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なんて事は無い、ここ数年は恒例となっている花見。

場所はその時によって変わるし、何となく決めた場所はとても広く、たくさんの人たちが訪れていたが、まだまだスペースは空いている。その日に買ったシートを敷いて、あらかじめ大きなものを買っておいたおかげで、寝そべる事も出来た。

桜の周りにはたくさんの人たちが集まり、撮影会をしていたり、運動をしてはしゃいでいたりと、老若男女がそれぞれ楽しそうに各々の時間を楽しんでいた。

全国の駅弁が集まるお店で買って来た弁当を広げて、君と桜を眺めながらひとしきり食べる。

「外で食べる弁当がこれほど美味しいものだとは思わなかった。」

と君が言う。駅弁だから少々場違いかもしれないが、おおむね同意せざるを得ない。ちいさなみたらし団子や暖かいお茶も買っておいて良かった。花より団子とは良く言ったものだ。君に母親に作ってもらって食べた運動会や遠足の話をしてみたりして、感慨に耽っていた。

これほどゆっくりした時間が流れるのは久しぶりかもしれない。先週もこの場所に訪れたが、一週間でこんなにも桜の具合が変わる事にも驚いた。頭の中で思い描いていた咲き乱れ方そのものがここにあった。

しばらく一息ついてから、君の言葉に甘えて、最近では就寝前の日課となっている耳かきをお願いする。先週この場所に訪れた時に、桜を眺めながら耳かきをしたら、どれだけ気持ちが良いだろうと、前もって頼み込んでおいたのだ。

二人で寝そべる事が出来る程の大きなシートの上で、君に膝枕してもらう。桜の見える位置でお願いする。耳を綺麗にしてもらう快感と共に、見える桜。思った以上に最高で、涙がホロリと流れて来た。

様々な裏切りや挫折、絶望から、さしてなにも感動すら覚えなかった時期もあった。どん底で誰も信じられず、何一つ面白味を感じる事が出来ない時間を過ごした。私は君と会って、人生をやり直した。

これは比喩でも過剰な表現でも無く、本当にかなり大きなマイナスから、色々なものを建て直して来たのだ。私は君が思っている以上にはるかに君を愛し、感謝している。涙が流れて来た事を伝えると、君は笑っていたが、この喜びはわからないだろう。いや、わからなくていい。君には私と同じ辛い思いをさせたくない。

やっとここまで辿り着いたのだ。私は君と過ごす当たり前の時間に幸せを噛み締めるのみ。君が隣で幸せを感じていてくれれば、それで私は幸せなのだ。

ありがとう。
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1987/01/14
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フリーター
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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