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ここには今、何も無い。

この世界で知らない人間はいないだろう。と言うよりも何人残っているかすらもわからない。

荒れ果てた荒野に広がる、本当に何も無い、起伏すら感じられないどこまでも続く平地は、人類が犯した最大の過ちによって平らにされたものだった。

始まりはほんの些細な事だったと思う。

自分の欲望や支配欲を優先する人間が集まり、それを淘汰しようとする国同士がぶつかってこうなったのだ。

あれ以来、何も感じられない。まるで自分が生きているかのような気分でいるが。もしかしたら死んでいるのかもしれない。それを確認する相手もいなければ、物すらも存在しないのだ。地面と空だけが世界の全てになってしまっていた。

目覚めた時はもう何も無かった。とりあえず出来るだけ歩き回ってみた。最初の場所に目印の服を置いて。目の前にどこまでも続く広がる荒野を見て、それほど広い範囲で歩かずに諦めてしまったけれど。

けれども自分だけが無事に?こうしている理由もわからなければ、どうしてこうなったかすら、ショックでなのか以前の事をうすぼんやりとすら思い出せずにいた。理由だけが頭の中にあって、直接的な要因は思い出せなかった。

地獄絵図のような記憶が頭の中に無いだけ却って良かったのかもしれない。ただ、このままだと飢え死にしてしまうのは明らかだったが、何も無い以上、生きる意味も無いのかもしれないとひどく達観した気持ちで思考だけが動き続けていた。

幸い暑くも無く寒くも無い気温ではあったし、眠るのには苦労し無さそうだった。とりあえずはここを拠点にして生きれるだけ生きてみよう。

大きく四角い枠を地面に足で描き、とりあえずそこをそう名付ける事にした。昔の住所の記憶があったので、一番最後の数字を取ったのだ。

先程から口の中が血の味がするが、もしかしたら実際に生きていて、もう長く無いのかもしれないな。悲しみや恐怖に慄きながら最期を迎えるよりは、何も無い諦めの付くこの状態が、慈悲深い何かに救われているのかもしれないとすら思った。

そして、自己を認識出来ているそのことこそが、あっさり消えて無くなってしまったであろう人たちよりも幸福なんじゃないかとすら思えていた。





広島や長崎に落ちた原子爆弾の被災者は、ちょっとした障害物のおかげで助かる者もいたと言う。その後病魔の様な被ばくに苛まれる事になってしまう者もいたのだが、それ以上の兵器がもたらす地獄は、想像もつかない。
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1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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