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  <title>溢れ出す随液</title>
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  <description>完全フィクション</description>
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    <title>シースーサイド</title>
    <description>
    <![CDATA[大いなる海と言えば聞こえは良いが、人類を蹂躙する程のその大きさに私はいつも恐れをなしていた。<br />
<br />
なんて言い方をすれば少しは格好がつくだろうか。簡単に言ってしまえばただのカナヅチである。<br />
<br />
そんな私がなぜこんな所に辿り着いたのかと言うと、これもまたあまりにもありきたりで簡単な話なのでもしも実情を知る者がいればつまらないの怒るかあくびのひとつでもするかもしれない。要は恋人に別れを告げられた。振られたのであった。<br />
<br />
相手に言いたい事の一つもあるのだが私は私で至らない、悪い所もあっただろう。別れを告げられた時は何となくそんな予感もしていたので別段驚く事は無かったのだが、いかんせん自分でも信じられないぐらい悲しかったらしく、相手がいなくなってからじわじわと独りであることを実感すると、何もかもが切なくなって苦手であるはずのこんな場所へ来たのだった。<br />
<br />
「うーみーはーひろいーなーおーきーいなー・・・へへへ・・・。」<br />
<br />
歌ってみた所でまだまだ落ち込んでいることに気付く。努めて明るく振る舞ったつもりが自分の落ち込みようを思い知ることになって、輪を掛けてどん底に悲しくなってしまった。<br />
<br />
いつもはとても恐ろしい海も、今はその大きさに安心感を覚える。とぼとぼと波間を避けることも無くただただ深みへと歩いて行くと、この世界の悲しい寒さよりも温かく感じて心地良かった。<br />
<br />
いよいよ足が付かなくなって来るともうどうでもいいやと言う気持ちになり、そのまま波に流される。いつもならもがき苦しみ溺れる所であろうが、何と私の身体はゆらゆらと波間に浮かんでしまうのだった。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
それからしばらく流されて、元いた所もわからなくなり、海のど真ん中に放り出された。いつの間にか私は泳げるようになったようで、服を着ていてもクロールだとか平泳ぎに挑戦してみたらあっさり泳ぐことが出来るようになってしまった。今までの恐怖はなんだったのだろう。頑なに拒んでいた心を開いたおかげか、どうやら私は海と和解出来たようだ。対話した訳でも無いのにね。<br />
<br />
結局はやらず嫌いとでも言おうか、怖がって挑戦する気が無かっただけの話だった。ここへ来て泳げるようになり、見知らぬ島に辿り着き、人生わからないものだなあと冷静に服を脱いでたき火を炊いて乾かすことにした。<br />
<br />
ありがたいことに暖を取れそうな洞窟まで見つかってしまった。これはいよいよ神様に生きろと言われているような気さえしていた。<br />
<br />
気が済むまでここにいよう。お腹が空いたら帰りたくなるかもしれない。<br />
<br />
温かな岩の感触を不思議と心地良く感じながら、身体が乾くころには眠りに就いたのだった。]]>
    </description>
    <category>第44巻</category>
    <link>https://ahuredasunijiru.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC44%E5%B7%BB/%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%89</link>
    <pubDate>Mon, 15 Jan 2018 11:05:55 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>君はどう読む？</title>
    <description>
    <![CDATA[歩いても歩いても。そのどんよりとした雲は収まらず。とにかく前だけを向いて明るい場所を目指して&hellip;いや、いつか明るくなることを望んで歩を進めている毎日。<br />
<br />
大したことないって誰が決めても自分には納得が行かない。そんな中でただ自分の身体に線を引いては安心する。<br />
<br />
誰かが止めろと言ったところでそこに安心があるのであれば続けるしかないと思う。硬すぎるマフラーがいつか旅立たせるかもしれないと言うことよりもよっぽど重要だと思う。<br />
<br />
きっかけなんてどうってことないんだ。ほんの小さなことで泣いたり笑ったり。それが生きてるってことじゃないかなんて考えはずっと昔から数えきれないぐらい星の数ほど繰り返されて来た。それは正しいからか、事実だからか、その場しのぎでもやり過ごすことが出来るからだろうか。<br />
<br />
何にしても自分だけが納得の行く理屈があれば屁理屈でもいい、この手につかみたい。<br />
<br />
脳がドロドロになるぐらいの快楽が続いても、遠くからやって来るどんよりとした曇天が晴れる訳でも無く。少しの間忘れることが出来たとしても、そこにあることには変わらないのだ。<br />
