完全フィクション
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「この場所から抜け出して、飛び出せたら・・・どんな世界が待っているのかな。」
ふとそんな事を考えながら、目の前の鉄格子越しの窓・・・。
そう、それはこの部屋を司る唯一の素材に囲まれて、私は思った。
物心付いた時にはこの場所にいたから、どうやってこの場所に来たのかも
そしてどうしてここにいるのかの理由さえも私にはわからない。
ただ、毎日外を眺めては、遠くに見える青空に思いを馳せるばかり。
この場所はたまに少しだけ外に近づく事がある。
それは見えざる神の手・・・ではなく、ご主人様の気まぐれか、
私への思いやりかわからないけれど、少しだけ新鮮な空気を
気分転換とでも呟きながら私に与えてくれるのだ。
私は気まぐれでもいい。その時を心待ちにしながら毎日を過ごす。
ここにいれば食べることには困らないし、たまにご主人様が
私とお話をしてくれる。私の話す言葉はご主人様にはわからないけれど。
そんな贅沢な私が外の世界を夢見るのは、
もしかしたら罰当たりだったのかもしれない。
ある日突然、私の目の前にご主人様が現れなくなった。
私はとても心配した。ご主人様が好きだったからだ。
喩えご主人様がこの場所に私を閉じ込めたのだとしても、
私は今の時間も空間も幸せに感じていたのだ。
「神様。一生この場所にいても構わない。ご主人様が無事でありますように。」
しかし私の願いは神様の元へは届かなかったようだ。
私が身分もわきまえず、あの頭上に広がる空を夢見た罰なのかもしれない。
ご主人様が来なければ、私は食事にありつけることも無い。
半ば空腹にも耐えかねて生きるのを諦め始めた頃、
見知らぬ人間がやって来て、私の場所に手をかけた。
「私とご主人様の唯一の繋がりに、気安く手を触れないで!」
けたたましく私は抗議の声を上げたのだが、どうやら声は届かなかったようだ。
見知らぬ人間に扉は開かれ、私は思いがけずあの青空の下へと出る機会を得た。
最早私に喜びは無く、それでももしかしたらご主人様は
私に飽きてしまって、せめて私を自由にしようと思ったのかもしれない。
むしろ、ご主人様が無事ならそれで良い。幸せなこの場所と引き換えに、
ご主人様が無事でいてくれるなら、私はそれでも良い。
切望、哀願とも言える願いを込めて、私は鉄格子に囲まれた
ご主人様との唯一の繋がりを捨て、旅立つことにした。
「ご主人様。私はとても幸せでした。ありがとう。さようなら。」
自由とは、自己責任を伴うものである。
ふとそんな事を考えながら、目の前の鉄格子越しの窓・・・。
そう、それはこの部屋を司る唯一の素材に囲まれて、私は思った。
物心付いた時にはこの場所にいたから、どうやってこの場所に来たのかも
そしてどうしてここにいるのかの理由さえも私にはわからない。
ただ、毎日外を眺めては、遠くに見える青空に思いを馳せるばかり。
この場所はたまに少しだけ外に近づく事がある。
それは見えざる神の手・・・ではなく、ご主人様の気まぐれか、
私への思いやりかわからないけれど、少しだけ新鮮な空気を
気分転換とでも呟きながら私に与えてくれるのだ。
私は気まぐれでもいい。その時を心待ちにしながら毎日を過ごす。
ここにいれば食べることには困らないし、たまにご主人様が
私とお話をしてくれる。私の話す言葉はご主人様にはわからないけれど。
そんな贅沢な私が外の世界を夢見るのは、
もしかしたら罰当たりだったのかもしれない。
ある日突然、私の目の前にご主人様が現れなくなった。
私はとても心配した。ご主人様が好きだったからだ。
喩えご主人様がこの場所に私を閉じ込めたのだとしても、
私は今の時間も空間も幸せに感じていたのだ。
「神様。一生この場所にいても構わない。ご主人様が無事でありますように。」
しかし私の願いは神様の元へは届かなかったようだ。
私が身分もわきまえず、あの頭上に広がる空を夢見た罰なのかもしれない。
ご主人様が来なければ、私は食事にありつけることも無い。
半ば空腹にも耐えかねて生きるのを諦め始めた頃、
見知らぬ人間がやって来て、私の場所に手をかけた。
「私とご主人様の唯一の繋がりに、気安く手を触れないで!」
けたたましく私は抗議の声を上げたのだが、どうやら声は届かなかったようだ。
