完全フィクション
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古本屋を探すのが好きだ。探すというか見つけるというか・・・。
新しい古本屋を見つけては入って店内を見回す。物色する。
個人的に漫画や写真集や本などを探しているが、実の所
コレクション欲を満たす為の物で、多分それがビンの王冠
とかでも同じように楽しく集めていたのかもしれない。
今日、訪れた店も何だか物物しげな薄暗さと、異臭の立ち込めた
マニアック心をくすぐる雰囲気に、のっけから満足していた。
怪しい本がたくさんあった。これは法律に触れるんじゃないかと
言うような残酷な内容から、うさんくさい神秘学を始め、ホラーや
宇宙、果てはUFOに至るまでアングラの粋を極めていた。
この店内に充満する異臭は何なんだろう?と店内を回っていくと、
料理屋の仕込みをする場所のような・・・異様な雰囲気の場所に出た。
木桶がいくつかあって、中にはいくらのような見たことも無い卵と、
牡蠣やアワビのような何かが無造作に混ぜられて置いてある。
店内に人はいない。妙な違和感と危険を感じたので、その店を後にした。
寄り道をしてしまったが、その店舗の上がマンションになっていて、
今日は知人を訪ねて来たのであった。そこはご家族みなさんが
絵に描いたような幸せの一家で、行くたびに心が安らぐのを覚えている。
約束の時間より少し早く知人の家に着いた。インターホンを鳴らす。
頭の中で、ご家族が笑顔で迎えてくれる場面を想像する。
ドアが開くと、そこは想像と違った景色が広がっていた。
出迎えてくれた知人は一人。無表情で、青い顔をしているようにも見える。
どうしたんだ?具合が悪そうじゃないかと声を掛けると、そんなことはない、
いたって絶好調だと力こぶを作る素振りを見せるが、いかんせん生気が無い。
人間、そんな日もあるかと奥に通されると、いつも明るい笑顔で出迎えてくれていた
ご家族が勢ぞろい。しかしながらそこに並ぶのは無表情と青い、顔、顔、顔。
あまりの違和感に辺りを見渡すと、部屋の中には何やら神道で使われそうな、
それでいて全く神聖さを感じない、いや、もっと言えば不気味な雰囲気を
携えた道具がそこかしこに並んでいる。以前には無かったものだ。
知人に、白い皿だけは割ってくれるなと注意を促される。
一体その皿はどうしたのだと訪ねると、大事なものなのだ、
と血走った眼で説明される。鳥肌が立って来た。
ふと、トイレを借りる事を思いつく。部屋を出ても謎の道具は
所狭しと並べられていて、うず高く積まれている。なるべく気にしないように、
早めに切り上げて今日は退散する事にしようと思いながらトイレから
帰る途中、うず高く積まれていた皿のうちの一つを落としてしまった。
そう、白い皿は粉々に割れてしまったのだ。
知人が血眼で大事なものだと言っていた白い皿。
慌てて駆けてくる無数の足音が近づいて来た。
もう遅い。落とした白い皿は、
粉々に割れてしまったのだ・・・。
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