<br />
ゴールなんて見えやしないし、テープを切るまではそこが終わりだなんて思えない理不尽なレース。<br />
<br />
もしかしたらとっくのとうに通り過ぎてるかもしれないのに、周りを注意深く探りながら時に匍匐前進、時にパントマイムの如く音を殺して、思い付きで全力疾走をかまして進んで行く諸行無常。<br />
<br />
虚しくはないか。悲しくはないか。辛くはないか。自分自身がわからない。<br />
<br />
楽しかったり嬉しかったりしてもそれが永遠に続く訳では無い事はみんなわかっているのだろう。<br />
<br />
それでもひとときの光を頼りに何となくスタートラインを飛び出したからには寄り道して彷徨っても前に進まなければならないのだ。<br />
<br />
あなたにとって意味のある事とは。自分にとって意味のある事とは。他人が決めるものでは無いはずだ。自分で決めて良いんだ。自分が決めるべきなんだ。<br />
<br />
飛び降りても飛び込んでもキャンセルは出来ないし、運任せで近道が遠回りになる事だって有り得る。とにかく世界は広いけれど狭い。見ている景色すらそうだから時折嫌になる。だからと言ってずっとそんな訳でも無い。<br />
<br />
地面が無くなれば下へと落ちる。翼を生やして飛ぶ事すら出来ず。この両足すらも失ったとしても進んで行くしかない。<br />
<br />
振り返れば何が見える？遠くを眺めて何が見える？<br />
<br />
今しかない。過去も未来もここには無い。<br />
<br />
感じられるものが全て。<br />
<br />
ただそれだけだから。]]>
    </description>
    <category>第44巻</category>
    <link>https://ahuredasunijiru.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC44%E5%B7%BB/%E5%90%9B%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%86%E8%AA%AD%E3%82%80%EF%BC%9F</link>
    <pubDate>Fri, 12 Jan 2018 07:47:49 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>慈悲の椅子</title>
    <description>
    <![CDATA[椅子に括られて。<br />
<br />
猿轡を噛まされて。<br />
<br />
目隠しをされて。<br />
<br />
今が昼なのか夜なのかもわからない。<br />
<br />
そんな部屋に監禁されている。<br />
<br />
いつのまにかこんな状態になって。<br />
<br />
それからどれぐらい経っただろう。<br />
<br />
あまりの繰り返しの毎日に記憶すらも曖昧になっている。<br />
<br />
何故か一人の異性が世話をしてくれている。<br />
<br />
食事、排泄&hellip;。基本的欲求から生まれ出でるものに対しては全て片付けてくれているようだ。<br />
<br />
もちろんそんな状況を望んでなどいない。<br />
<br />
出来る事なら今すぐここから逃げ出したい。抜け出したい。<br />
<br />
しかしながら気が付けば睡眠もベッドに縛られてきちんと？眠れてしまっている。<br />
<br />
いつしかこの状態に安堵感すら覚え始めている自分が腹立たしい。<br />
<br />
しかしながら今の所上手い方法が思い付く訳でも無く。<br />
<br />
きつめに縛られている訳でも無いのだが、絶妙な所で自由は奪われているようだ。<br />
<br />
たまに呼吸音が聞こえるが、あまり話しかけては来ない。<br />
<br />
それは知っている顔なのか、全く知らない顔なのか&hellip;、<br />
<br />
興味は尽きないけれどもとにかく聴くことも見る事も出来ないのだ。<br />
<br />
悔しくて悔しくて涙が出ることもある。<br />
<br />
その涙を優しく指やタオルのようなもので拭いてくれる。<br />
<br />
そんな優しさがあるのなら、何故自由にしてくれないんだ！<br />
<br />
叫んで訴えかけてもウーウーと呻くだけになる。<br />
<br />
なんでこんな仕打ちを受けなければならないのか。<br />
<br />
全く思い出せない。何が原因かもわからない。<br />
<br />
ただ毎日、望んでもいないいたれり尽くせりの中に身を溺れさせるだけだ。<br />
<br />
最初の頃はこんな目に遭わせた奴を殴ってやりたいとも思ったが。<br />
<br />
今ではもうただただなぜこんなことをしているのかと問い質したいだけだ。<br />
<br />
しかし今がどんな状態でどんな時間なのかもわからないまま。<br />
<br />
私は死んでいくのかもしれないな&hellip;。と漠然と思った。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
「あの患者さん、とても植物人間とは思えないわ。」<br />
<br />
「一体どうしたんだい藪から棒に。」<br />
<br />
「だって涙を流したり、何かを言おうとしているように見えたりすることもあるのよ。」<br />
<br />