見知らぬ人間に扉は開かれ、私は思いがけずあの青空の下へと出る機会を得た。
最早私に喜びは無く、それでももしかしたらご主人様は
私に飽きてしまって、せめて私を自由にしようと思ったのかもしれない。
むしろ、ご主人様が無事ならそれで良い。幸せなこの場所と引き換えに、
ご主人様が無事でいてくれるなら、私はそれでも良い。
切望、哀願とも言える願いを込めて、私は鉄格子に囲まれた
ご主人様との唯一の繋がりを捨て、旅立つことにした。
「ご主人様。私はとても幸せでした。ありがとう。さようなら。」
自由とは、自己責任を伴うものである。
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息子を旅に連れてきた。特別急行のグリーン車、
席に着くと息子は興奮して外を眺める。
子供の頃、狭い世界が全てだと思っていた経験のある自分が、
やはり両親に何処かへ連れて行ってもらった時も嬉しかったものだ。
妻の作った弁当を食べたり、海や街、山々などが見えては消える
外の景色を飽きもせずに子供らしく眺めながらニコニコと
目を輝かせて、その全てを頭に焼き付けているようだ。
経験を積んでしまうと、真新しいものはどんどん無くなってしまうが、
夫婦である私たちにも初体験の、行った事の無い場所に行く事にした。
そうすれば少なからず、息子と共感出来るだろうし、家族である以上
みんなで同じ経験をしたいと思うのは至極当然の流れだと思う。
隣を見れば息子を膝に乗せた妻もニコニコとこの状況を楽しんでいる。
親馬鹿ではあるが、息子の喜ぶ顔が見られる、ただそれだけで幸せなのだ。
そして愛する妻と共にこの旅行へと繰り出せた事も幸せに思う。
「トイレ。」
息子がトイレに行きたいと言い出した。息子同様ニコニコした
妻にも一応行くかどうか聴いてみると、大丈夫だと言うので
とりあえず自分が息子をトイレに連れて行くことにした。
電車の中のトイレも初体験の息子は、勝手もわからないだろう。
子供はトタトタと小さい身体を一生懸命に動かして
走り回るもので、何故そんなに急いで行動したいのか。
そうか、次に待っている何かが楽しいからなのだな、と
一人で自己完結しながら息子の後を追い掛ける。
トイレに辿り着いてドアを開けて、息子と一緒にトイレに入り
息子と一緒に用を済ませると、当たり前のように通り過ぎていた
自動ドアを振り返り、人が通りなかなか閉まらないドアを見た息子。
「あれ、閉めなくていいの~?」
自動ドアがどういう仕組みで動いているのかは理解しているはずだが、
連続してたまたま閉まらなかったドアを見て心配になったのだろう。
閉め忘れると妻に注意されているからか、自分が怒られると
思ったのかもしれない。良い子に育ってるなと親馬鹿ながら思う。
「いいんだよ。」
言った瞬間、自動ドアが閉じた。不思議そうに振り返っていた息子も
安心したのか、また楽しくて仕方が無いと言う顔に戻り、ニコニコと
私たちの席に向かって走り出した。転ばないといいのだけれど。
「あんまりはしゃいで転ぶなよ。」
聴いているのかいないのか、こっちを向いてニコッと笑う息子。
この旅が悪いものになるはずが無いと思うのだった。
席に着くと息子は興奮して外を眺める。
子供の頃、狭い世界が全てだと思っていた経験のある自分が、
やはり両親に何処かへ連れて行ってもらった時も嬉しかったものだ。
妻の作った弁当を食べたり、海や街、山々などが見えては消える
外の景色を飽きもせずに子供らしく眺めながらニコニコと
目を輝かせて、その全てを頭に焼き付けているようだ。
経験を積んでしまうと、真新しいものはどんどん無くなってしまうが、
夫婦である私たちにも初体験の、行った事の無い場所に行く事にした。
そうすれば少なからず、息子と共感出来るだろうし、家族である以上
みんなで同じ経験をしたいと思うのは至極当然の流れだと思う。
隣を見れば息子を膝に乗せた妻もニコニコとこの状況を楽しんでいる。
親馬鹿ではあるが、息子の喜ぶ顔が見られる、ただそれだけで幸せなのだ。
そして愛する妻と共にこの旅行へと繰り出せた事も幸せに思う。
「トイレ。」
息子がトイレに行きたいと言い出した。息子同様ニコニコした
妻にも一応行くかどうか聴いてみると、大丈夫だと言うので
とりあえず自分が息子をトイレに連れて行くことにした。
電車の中のトイレも初体験の息子は、勝手もわからないだろう。
