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此処は、妖精たちが集まる井戸端会議の場所。
ともすれば幽体となった僕が、彼等に気付かれる
事も無く、いや、もしかしたら気にすら止めて
もらえないであろう存在として席を並べていた。

議題は専ら人間界、つまりはここで言う下界の話
ばかりなのだが、イマイチ自ら命を絶ったばかりの
僕には欠片も興味を持つ事が出来ず、無神論者且つ
死後の世界やオカルトをこれっぽっちも信じて
いなかった自分がまるで実感を持てずに漂っていた。

何だかまだ悪い夢でも見ているかのような感覚。
本当は人間なんて存在していないんじゃないかと
思える程の天地が引っ繰り返るような体験を
していても、どうにもピンと来ていなかった。

しかしながら遠くに見える鼻だかなんだか
わからないモノをブラ下げたバクが鎮座
している所を見ると、どうやら悪夢では無いらしい。

「て言うか何なんだ此処は。天国でも無ければ地獄でも無い。」

僕の考えからすると天国も地獄もあってもらっては
困るのだけれど。いや、別に困る事は何も無いか…。

妖精たちはより一層けたたましく下界談義に
花を咲かせて、その声はさらに僕の存在を
薄く消し去ろうかとしているかの如く、
透き通った僕の身体をすり抜けて行く。

それはまるで生きていた頃と何ら
変わりのない状況に、自虐的に苦笑する。

それよりもそうだ、自分の身の振り方を
考えなければならないか。それとも流れに
身を任せてナンセンスな未来予想図など
破り捨ててしまえばいいのだろうか。

よくよく思い返してみると、そうだ、
今日は大晦日だったでは無いか?
下界と同じかどうかはわからないけれど、
今日ぐらいは自分だけの年越しでも祝おうか。

そんなことを考えていたら何だか自分が
ここに来た理由とか、急に馬鹿らしくなってしまった。

現実逃避どころか現実離れしたこの状況。
いっそのこと自分が人間だった事すら
忘れてしまえばいい。いや、こうなって
しまうと人間だったかどうかすら怪しいものだ。

それを証明するのは自分のおぼろげな記憶だけだし。
思考展開が突飛なまま暴走しているうちに、
気のせいか、背中に羽まで生えて来た。気がする。

今見えている羽が僕の妄想であるかもしれない
可能性は捨て切れないし、普通に考えて羽
なんて生えて来る訳が無いのだから。

存在意義なんて自己満足の形骸化でしかありえないし、
僕…俺…私が誰かなんて事すらもこの際どうでも良い事で。

いつの間にか妖精たちに混じって、自分もクルクル
と廻りながら飛び続けている事に気が付いた。
認識を誤認として妄想していただけかもしれない。
そうだ、私は悪い夢を見ていただけなのだ。

全てをリセットした気持ちで、やらなければ
ならない事があるのを自分では良くわかっている。
それはありきたりな行事でもあったような
気がするが、それもこの際どうでも良い。

自分の決めたやるべき事をとりあえずこなすとしよう。
下界の煩悩108つを消す除夜の鐘までの崩壊序曲。

「5…4…3…2…1…0!」
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1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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