「脳波はほとんど動きすら感じられないんだがね&hellip;。」<br />
<br />
「私のことはわからないかもしれないけれど、何かうっすらと感じるものがあるのかしら。」<br />
<br />
「こればかりは我々でも本人でも無ければわからないのかもしれないな。人体の神秘だ。」<br />
<br />
動けない人間の少しだけ希望の込められた錯覚。それとも幻想だろうか。<br />
<br />
私は自分がいつかそうなるかもしれない可能性を思うと、真摯に職務を全うし続けることが救いなれば良いと、柄にもなく神に祈った。]]>
    </description>
    <category>第44巻</category>
    <link>https://ahuredasunijiru.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC44%E5%B7%BB/%E6%85%88%E6%82%B2%E3%81%AE%E6%A4%85%E5%AD%90</link>
    <pubDate>Fri, 06 Oct 2017 08:48:34 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>フォーク</title>
    <description>
    <![CDATA[まさか自分がこんな目に遭う事になるなんて、数年前は思ってもみなかった。<br />
<br />
<br />
<br />
今まで見て来たのは、顔の丸い彼らの無残な姿。気が付けば曲げられたものや、それはもう力任せに折られたものから、時間を掛けてなぶり曲げられたものもいた。<br />
<br />
我々はやりづらいのであろう、その誇らしい多叉の鉾のような出で立ちが、ある種危険から遠ざけてくれていたのだった。<br />
<br />
いとも簡単に曲げられていく奴らを横目に、あれだけの衆目を晒しながら見るも無残な姿で役割を終えてしまうのはこんなにも悲しい事なのだな、と他人事のように思ったものだった。<br />
<br />
しかし。<br />
<br />
しかしだ。<br />
<br />
どの時代にも勇者はいる。挑戦者もいる。向上心があり、技術研鑽を積み重ねて、想いも寄らないことを成し遂げてしまう達人は、いつの時代にも奇跡的に、いや時代の流れから必然なのかもしれない。<br />
<br />
私は信じられないものを見た。<br />
<br />
仲間たちが次々と曲げられていってしまうのだ。いとも簡単に。そう、顔の丸い彼らが次々と曲げられていくように。<br />
<br />
私は恐怖した。仲間たちの下で、いつしか、明日は私の番なのかもしれないと、とにかく怯えながら、そして選ばれないことだけを祈りながら、毎日の平穏に安堵しては、また恐怖する日々を過ごした。<br />
<br />
そして悪い事は重なるものなのだなと思った。ついに私がいる場所を移される時が来た。しかも衆目に晒されるような状況を察することが出来る準備の様子。私はついにこの日が来たのかと覚悟を決めなければならなかった。<br />
<br />
我々は頑丈な身体で出来ている。だからこそ挑戦のしがいもあるのかもしれない。<br />
<br />
デモンストレーションとばかりに丸い顔の奴らの、新たな犠牲者が積み上げられていく。他人事であれば憐みもしたがそんな余裕は無い。次は私たちなのだ。<br />
<br />
そして一人一殺と言わんばかりに、ひとりひとりの前に並べられていく。私はまだ並べられずにいた。仲間たちよ、すまない。私はまだここにいる。<br />
<br />
丸い顔のやつらよりは時間が掛かるようだが、凄惨な仲間たちの曲げられていく姿が目に入る。せめて仲間たちの最期ぐらいは見届けよう。覚悟を決めて曲げられていく様子をしかと見届けていた。<br />
<br />
すると私が突然持ち上げられた。一番の加害者である憎きあの達人だ。彼に曲げられた仲間たちの数は計り知れない。そして軽そうな雰囲気で私を持った。<br />
<br />
「スプーンでもフォークでも、曲げるのはそんなに難しくないんですよ～。コツさえ知っていれば&hellip;ほーら！」<br />
<br />
視界が歪む。ブンブンと身体を振り回されると、私の身体は四方八方にねじ曲がっていた。<br />
<br />
『おお～！』<br />
<br />
凄惨な見世物と言うものは時に人の興奮を誘うらしい。私の無様な姿を見て観客が熱狂している。<br />
<br />
さらば仲間たちよ。せめて何かを食べる為の道具として、生涯を終えたかった&hellip;。まさか曲げられるために生涯を終えることになろうとは&hellip;。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
無念。]]>
    </description>
    <category>第44巻</category>
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    <pubDate>Wed, 09 Aug 2017 06:14:03 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>スプーン</title>
    <description>
    <![CDATA[IT業界と言えば聞こえが良いが、要は私はデスマーチの続く牢獄のような部署&hellip;ブラック企業に勤めていた。<br />
<br />
