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・・・車椅子に座り、首から下が動かなくなった今でも、
想像力のたくましさと言うか妄想癖がひどい私は、
比較的楽しく毎日を過ごしていた。

ありがたい事に全身不随になってからも友人達は
足繁く私の元に訪れては、外に連れ出してくれたり、
以前のような関係をそっくりそのまま続けてくれている。

もちろん身体が動かなくなった時には死んでしまおうかと
思うほどに落胆もしたものだが、まるでその時の自分が
自分自身でも滑稽に思えるほどに、今の私は幸せだった。

暖かな日差しに照らされて、草木の匂い溢れる公園で
友人に車椅子を押してもらい、少しだけ眠くなる。

「ちょっと寝てもいいかな。はしゃぎ疲れちゃったかも。」

無言で頷く友人の笑顔を確認して、私は眠りに着く。



・・・・・・



「ちょっと寝すぎてしまったかな。」

ホビット達が群れを成して野良仕事に出かける際の
鼻歌だか野良歌だかわからないような歌声が響いて、
それが目覚まし代わりに私は目が覚めたのだった。

伸びをすると人形である私の球体関節が軋んで音を立てる。
少し油が足りなくなっているのかもしれない。朝飯代わりに・・・
いや、ラジオ体操代わりに油を差すことにしよう。

ベッドから身体を起こして、マリオネットなんぞよりも
軽快で滑らかな動きだと自画自賛に苦笑しながらも、
ベッドの下の道具箱の中にあった油差しを出して、
自分自身の球体関節に気休め程度に一滴垂らす。

朝の油差しは非常に気分がいい。比喩が矛盾して
おかしな話になってしまうがそれはまるで喫煙の如く
私の心を嗜好品として満たしてくれるのだ。

「今日は何をしようかな。」

仕事なんぞ私には無いし、食べなくても動いていられるから、
今日も自由にしたい事をして一日を過ごそうと思っている。
でも少しだけまだ眠り足りないかもしれないな。

油差しをタンスに仕舞いこんで、飛び乗るようにベッドに戻り、
再び二度寝の湖の底へと沈んでいくのであった。



・・・・・・



「あっ。おじいちゃん笑ってるよ?」

「えっ。」

親父が植物人間になってもう何年にもなる。
しかし不思議な事に普段健康なままの時のような
表情の変化を見せるので、実は私たち家族全員を騙して、
意識の無いフリをしているんじゃあないかと思う時がある。

いつも見つけるのは娘だ。だからこそ何だか出遅れた
自分自身の不甲斐無さから来る嫉妬でもあるかもしれない。

「きっと楽しい夢でも見てるんだよ。
元気な時は世界中を飛び回っていたからね。」

親父、本当は起きてるんだろ?そう言いたくなる気持ちで、
本当に寝ているだけのような呼吸をしている親父に苦笑しつつ、
抱きついて来た娘の頭を撫でるのだった。



・・・・・・



マントを翻してピエロが一人。

「はてさて、あなたの見ている世界。それが全てだとお思いかな?
どれが現実か、真実かなんて自我の認識の上でしかない。
どこかのSFのように今の世界が仮想空間だった!なんてことも
・・・・・・あるかもしれませんね。うふふ。」
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1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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