子供はトタトタと小さい身体を一生懸命に動かして
走り回るもので、何故そんなに急いで行動したいのか。
そうか、次に待っている何かが楽しいからなのだな、と
一人で自己完結しながら息子の後を追い掛ける。
トイレに辿り着いてドアを開けて、息子と一緒にトイレに入り
息子と一緒に用を済ませると、当たり前のように通り過ぎていた
自動ドアを振り返り、人が通りなかなか閉まらないドアを見た息子。
「あれ、閉めなくていいの~?」
自動ドアがどういう仕組みで動いているのかは理解しているはずだが、
連続してたまたま閉まらなかったドアを見て心配になったのだろう。
閉め忘れると妻に注意されているからか、自分が怒られると
思ったのかもしれない。良い子に育ってるなと親馬鹿ながら思う。
「いいんだよ。」
言った瞬間、自動ドアが閉じた。不思議そうに振り返っていた息子も
安心したのか、また楽しくて仕方が無いと言う顔に戻り、ニコニコと
私たちの席に向かって走り出した。転ばないといいのだけれど。
「あんまりはしゃいで転ぶなよ。」
聴いているのかいないのか、こっちを向いてニコッと笑う息子。
この旅が悪いものになるはずが無いと思うのだった。
色々な意味での裏切りがあって、本当に自分自身
だけの事ではない範囲で、辛く苦しい日々を過ごした。
だが、そんな毎日も遠い昔の話・・・になってしまったな。
あの頃飲んでいた甘い缶コーヒーではなく、
ブラックを口に注ぎながら、ふと振り返る仕事中の暇。
今ではもう、全てを建て直したと言っても過言では無い。
毎日毎晩、死ぬ事ばかり考えていたあの頃とは違うのだ。
やっとここまで来た。ここからがスタート。今まではマイナスの場所。
たくさんの悪い思い出ばかりが通り過ぎて消えていく。
偽善や平和ボケにはわからないであろう、本当の日常の幸せ。
これからもたくさんの壁や困難が待ち受けているだろうし、
自分の思いも寄らないトラブルだってある事だろう。
自分の為ではなく、大切な人の為に動かなければならない、
そんな時もやって来る事だろう。だけど今は幸せだ。
「・・・やっとここまで戻って来たか。」
自分を傷付けた者たちに感謝するとすれば、立ち向かうだけの
力と、苦難を乗り越える為の日々を手に入れた事だろうか。
もう二度と会う事も、会いたいと思う気持ちも無いけれども。
周りの人間を利用して自己満足の悦に入るような人間はいらない。
そんな人間は遠く、昔の日々に置いて来た。これからも必要無い。
『情』を持って接する事の出来る人間達が周りにいてくれる。
友情、愛情、感情・・・その全てが毎日感謝に値する贈り物。
言葉に出して本人達にも告げているけれど。そこには心からの
曇り一つ無い感謝の気持ちが、宿っているんだよ。
「ありがとう。」
虚しさはここには無い。黒い器に注がれていた黒い液体も空っぽだ。
もちろんそこに影は消えないけれど、それも本当の自分だから。
受け入れて前に進む事を選んだんだ。
自分と言う人間にとって必要無い事も嫌いな事もたくさんあるけれど。
今度こそ自分を見失わないように、自分の価値観を中心に進んで行こう。
あの時、教えてもらったんだ。自分は間違えてないんだって。
他人と一緒でいる必要は無いし、自分の人生は他人が決めるものではない。
大切なものを、人間にとって大事なものを、胸に抱えて進んでいくんだ。
いつか死を迎えるその時まで、俺の脚で、そして這ってでも進んでいこう。
自分の人生は自分でしか歩いていく事は出来ないのだから。
これから新しい日々が始まるよ。光は天高くこの場所へ射している。
もう誰にも邪魔はさせない。幸せ降り注ぐこの場所で、君と手を繋いで行こう。
だけの事ではない範囲で、辛く苦しい日々を過ごした。
だが、そんな毎日も遠い昔の話・・・になってしまったな。
あの頃飲んでいた甘い缶コーヒーではなく、
ブラックを口に注ぎながら、ふと振り返る仕事中の暇。
今ではもう、全てを建て直したと言っても過言では無い。
毎日毎晩、死ぬ事ばかり考えていたあの頃とは違うのだ。
やっとここまで来た。ここからがスタート。今まではマイナスの場所。
たくさんの悪い思い出ばかりが通り過ぎて消えていく。
偽善や平和ボケにはわからないであろう、本当の日常の幸せ。
これからもたくさんの壁や困難が待ち受けているだろうし、
自分の思いも寄らないトラブルだってある事だろう。