私の唯一の支えだったのは何でもそつなくこなせる後輩。後輩がいなかったら乗り越えられなかったプロジェクトはいくつもあるだろう。<br />
<br />
後輩はいつも笑顔で、楽しそうに仕事をする。上司の無理難題にも全力で応える。都合の良い部下として扱われてはいたが、誰にでも好かれる後輩は仕事を誇りに思っているようだった。<br />
<br />
そんな折、いくつもの修羅場を潜り抜けて来て、それは起こった。こともあろうか例の私たちの直属の上司が、その後輩に失敗の責任をなすり付けたのだ。<br />
<br />
失敗したのがその上司なのは一目瞭然。大きなわかりやすい判断ミス。しかしながら現場のことなどどうでも良い上層部は、上司の失敗を上司自身が後輩のものとして報告する言葉を鵜呑みにしたのだ。<br />
<br />
その日から後輩は変わった。いや、大筋はほとんど変わっていない。ように見える。仕事はこなし続けているし、無理難題は次々とその手腕でみるみるうちに解決して片付けて行く。しかし、合間を見つけては小刀で木材を削っているのが気になった。<br />
<br />
気になった&hellip;が、あまりにも鬼気迫るいつもの後輩とは違う表情なので、こちらとしても何と声を掛けたら良いのか、もしかしたら私がここで後輩に勇気を出して声を掛けるべきだったのかもしれないが、とてもじゃないが恐ろしくてそんなことは聴けない程に、仕事の合間を縫っては手のひらに収まるぐらいの大きさの木材を削り続けた。<br />
<br />
そんなある日のこと。後輩は一仕事片付けて、多分その時溜まりに溜まって積み重なっていた仕事はその時点で全て片付けていたはずだ。その辺は後輩らしいな、と後になって思うのだが、後輩は私に向かって真剣な眼差しでまっすぐこちらを見据えて言った。<br />
<br />
「先輩、お世話になりました。私、先輩と仕事が出来てとても楽しかったです。」<br />
<br />
ぽかん。<br />
<br />
と言う言葉はこういう時に使うのだろう。あまりの突然の申し出に、私は目を丸くして何と答えて良いのかわからず固まっていると、にこっと満面の笑みを浮かべて、今度はツカツカツカと上司の元に歩み寄った。<br />
<br />
「もうやってられません。お世話になりました。」<br />
<br />
ビタン！<br />
<br />
振りかぶって第一球、投げましたとばかりに上司の顔に叩きつけられたのは、例の木材で彫られたスプーン。<br />
<br />
木の匙。<br />
<br />
匙を投げる。<br />
<br />
「あ。なるほど。」<br />
<br />
場違いな感心を口にすると、今度はドカンと上司の机に辞表を叩きつけて、後輩はそれはそれは美しく颯爽と去って行った。<br />
<br />
職場の全てが凍りついたように時間が止まっていたが、しばらくして自分が犯したもっと大きな失敗と損失に気付いたのか、時遅しとは言えど必死になって職場を飛び出して、きっと後輩を追い掛けに行ったのだろう。でも後悔してももう遅い。<br />
<br />
それから後を追うように私もその仕事を辞めた。]]>
    </description>
    <category>第44巻</category>
    <link>https://ahuredasunijiru.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC44%E5%B7%BB/%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%BC%E3%83%B3</link>
    <pubDate>Tue, 18 Jul 2017 09:05:20 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>マッチ売りの少女</title>
    <description>
    <![CDATA[「マッチは、マッチはいりませんか。」<br />
<br />
売れない、と言うことは無い。<br />
<br />
私は繁華街の道端で、時折こうしてマッチを売っていた。<br />
<br />
普通に買ってくれる人もいる。これじゃないと煙草が美味く無いよねえと言う常連さんもいる。雨の日も雪の日も。とにかく私は生きるためにマッチを売り続けた。<br />
<br />
「マッチは、マッチはいりませんか。」<br />
<br />
火をつける為だけのマッチ。実はもうすぐ工場が無くなってしまうのだと聴いている。仕入れるのはいつものことだが、その仕入れる先が無くなってしまっては、この商売も出来なくなってしまう。<br />
<br />
別の仕事を探せば良かったのかもしれない。でも惰性で生きる私にとっては、マッチを売ることで生きる、と言うルーティンを崩すのが、何故かとても苦痛だった。<br />
<br />
もしかしたらこのマッチを売ると言う行為自体に依存しているのかもしれない。<br />
<br />
「マッチは、マッチはいりませんか。」<br />
<br />
暑かろうが、寒かろうが、マッチは売れる。手元にあるものが最後のまとまり。これが無くなってしまえば、私はついにマッチ売りでは無いただの人に成り下がってしまう。それがとても怖かった。<br />
<br />
怖かったけれど、決して最後まで止めようとは思わなかった。この籠の中のマッチを売り切るまでは、私はマッチ売りなのだから。<br />
<br />
最後の一箱が売れた。とても寂しい気持ちになった。でも最後に買ってくれた紳士の旦那様は私の手を握って仰った。<br />
