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子供たちが見ている前で、行商の親父が舞台を用意。
指人形での会議が始まる。

「ああでもない、こうでもない。」

「それならこれはどうだ。」

「いやいやこんなのどうだ。」

「それは問題点が・・・。」

「それならこうしよう。」

クルクル変わる声色に子供たちは翻弄されて目を輝かせている。
どの指がしゃべるのも親父の口だ。テンポ良く掛け合うも、結局の所
コントのようで脳内を具現化しているに過ぎない。テンポが良くて当たり前なのだ。

しかしながら子供たちが存分に一緒に笑い転げたり、悩んだり。
感情移入する経験を得る事は無意味な事じゃない。
物語は全て一人芝居に近いものがあるが、別人格として
成り立たせるのはある意味職人芸とも言えるだろう。

そんな事を考えているうちに、指人形劇は終わった。
子供たちは満足したのか、笑顔で行商の親父に拍手を送る。
親父の表情はさながらコンサートを終えた指揮者のようだ。



ネット上での匿名自作自演のあまりにも見え透いた言動は、
同一人物であることを自分から暴露しているようなものだが、
それを利用して成りすます輩もいるからたちが悪い。

しかしながら突然の隠す気も無いようなバレバレのそれは、
見ていて爆笑を誘う。わざわざ私を笑わせる為に長い時間を
掛けて、もしくは激情の脊髄反射的に生み出された愚行なのだろうか。

人は何が欲しいのか。それはきっと賞賛なのだろう。
発表する以上何かしらの同意や共感や賛美を得たいのだと思う。

きっと自分の為に書いている私にも何処か、そういう所があるのだと思う。
しかしながらせっかくの自作自演がその全てを台無しにしているのを見ると、
これは自分の尊厳を掛けた壮大なギャグなのではないかと嘲笑する。

言い回しがどうしても我慢出来ないようなキャラクターは、愛すべきものがある。
物語の登場人物よりも何よりも、その人間自身が魅力的なのだ。

無知とは恥ではない。むしろひけらかすように自分を良く見せようと
する行為こそが愚行であり、ありのままを曝け出す姿にはどうしても勝てない。

名前を変えても中身は変わらないのだよと、切々と語ってやりたいぐらいだ。
カラン、とウイスキーに溶かされた氷が同意の泣き声を上げる。

しかしながらそれでもこの退屈を癒す酒の肴は存在するだけでいとおしい。
金もいくらあってもいいものだが、物語も文章も、いくらあってもいいものだと
昼間の指人形劇の行商の親父を思い出しながら感慨に耽るのだった。



春来。
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