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「もう忘れ物はないよね、お母さん。」

「・・・・ん。」

無口な母がうなづくと、私は手荷物を入れたバッグを肩にかけた。

父と母が離婚し、私は父よりも母を選んだ。
父とは会おうと思えば会えるし、もし新しいパートナーが出来ても
邪魔になるだけだろうから・・・。母に新しいパートナーが出来たら、私は離れようと思う。
無口な母の方が私を必要としている気がしたのだ。

父と母は決して仲が悪いわけではなかったが、
私から見てもどこか2人はよそよそしい感じがあった。
見合い結婚だからだろうか?私にはうかがい知ることも出来ないけど。
娘の私から見てもそう感じるのだから、当人同士はもっと実感していただろう。

離婚した理由を知りたいとも思わなかったし、両親共に事実を私に告げただけだった。
玄関の鍵を閉めると、母は複雑そうな顔をしていた。思い出しているのだろう、
ここで過ごした日々を。

「・・・ごめんね。」

母が複雑な愛想笑いで私に謝った。

「もう私だって子供じゃないんだし、別に謝る必要はないよ。
お父さんもお母さんも私にとっては親だから、2人の出した結論を受け入れるよ。
お父さんともこれから先会うつもりでいるしね。」

母は、すまなそうな顔でうなづいた。

私が今まで人を好きになったことがないのも、
この2人の背中を見てきたからかもしれないな。
だからと言ってそれが悪いこととは思わないし、
無理して好きな人を作ろうとも思わないけど。

「じゃ、行こうか。」

無言で母がうなづくのを確認して、からっぽになった部屋を後にした。
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1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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