<br />
「君はこんなに痩せ細って、頑張っていたんだね。聞けば工場は閉鎖すると言うじゃないか。どうだろう。ウチで使用人として働いてみては。」<br />
<br />
願っても無い申し出。<br />
<br />
のはずだった。<br />
<br />
気が付けば私は首を横に振っていた。<br />
<br />
「そうか。」<br />
<br />
少し押し黙って、旦那様は何かを思い付いたように、再び私の手を握った。<br />
<br />
「最後の一箱は、私が買ったものだけれど、君にあげよう。この一箱は、間違いなく君のものだ。&hellip;また会おう。身体を大事にしなさい。」<br />
<br />
私は自分でもわけもわからないまま、旦那様のご厚意に泣いていた。旦那様は何か可哀想なものでも見るかのように振り返っては、去って行った。<br />
<br />
最後の一箱は、私のマッチ。<br />
<br />
そうだ、マッチを擦ろう。火を点けよう。<br />
<br />
私が売り続けたマッチ。良く燃える。それはさながら私の命みたいに感じていた。<br />
<br />
「暖かい&hellip;。」<br />
<br />
雪も降り始めた街路の隅っこで、私は座り込んで身体を丸めてただマッチの火を眺めた。<br />
<br />
最後の一本まで、私は見届けるから。<br />
<br />
私の人生も命も。<br />
<br />
ひとつ残らず燃やし尽くしてね。<br />
<br />
私は温かな気持ちで、最後の火を眺め始めた。]]>
    </description>
    <category>第44巻</category>
    <link>https://ahuredasunijiru.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC44%E5%B7%BB/%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%81%E5%A3%B2%E3%82%8A%E3%81%AE%E5%B0%91%E5%A5%B3</link>
    <pubDate>Mon, 10 Jul 2017 06:20:29 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>ブラックボックス</title>
    <description>
    <![CDATA[行列を何時間も並んで入ったそこには何も無かった。<br />
<br />
光さえも、だ。<br />
<br />
ただ私がそこにいて思ったのは一種の安堵感みたいなものがあった。<br />
<br />
何があるかわからないし、普通であれば恐怖を感じていたのかもしれない。<br />
<br />
しかしながら私が暗闇にいることに慣れていたと言う事もあって、途中、誰かに蹴躓いて謝るなんてことはあったにせよ、時間を忘れてそこにいてしまった。<br />
<br />
気が付けばそこに何時間も滞在してしまった。制作者の意図は全くわからないが、未だ中に入れずにいる、もしくは選別されるのを待つ人たちを思えば、それ自体が制作者の意図の一部なのかなと思案を巡らせたりもした。<br />
<br />
誰かが言っていたように拍子抜けと言う訳でも無く、何となく私は満足して帰途に就いた。そして今回のそれが何ら隠されていたものでは無く、それそのものを表していたのだなと感じたのであった。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
後になって。何やら痴漢が出没したと言う情報が流れた。<br />
<br />
私は運が良かったのかな？中肉中背であの中にいたし、別段美人だとか異性の目を引く様な人間では無かったにしろ、暗闇に何時間もいて判別できるのかはわからない。でもそれは偶然だとか幸運だとかでは無くて、それが真実の様な気がした。<br />
<br />
負け惜しみだとか異性の方を持つとかでは無くて、例えば一人の人間がいたずらに発した言葉に対して、私も私もと見栄を張る人間もいるのも私は知っている。それは自分が体感していなかったとしてもだ。息をするように嘘を吐く人間は存在するので、私としては実際にあったにせよそんなに横行するような状態では無かったと思う。別の日にも開催していたので、その時にそんな状態だったらわからないけれど。<br />
<br />
でも不思議なのは声が上がったのは開催後の話。そんなの開催中に声を上げれば良いではないかと思ったりする。不思議である。開催者も連絡してくれれば協力すると言う。警察に相談するのが先だと突っ込んでる人間もいたが、そうだとしても協力すると言っているのだから、おかしな話では無いと思う。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
そのトラブル自体も織り込み済みの伝えたかったことなのだと言っている人がいたが、私はそちらの方がしっくり来る。<br />
<br />
何だかわからないものに自分の意思で足を踏み入れておいて、何かあったら責任を取れと言うのなら最初から入らない方が良いのではないか。本当に何かしようと思えば殺人だって起こりかねない空間であると危険視している人もいた。そう考えると恐ろしくもなるが、少なくともそう言った事件は起こらなかったようだ。<br />
<br />
人の心こそ、ブラックボックスなのでは無いかなと、ふと思ったりもした。]]>
    </description>
    <category>第44巻</category>
