完全フィクション
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「あなたは細くて美人だから良いじゃない。」
「褒めてくれてありがとう。自分では自覚無いんだけどね。私、結構異性で痛い目見てるし。」
「そうなのかあ。」
「あなただって背が高くて、ガッチリしていて頼もしいじゃない。」
「バレーボールだけで生きて行けたらそれでも良かったんだけどね…。恋、しちゃったから。」
好きな人に異性として見てもらえない。たったそれだけの事だけど。それまで大して気にもならなかった自分の隠れたコンプレックスが、私の中で大きくはじけてしまったみたい。
目の前にいる女神の様な、女優の様な美しさを持つ彼女とは初対面だ。話を聴けば、バレエをやっているらしい。そんな彼女と私は、崖に脚を投げ出して、まるで昔からの親友を見つけたかのように、眼下に広がる谷底を眺めながら話をしていた。
彼女は彼女で技術が伸び悩み、プライベートでは異性に騙され続けて、悲観して、それはいつしか絶望に変わり、ここに飛び降りに、死にに来たと言う。
私もそうだった。まともな人間として自分の好きな人に認めてもらえない事が何よりも悲しくて、絶望して、ここに飛び降りに、死にに来た。
偶然とか運命とか信じる方では無いけれど。同時刻のタイミングで彼女と鉢合わせ顔を合わせて、おおよそこの場にそぐわない話をしているのは、もしかしたらそう言った類の事なのかもしれないと思っていた。
「ちょっと怖いなあ、なんて気持ちもあったんだけどね。」
「私もよ。」
「一緒に死ぬ?」
「今日会ったばかりなのに?(笑)…でも、それも良いかもしれないわね。だって、私も怖かったもの。勇気が必要だった。」
「一緒に、死ねるかなあ。怖くなって、踏み止まってしまって、あなただけ飛び降りてしまったら申し訳ない。」
「そうしたらそれは生きたいって事だから、良いじゃない。」
「死にに来たのに?」
「一時の気の迷いなんて、誰にでもある事じゃ無いかしら。」
「だったら…二人で生きた方が良いのかな。」
「それも考えてるよ。選択肢の中に入ってる。」
「う~ん…。どうしよう。」
本音を言えば、彼女には死んでほしく無かった。私から見れば、彼女は私なんかとは違って、いつかは必ず幸せが掴める様な気がするし、何より私は会ったばかりの彼女に、命を大切にして欲しいなと思ったからだ。これから死ぬ人間が、だ(笑)。
でももしかしたら、彼女も同じ事を考えてくれているのかもしれないな。そんな事を考えたら、急に恥ずかしいと言うか、嬉しいと言うか、そんな気持ちになった。
私たちはどうする事も出来ずに、いつまでも谷底を眼下に眺めながら、脚を投げ出して語り続けた。
「褒めてくれてありがとう。自分では自覚無いんだけどね。私、結構異性で痛い目見てるし。」
「そうなのかあ。」
「あなただって背が高くて、ガッチリしていて頼もしいじゃない。」
「バレーボールだけで生きて行けたらそれでも良かったんだけどね…。恋、しちゃったから。」
好きな人に異性として見てもらえない。たったそれだけの事だけど。それまで大して気にもならなかった自分の隠れたコンプレックスが、私の中で大きくはじけてしまったみたい。
目の前にいる女神の様な、女優の様な美しさを持つ彼女とは初対面だ。話を聴けば、バレエをやっているらしい。そんな彼女と私は、崖に脚を投げ出して、まるで昔からの親友を見つけたかのように、眼下に広がる谷底を眺めながら話をしていた。
彼女は彼女で技術が伸び悩み、プライベートでは異性に騙され続けて、悲観して、それはいつしか絶望に変わり、ここに飛び降りに、死にに来たと言う。
私もそうだった。まともな人間として自分の好きな人に認めてもらえない事が何よりも悲しくて、絶望して、ここに飛び降りに、死にに来た。
偶然とか運命とか信じる方では無いけれど。同時刻のタイミングで彼女と鉢合わせ顔を合わせて、おおよそこの場にそぐわない話をしているのは、もしかしたらそう言った類の事なのかもしれないと思っていた。
「ちょっと怖いなあ、なんて気持ちもあったんだけどね。」
「私もよ。」
「一緒に死ぬ?」
「今日会ったばかりなのに?(笑)…でも、それも良いかもしれないわね。だって、私も怖かったもの。勇気が必要だった。」
「一緒に、死ねるかなあ。怖くなって、踏み止まってしまって、あなただけ飛び降りてしまったら申し訳ない。」
「そうしたらそれは生きたいって事だから、良いじゃない。」
「死にに来たのに?」
「一時の気の迷いなんて、誰にでもある事じゃ無いかしら。」
「だったら…二人で生きた方が良いのかな。」
「それも考えてるよ。選択肢の中に入ってる。」
「う~ん…。どうしよう。」
本音を言えば、彼女には死んでほしく無かった。私から見れば、彼女は私なんかとは違って、いつかは必ず幸せが掴める様な気がするし、何より私は会ったばかりの彼女に、命を大切にして欲しいなと思ったからだ。これから死ぬ人間が、だ(笑)。
でももしかしたら、彼女も同じ事を考えてくれているのかもしれないな。そんな事を考えたら、急に恥ずかしいと言うか、嬉しいと言うか、そんな気持ちになった。
私たちはどうする事も出来ずに、いつまでも谷底を眼下に眺めながら、脚を投げ出して語り続けた。
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