完全フィクション
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
最近では外国からの観光客も多く見受けられるようになった。花見をする時の場所は大体候補があって、今日来た巨大な池のある公園も、その候補のうちのひとつだった。
この場所に来たのも、何度目か忘れてしまったし、様々な人間たちとここに訪れ、今でも付き合いがあるものもいれば、もう会わなくなった者たちもいる。
花見と言えば酒を思い浮かべる人間も多いだろう。実際こうして歩いていると、桜の雨の中、大騒ぎしている若者から静かに酒を楽しんでいるご老人までいらっしゃる。しかしながらもっぱら毎年自分が楽しみにしているのは屋台の食べ物だった。不衛生なんて野暮な事は言わないで欲しい。これこそ、夏の祭りと並ぶ食の風流であるのだから。
池に浮かび泳ぐ鴨たちは実に気持ち良さそうだ。
烏龍茶で一息入れていると、横の顔を赤くしたオヤジが、おちょこに浮かんだ花びらに喜んでいる。
「オツだねえ!なあ?」
見知らぬ自分に話しかけるオヤジに、笑顔で相槌を打つ。何とも幸せな気分の人間が、これだけひとつの場所に集まっているなんて、めでたい事じゃないか。普段はうざったいと思うであろう酔っ払いの絡み酒も、それこそオツに感じる。
桜の枝がトンネルを作って、その中を歩いて行く。ボートを漕ぐ恋人たちの群れ。桜の花びらの中を漕いでいるかのように見える。ピンクの湖面に浮かぶ人工白鳥は、実にファンタジーだが、目に映る光景は夢ではなく、間違いなく現実の美しさだ。
しばらく歩いて行くと、おなかがいっぱいになったせいか眠くなって来た。酒なんて一滴も飲んで無いのに、きっと春の陽気と、陽気な気持ちに酔っ払ってしまったのだろう。私も立派な酔っ払いだ。地面が汚いなんて野暮な事は思わないが、なかなかどうして、この眠気を解消する為の寝心地の良い自然の敷布団を探すのは意外に苦労した。
やっとのことで落ち着く場所を見つける。ここなら鬱憤を晴らすべく楽しく騒いでいる連中の邪魔をすることにもなるまい。自分の腕を枕に、しばらく眠ることにした。遠くに聞こえる雑音が、昼寝をする為の子守唄になる。
しばらくして、意識が戻った。が、なんだか目を開けるのはもったいない気がしてしまう。が、寒い。堪え切れない震えを感じて目を開けると、空は赤く染まり、桜の色とのグラデーションが美しく感じられた。
起き上がると、私は積もった桜の花びらに埋もれていたらしい。桜の海に溺れていた様だ。
さて、帰るとしよう。
この場所に来たのも、何度目か忘れてしまったし、様々な人間たちとここに訪れ、今でも付き合いがあるものもいれば、もう会わなくなった者たちもいる。
花見と言えば酒を思い浮かべる人間も多いだろう。実際こうして歩いていると、桜の雨の中、大騒ぎしている若者から静かに酒を楽しんでいるご老人までいらっしゃる。しかしながらもっぱら毎年自分が楽しみにしているのは屋台の食べ物だった。不衛生なんて野暮な事は言わないで欲しい。これこそ、夏の祭りと並ぶ食の風流であるのだから。
池に浮かび泳ぐ鴨たちは実に気持ち良さそうだ。
烏龍茶で一息入れていると、横の顔を赤くしたオヤジが、おちょこに浮かんだ花びらに喜んでいる。
「オツだねえ!なあ?」
見知らぬ自分に話しかけるオヤジに、笑顔で相槌を打つ。何とも幸せな気分の人間が、これだけひとつの場所に集まっているなんて、めでたい事じゃないか。普段はうざったいと思うであろう酔っ払いの絡み酒も、それこそオツに感じる。
桜の枝がトンネルを作って、その中を歩いて行く。ボートを漕ぐ恋人たちの群れ。桜の花びらの中を漕いでいるかのように見える。ピンクの湖面に浮かぶ人工白鳥は、実にファンタジーだが、目に映る光景は夢ではなく、間違いなく現実の美しさだ。
しばらく歩いて行くと、おなかがいっぱいになったせいか眠くなって来た。酒なんて一滴も飲んで無いのに、きっと春の陽気と、陽気な気持ちに酔っ払ってしまったのだろう。私も立派な酔っ払いだ。地面が汚いなんて野暮な事は思わないが、なかなかどうして、この眠気を解消する為の寝心地の良い自然の敷布団を探すのは意外に苦労した。
やっとのことで落ち着く場所を見つける。ここなら鬱憤を晴らすべく楽しく騒いでいる連中の邪魔をすることにもなるまい。自分の腕を枕に、しばらく眠ることにした。遠くに聞こえる雑音が、昼寝をする為の子守唄になる。
しばらくして、意識が戻った。が、なんだか目を開けるのはもったいない気がしてしまう。が、寒い。堪え切れない震えを感じて目を開けると、空は赤く染まり、桜の色とのグラデーションが美しく感じられた。
起き上がると、私は積もった桜の花びらに埋もれていたらしい。桜の海に溺れていた様だ。
さて、帰るとしよう。
PR