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土手を歩けば、月が綺麗で。もう君に月が綺麗だなんて言える筈も無く。残り少ない時間の中で、取り返しの付かない離れた心の距離を、そして今まで感じて来た喜びや悲しみ、その全ての余韻を味わうかのように、寒空を見上げながら歩いた。それはまるで特急列車が終着駅に辿り着くその直前の線路を徐行するかのように、君はしっかりと前を向いて、僕は時折歩いていくその足を眺めながら、ただ、何も言わずにあてども無く歩いていた。

君が微笑む。眼差しは前を向いたままで。

「楽しかったね。」

「うん、楽しかったよ。」

「終わりだね。」

「うん。終わりだよ。」

ちゃんと終わらせられるという事は、ある種幸せなのかもしれないと思いながら。

「間違ってなかったよね?」

君が呟く。

「うん。素晴らしい出会いだったと思う。」

過去形が白い吐息に混じって消える。

君の手を取り、手を繋いで歩いた。

君との最後の道を、本当は泣きながら。

夜空には雨のような流星群。

もしも雨だったら涙をごまかせたのに。

君も泣いている。涙は拭かないよ。

最後に温もりを忘れないように。

どちらとも無く抱き締め合って口付けた。

震えている君はとても綺麗で。

「愛し合っていても、離れなくてはいけない時もあるんだね。」

そう言って君は、泣きながら笑った。

その笑顔は、誰よりも素敵で。

僕は忘れない。

君が愛して止まない、この世界の美しさを。

流星降り注ぐ寒空と澄んだ空気の美しさを。

言葉なんて本当は要らなかった。

いくら言葉を紡いでも、君への想いには足りないから。

願わくば君も忘れないで欲しい。

そしてこの別れの淋しさが、流星と共に流れてしまえばいい。

いっそのこと、恨んでくれたら。

悲しいけど楽かもしれないのに。

この別れを僕のせいにしても構わないから。

僕の事を永遠に嫌ってくれて構わないから。

だから、忘れないで。

君の記憶から消えて薄れてしまう方が切ない。

壊れてしまいそうな君の細い身体を、もう一度だけ



抱き締めた。



土手を歩けば、月が綺麗で。もう君に月が綺麗だなんて言える筈も無く。残り少ない時間の中で、取り返しの付かない離れた心の距離を、そして今まで感じて来た喜びや悲しみ、その全ての余韻を味わうかのように、寒空を見上げながら歩いた。それはまるで特急列車が終着駅に辿り着くその直前の線路を徐行するかのように、君はしっかりと前を向いて、僕は時折歩いていくその足を眺めながら、ただ、何も言わずにあてども無く歩いていた。
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