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    <pubDate>Wed, 28 Jun 2017 07:18:41 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>クラッカー</title>
    <description>
    <![CDATA[今日は私の誕生日。年甲斐もなく期待していた。<br />
<br />
一通の手紙を送って、その返事は無かったけれど。そもそも返事が来るなんてことは事前に聴いていなかったし。どうか私の願いを、ささやかな誕生日プレゼントを持って来てはくれまいかと期待して私の誕生日を書面にて伝えたのだった。<br />
<br />
私はどこにでもいる平凡な人間だ。だからこそこんな願いも、当たり前のようだけれど、平凡な私にとってはとても大切な願いなのだ。<br />
<br />
私は昨日の夜眠れなかった。誕生日の前日、期待して眠れないなんていつぶりだろう。もしかしたらそんな素敵な期待感は生まれて初めてなのかもしれない。少なくとも物心ついてからはこんなことは無かったように思えた。私の記憶が確かならば、だけれど。<br />
<br />
「願いが叶うなんてことが、ああ、もしも本当に訪れてくれるのなら。私はその喜びの中で死んでしまうのかもしれない。」<br />
<br />
頭の中の期待を口に出してみた。それは、まるで何かのまじないのような。私にとってこの誕生日プレゼントは是が非でもお願いしたい、そして実現したい夢でもあった。<br />
<br />
昼ごろに目が覚めると、少しばかり寝すぎたせいか、体中が痛かった。いつもならその日の始まりの不調に人生を嘆いたりもするのだが今日は違う。もしも嘆くのだとしたら、願いが叶わなかった時だと、そう勝手に心に決めていた。<br />
<br />
返事が無い以上、誕生日に合わせて来てくれるかどうかもわからないけれど。私はただひたすら、何もせずに訪問者を待った。何か別の事をして訪問者を待っていても良かったのかもしれないし、その方が時間の流れは早かったのかもしれない。<br />
<br />
しかしながら訪問者が次の瞬間来てくれるんじゃないかと、そう考えるだけで喜びに心は落ち着かず、いてもたってもいられなくなり、とてもじゃないけど別の事をして待っている余裕なんて無かった。<br />
<br />
そしてその時は訪れた。ドアは静かに開いて、訪問者は私の願いどおり、まるでサンタクロースのように、願いを叶えにやって来てくれたのだった。<br />
<br />
「HAPPY BIRTHDAY。」<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
私がその音を聴いたのは昨晩の事だった。警察に事情聴取を受ける。お隣さんは末期の癌患者で、自宅療養を余儀なくされていたとのこと。先日ご挨拶した時に、嬉しそうに誕生日が近いなんてお聞きしていたから、てっきりあの乾いた音は誰かがお祝いしてくれているのかと。そう思いこんで微笑ましく思っていたのに。<br />
<br />
脳天に一撃で仕留められた割には、とても穏やかな死に顔をしていたらしいので、それがせめてもの救いだったのかと自分に言い聞かせた。]]>
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    <category>第44巻</category>
    <link>https://ahuredasunijiru.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC44%E5%B7%BB/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC</link>
    <pubDate>Mon, 22 May 2017 07:00:51 GMT</pubDate>
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    <title>I've fogotten.</title>
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    <![CDATA[彼女とはネットの世界で出会った。<br />
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彼女の文章に惚れ込んで会話を重ねた。<br />
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彼女はそれほど口数が多い方では無いように思えた。<br />
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個人的に&hellip;とはいえネットの上だけだが、彼女との逢瀬を日々楽しんでいた。<br />
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彼女に会えるチャンスがあった。<br />
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以前から思っていた事だけれど、あまり感情が読み取れない。<br />
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良く言えばクールビューティーであり、本人も以前付き合った相手と何やら感情の交換が噛み合わないであろうエピソードを聴いていたりした。<br />
