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タクシーから降りて、服装の乱れをチェックする。
夜道を歩いて帰らなければならない。
私の家まではどうあがいても車では行けない、
非常に入り組んだ裏路地のど真ん中にある。

車を降りてから家までは約10分。後ろに人がいるだけで怖くなる。
自然と駆け足になりそうになる。もちろん、相手は何をしようと
言う気持ちも無いだろうが、万が一と言うこともある。
気を付け過ぎて悪いと言う事は無いはずだ。

今日の後ろを歩く男性は、どうにも私の後ろを着いて来ているような
気がしてしまう。怖い。暗闇に壊れた電灯がチカチカと点滅する。
秋の虫も今は少し心強いぐらいに、私の心は寂しくなっている。

もしも、襲われたらどうしよう。そんな目に遭った事は一度も無い。
だけど、妄想と思われても、怖いものは怖いから。こればかりは
抑え込もうにも本能が恐怖心を感じる限り、自分ではどうしようもない。

「・・・。」

まだ着いて来ている。同じ方向なのか・・・早く自分の家を見つけて、
鍵を開けて入り口に入ってはくれまいか。どう見てもご近所さんでは
無いし、思い違いだったと、早い所安堵させて欲しいのに。

何度か、振り返ってみる。私と彼の距離は空いたままだ。別段、
何か出来るような距離でもない。でも、私の気付かない間に
側に来ていたらどうしよう。そんな怪談話のような妄想すら、
今の私には現実的に思えてしまう。怖い。怖い。逃げ出したい。

私の家が近づいて来た。どうしよう。失礼かもしれないけど
走り出したい衝動が盛り上がって来て、心を苛む。
あの人は私に何もしてないのに。



「どうしよう・・・。」



振り返って、距離を確認してしまう。彼から見たら挙動不審の
私の方が怖いかもしれない。でも仕方が無いの。本当に身体が
震えているし、抑え込みたくても抑え込めなくなって来ている。
恐怖で足がもつれて転びそうになる。転んだら、動けなくて、
その間に何かされてしまうかもしれない。どうしたらいいの・・・。

頭の中がぐちゃぐちゃになって来て、段々相手の事なんて
考えられない位に心の余裕が無くなって来た。
私ってこんなに臆病だったかしら。後で思い出したら
どう考えてもおかしいと思うのはわかっているのに。

もうダメだ。我慢出来ない。意を決して私は走り出そうとした。
震えてなかなか速度を上げる事が出来ない。もうすぐ私の家。
覚えられたら困る。逃げなきゃ!



やっとの事で走り出した私に、浴びせられた言葉。



「思い上がるな。ブス。」
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誕生日:
1987/01/14
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フリーター
趣味:
音楽鑑賞
自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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