、澱んだ雰囲気を醸し出した。

「あなたは暗闇の中にいてこそ鈍く黒く光り輝くの。
全てを隠し通して。触れるだけで口を開くような鋭い刃を。
そして触れるだけで鈍痛と共に砕け散るような拳を。」

『全てはその時が来るまで。』

俺と彼女の声が重なると、彼女は薄ら笑いを浮かべながら
泥水まみれの俺を置いて、振り返りもせず去っていった。

今ここにある全てが、俺と言う人間そのものなのだ。
PR
またひとつ、託すことが出来た。
素晴らしき作品を生み出す女神の降臨。
その姿は何の厭味もなく、美しさも自然なものだった。

忌まわしき彼の地で、それでもひとつの光明が差す感覚。
苦汁を飲んでいたあの頃から時間が経っているのだ。

自分の手の中にあるたくさんの物を、少しづつ誰かに手渡して。
それは物ばかりでなく形のないものも託して行く。

こうしてまたひとつ、安らかな眠りに近づいている。
・・・・・本当に安らかにはなれないかもしれないけれど。

自分を見失って、それでも希望にすがり付いて、
見苦しく生きた先に倒れる場所があればいい。
まだ少し、生きていかなければならない。
私はセイレーン。海で歌い続ける。
誰かを殺すために。罠にかける為に。

だけれども一人は嫌。でも本能が孤独を作り出す。
私に惹かれて来たとしても、私と結ばれることはない。

もしも私が人間ならば。幸せを得ることも出来ただろうに。
海の孤島で今日も歌い続ける。孤島ではなくただの岩山だけれども。

切り立った断崖絶壁の上にいる方がまだましかもしれない。
最初から誰も近寄れないとわかっているのなら、諦めもつくから。

きっと今日も誰かが私の歌声に魅了されて海に沈む。
悲しいとは思わないけれども、もったいないなぁ。
私は彼に脅されていた。

しかし私は恐怖感も危機感も感じていない。
もちろん最初から彼とこのような関係になったわけではない。
出会ってしばらくは確かな信頼がお互いにあったはずだった。

彼は私を心配するフリをして、嘘で塗り固めた
偽善を私に対して振りかざし始めた。

それ以後は私がそれに気づかないフリを
していたからこそ、彼とは良好な関係を
築けていたのだ。決して彼の話術の賜物ではない。

彼は私に圧力をかけてきた。
他の人間にも同様に牽制をして見せた。

それは後に1つ1つが自身の破滅の材料に
なるとは知る由もなく。次々と材料を増やしてくれた。

彼に対して私から何かを仕掛けるつもりはない。
ただ、彼は1つ勘違いをしている。

私が『どうなっても構わない』という覚悟を
決めるだけで、破滅の材料の全てを駆使して
彼の人生をズタズタに引き裂き、それはきっと
自身の問題だけでは済まされなくなるだろう。

あらゆる手段をなりふり構わず
目的を達成する為に実行するだけ。

それだけで社会的・法的・公的に抹殺
して道連れにすることが出来るのだ。

私はただ、日常を淡々と平和に過ごしていく。

彼が自らの手で全てを失う私の
スイッチを切り替えないように祈るのみだ。

一定数殴られることを待ち望み、
母親を惨殺した子供のように。

私の破滅など、この世界にとっては
何の問題もない出来事に過ぎないのだから
貧乏な少女がいた。

彼女は努力家で、何をするにも最後までやり遂げ
たとえ失敗したとしても成功するまで何度も挑戦した。
ただし、貧困の苦しさゆえか、彼女の心は荒んでいた。

スラムの町の片隅で少女を見つめる老人がいた。
彼は決して裕福ではなかったが、老い先短い自分の為よりも
その少女に金銭面で支えてあげることにする。

やがて彼女は与えられたことに余裕が出来、
いろいろなものを老人に求めた。老人は何を
求められても笑顔で、少女の為に支え続けた。

ある日のこと。老人と連絡が取れなくなる。
少女はすでに自分の力で貧困から抜け出して、
別の町に住んでいた。もはや老人のことを
疎ましくすら思っていたので、放っておいた。

愛する男性を見つけ出して、幸せの絶頂の中、
何の気なしに老人の話を自慢げに語りだした。
そして、自分になんの見返りも求めず支えてくれた
老人を、むしろ鼻で笑うように馬鹿にして語った。

それを聞いた男性は憤慨し、彼女に言った。

「君は何のお返しもせずに、もらえるものだけもらって
後は逃げるというのかい。君には幸せになる権利などない。」

男性は別れると言い出した。彼女は焦って引き止めたが、
男性は聞く耳を持たなかった。彼女はむしろ男性と
別れる原因となった老人を憎み、何か文句を、
言ってやろうとののしってやろうと老人を探した。

話せないはずの飼っているインコが語りだす。

『老人を探してどうするつもりだい?
最善の行動を取るにしたって、遅いと言うのに。』

彼女はその言葉の意味がわからなかった。
勝手に老人が好きで私にくれただけじゃない。
くれると言うものをもらって、何が悪いの。そう思った。

『人間が悪い。』

そう言ってケタケタと笑うインコを、彼女は握り潰した。
インコは死んでしまった。彼女はなんとも思わなかった。

老人を見つけ出した時は墓の中だった。
涙は出なかった。怒りさえ沸いた。
彼女はいつまでも気付かなかった。

だからこそ、幸せを掴めずに彼女はその一生を終えた。
老婆になってしまったその死に顔が、安らかであるはずがなかった。
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
リンク
最新コメント
最新記事
最新トラックバック
プロフィール
HN:
耕助
年齢:
37
性別:
男性
誕生日:
1987/01/14
職業:
フリーター
趣味:
音楽鑑賞
自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター
忍者ブログ [PR]