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彼女から誘ってくれる事もあったが、上手く予定が合わなかったりもした。<br />
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当時色々な事で傷ついていた事も原因ではあると思うのだが、自分のペースを乱される事に、心がかき乱された。<br />
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思わせぶりな言動をする時もあるけれど、自分にはあまり興味が無いのではないか&hellip;と不安にさせる何かがあった。<br />
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ともすればそれが不思議な印象を与えられて、魅力的にも感じられていたのだが、面と向かって会ったりしていたにも関わらず、どうにも色々な面で噛み合わなかった。<br />
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今思えばそれが相性が悪いと言う事なんだろうと振り返る。<br />
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振り返る&hellip;の、だが、何故か彼女の顔が思い出せない。何故だろう。<br />
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人の顔を覚えるのは得意な方では無い。話した事も無い重役の顔など覚えられないぐらいだ。<br />
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しかしながら少しばかりでも好意を抱いていた相手の顔の輪郭や特徴などすらも忘れてしまうとは、何だか狐につままれたような気分にさえなってしまう。<br />
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ただでさえ感情の読めない相手だったので、自分の事をどう思っていたのか、全く以てわからない。<br />
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仕事が忙しかったり、故郷が興味深かったり、何かと周りの人間に気に入られたり、接する相手によっては印象が違ったりと実に面白い人であった事は間違いない。<br />
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病弱なようでそうでないような。何ともつかみどころの無い人であったと思う。<br />
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それは故意にかどうかはわからないが、元々持っている資質の面も大きく作用しているように思われた。<br />
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色々な出来事や教えてもらったエピソードなどを思い出してこうして文章にしてみても、どうにも彼女の顔は思い出せない。<br />
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最初から最後まで何を考えているのかもわからず、何一つ噛み合わない印象だけが心に残ってしまった。だからと言って今それが残念だと思っている訳でも無いのだが、何となく今でも元気でいるであろう、時に不思議な表現のまま彼女なりの感情を露わにしているのかな。誰かが振り回されているのかなと思い返して、どうにも懐かしくなった。<br />
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本当に色々な人間がいるものだと、彼女を思い返しては痛感するのであった。<br />
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機会があったら自分をどう思っていたのか事細かに聴いてみたい気もするが、今更どうこうしたい訳でも無く、きっと聴いてもさらに難解で新しい疑問が生じたりするのだろうなと苦笑した。]]>
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    <category>第43巻</category>
    <link>https://ahuredasunijiru.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC43%E5%B7%BB/i--ve%20fogotten.</link>
    <pubDate>Mon, 08 May 2017 04:39:18 GMT</pubDate>
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    <item>
    <title>ハゼ釣り</title>
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    <![CDATA[親に誘われて、川に釣りに来た。<br />
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虫が好きでは無いので付けてもらう。その時点で釣りを存分に楽しめてるとは言い難いのだが、苦手なものは仕方が無い。水面に釣り糸を垂らすと、教えてもらい糸を軽く探りながら、魚からのアタリを待つ。<br />
