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「くるっぽー。くるっぽー。」

おじいちゃんが使っていた鳩時計。何だか最近調子が悪い。
いくら時間を直しても10分ぐらい遅れたり、進んだりする。
おじいちゃんはとっくの昔に天に召されてしまって、寂しがっているのかな。

正直言って私は別に思い入れは無い。だけど、何かと私の生活に
密着して時を刻み続けていただけに、時間が狂えばなんか気になる。

「ま、いっか。ズレてるのはわかってるから。」

そう思いながら眠りに着いた。



その晩、夢を見た。



一生懸命私の為に、死を間近に控えた鳩時計が無理してくれている。
その姿は、私の為にとわかるだけに、胸を打つものがあった。
おじいちゃんに託された私の面倒を見てくれて、見守ってくれている。



朝、目が覚めると、それは夢だと認識した。
認識したんだけど・・・。



これは私の勘違いかもしれない。でも、なんだか私自身の無意識下の
依存もあるんじゃないかって考えたりして、ひとつの儀式を行う事にした。

もしかしたら世界中にある『儀式』って、超常現象的なものに力を借りる
為じゃなくて、自分自身を納得させて区切りをつける為のひとつの
手段なんじゃないかな・・・って買い物しながら思ったりした。

大きな、卵形のケースと、小さな、鳩が時間を知らせる置時計を買った。



家に帰って、おじいちゃんの鳩時計の見えない所で卵形のケースの中に、
置時計の鳩時計を仕舞う。それをおじいちゃんの鳩時計の下に置いた。

なんとなく、涙がにじんで来た。これからやる事は、ある意味残酷な事かもしれない。
そんな考えを巡らせる私は、自分では意識していなかったけど、
充分におじいちゃんの鳩時計に思い入れを持っていたんだと、今気付いた。

何となく、おじいちゃんの鳩時計に手を合わせて、目を瞑る。



「今まで、ありがとうございました。安らかにお眠りください。」



おじいちゃんの鳩時計の下から、卵型のケースを手に取って、
置時計の鳩時計をおじいちゃんの鳩時計に見せる。



「これから、よろしくね。」



置時計の鳩時計に挨拶をして、自分の部屋の机に置いた。
新しい時を刻み始め、太陽時計なので、時間も自動調整してくれる。



自分の部屋からおじいちゃんの鳩時計のある場所へ戻った時、
おじいちゃんの鳩時計は止まっていた。
跡取りを見つけて安心したかのように事切れた。



今まで自分が認識で来ていなかった色んなものが脳内を駆け巡って、
感情があふれ出し、崩れ落ちるように私は泣いた。声を上げて号泣した。
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1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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