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何事も無い、何の変哲も無い、平凡な、極々面白みの無い毎日。

絶望なんて枯れ果てるほどして来た自分は、最早絶望する事にすら飽きてしまった。

ただ淡々と毎日を繰り返し、自害を求める事すら億劫で、『死』と言う誰もが訪れるゴールに向かってヨタヨタと歩き続ける精神状況。

そんな中でヰンタアネットなる仮想空間は、自分にとって現実逃避であり、夢の国でもあり、絶望にすら飽きた人生にひと時の憩いを生み出してくれる場所だった。

別に失うものも無いのだから、危険を顧みず現実に他人と逢ってみたりもする。それは結局、「ああ、またか。」とつまらない人間との出会いを増やす為だけの作業だったけれども。

同属嫌悪と言うか、同じく現実逃避している人間は、何処か自分にとっての『ダメ人間』を投影しているような相手ばかりで、絶望にも飽きている自分には特に落胆も無く、先ほど記述したとおりに「ああ、またか。」と流れる景色を見つめているだけであった。

ある日突然、一年ほどヰンタアネットで仲良くしていた一人からお誘いがあった。音楽を演奏する『ラヰヴ』と言う名の舞台に行こうと言う。

紆余曲折あって、何処かどうなるかわからない部分もあったし、頭で色々な可能性を考えていたけれど、消極的な自分はスロウスタアトにチケットを買い、実現するかもわからない逢瀬に身を委ねる事にした。

写真を交換して、ガッカリしないようにと念を押した。写真を見てなかなかの好みではあったが、本人かどうかは会って見ないとわからないなと思った。

当日を迎えてもまだ現実感は無く、本当に来るのかな・・・なんて思いながらも、準備に時間がかかったり、普段間違えない道筋を間違えて右往左往してしまったりした。

待ち合わせ場所に立っていたキミを見て、驚いた。

何年も靄にかかっていた脳内が、一気に晴れていくのを感じた。

え?

目の前にいるのは、理想の女神。何かに騙されているかのような気分で、緊張してしまう。

美しい。

仮想空間越しに文章だけで連絡を取っていたキミよりも、可愛かったり、面白かったり。

コロコロと代わる表情を見ては、ニヤニヤしてしまいそうになる自分に気付く。

何年ぶりだろう。久しぶりに恋に落ちた。

今までの失敗や絶望がこの為の準備であったかのように。キミとの時間を本当に大事に、大切に過ごした。キミとの別れは決められていたけれど。

しばらくしてキミと新しい人生を始めるのだけれど、それはまた別のお話。
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1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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