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のんびりとした時間。雲が流れている。<br />
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長い。<br />
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これは来るまで非常に退屈であるなと思いながら、少し眠くなったりしながらも、来るかどうかもわからない引きを待つ。<br />
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しばらくして。何かに引っ張られる感覚。竿が曲がる。<br />
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来た。<br />
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初めてのことで興奮しながらもリールを巻いて糸を手繰り寄せる。<br />
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大当たりとは行かないまでもハゼが釣れた。<br />
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ピチピチピチ。<br />
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宙を舞い近寄るぶら下がった魚を取ろうとする。<br />
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びたん！<br />
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額に当たった。親に笑われる。照れ笑いを浮かべる。初体験ながらどうにも向いて無いな、と思う。でも釣れたのは素直に嬉しい。楽しい。<br />
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それから何匹か釣れた。大漁とまでは行かないまでも、ビギナーズラックなのかそれなりに楽しめたような気がする。<br />
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持って帰って食べる事になった。自転車で今日一日を振り返りながら親と話す。家に帰って家族に話す。笑われた。一家団欒。<br />
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親が調理してくれた。自分で釣った魚を食べる。美味い。何だか不思議な気持ちになる。揚げて甘辛いたれがかかっていた。でも釣りにハマりそうにはないな。ごはんに合うけど、一日ああしているのは何となく自発的にそうしたいとは思わなかった。<br />
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向き不向きがある趣味なのだと思う。考え事をしていたら魚は逃げてしまいそうだし、寝てしまえば竿が手から離れて流れて行ってしまうかもしれない。釣り人に聴かせたら笑われてしまうであろう事を思いながら、釣って来た魚と夕飯を平らげた。余は満足じゃ。<br />
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眠りに就く前に、布団の中で今日一日を振り返る。そうだな。自分の中で趣味には成り得ないのかもしれないけれど、自分の釣った魚を自分で調理した訳では無いにしろ、自分で食べられたのは貴重な経験だったと思う。<br />
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家族みんなに笑ってもらう事が出来たし、また自分が誰かに話して笑ってもらえるかもしれないエピソードも得る事が出来た。そう考えると充実した、意味のある一日だったようにも思える。<br />
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子供ながらにそんな可愛げの無い事を考えながら何度も反芻するように思い返して、眠気にまかせて眠りに就いた。<br />
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そう言えば、ダボハゼってなんだろう？と大人になってから思い返して調べてみると、どうやら食べても美味しくないものを差していたようだ。食べられない訳では無いのね。なるほど。]]>
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    <category>第43巻</category>
    <link>https://ahuredasunijiru.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC43%E5%B7%BB/%E3%83%8F%E3%82%BC%E9%87%A3%E3%82%8A</link>
    <pubDate>Fri, 10 Mar 2017 06:37:33 GMT</pubDate>
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