自分の為ではなく、大切な人の為に動かなければならない、
そんな時もやって来る事だろう。だけど今は幸せだ。
「・・・やっとここまで戻って来たか。」
自分を傷付けた者たちに感謝するとすれば、立ち向かうだけの
力と、苦難を乗り越える為の日々を手に入れた事だろうか。
もう二度と会う事も、会いたいと思う気持ちも無いけれども。
周りの人間を利用して自己満足の悦に入るような人間はいらない。
そんな人間は遠く、昔の日々に置いて来た。これからも必要無い。
『情』を持って接する事の出来る人間達が周りにいてくれる。
友情、愛情、感情・・・その全てが毎日感謝に値する贈り物。
言葉に出して本人達にも告げているけれど。そこには心からの
曇り一つ無い感謝の気持ちが、宿っているんだよ。
「ありがとう。」
虚しさはここには無い。黒い器に注がれていた黒い液体も空っぽだ。
もちろんそこに影は消えないけれど、それも本当の自分だから。
受け入れて前に進む事を選んだんだ。
自分と言う人間にとって必要無い事も嫌いな事もたくさんあるけれど。
今度こそ自分を見失わないように、自分の価値観を中心に進んで行こう。
あの時、教えてもらったんだ。自分は間違えてないんだって。
他人と一緒でいる必要は無いし、自分の人生は他人が決めるものではない。
大切なものを、人間にとって大事なものを、胸に抱えて進んでいくんだ。
いつか死を迎えるその時まで、俺の脚で、そして這ってでも進んでいこう。
自分の人生は自分でしか歩いていく事は出来ないのだから。
これから新しい日々が始まるよ。光は天高くこの場所へ射している。
もう誰にも邪魔はさせない。幸せ降り注ぐこの場所で、君と手を繋いで行こう。
タクシーから降りて、服装の乱れをチェックする。
夜道を歩いて帰らなければならない。
私の家まではどうあがいても車では行けない、
非常に入り組んだ裏路地のど真ん中にある。
車を降りてから家までは約10分。後ろに人がいるだけで怖くなる。
自然と駆け足になりそうになる。もちろん、相手は何をしようと
言う気持ちも無いだろうが、万が一と言うこともある。
気を付け過ぎて悪いと言う事は無いはずだ。
今日の後ろを歩く男性は、どうにも私の後ろを着いて来ているような
気がしてしまう。怖い。暗闇に壊れた電灯がチカチカと点滅する。
秋の虫も今は少し心強いぐらいに、私の心は寂しくなっている。
もしも、襲われたらどうしよう。そんな目に遭った事は一度も無い。
だけど、妄想と思われても、怖いものは怖いから。こればかりは
抑え込もうにも本能が恐怖心を感じる限り、自分ではどうしようもない。
「・・・。」
まだ着いて来ている。同じ方向なのか・・・早く自分の家を見つけて、
鍵を開けて入り口に入ってはくれまいか。どう見てもご近所さんでは
無いし、思い違いだったと、早い所安堵させて欲しいのに。
何度か、振り返ってみる。私と彼の距離は空いたままだ。別段、
何か出来るような距離でもない。でも、私の気付かない間に
側に来ていたらどうしよう。そんな怪談話のような妄想すら、
今の私には現実的に思えてしまう。怖い。怖い。逃げ出したい。
私の家が近づいて来た。どうしよう。失礼かもしれないけど
走り出したい衝動が盛り上がって来て、心を苛む。
あの人は私に何もしてないのに。
「どうしよう・・・。」
振り返って、距離を確認してしまう。彼から見たら挙動不審の
私の方が怖いかもしれない。でも仕方が無いの。本当に身体が
震えているし、抑え込みたくても抑え込めなくなって来ている。
恐怖で足がもつれて転びそうになる。転んだら、動けなくて、
その間に何かされてしまうかもしれない。どうしたらいいの・・・。
頭の中がぐちゃぐちゃになって来て、段々相手の事なんて
考えられない位に心の余裕が無くなって来た。
私ってこんなに臆病だったかしら。後で思い出したら
どう考えてもおかしいと思うのはわかっているのに。
もうダメだ。我慢出来ない。意を決して私は走り出そうとした。
震えてなかなか速度を上げる事が出来ない。もうすぐ私の家。
覚えられたら困る。逃げなきゃ!
やっとの事で走り出した私に、浴びせられた言葉。
「思い上がるな。ブス。」
夜道を歩いて帰らなければならない。
私の家まではどうあがいても車では行けない、
非常に入り組んだ裏路地のど真ん中にある。
車を降りてから家までは約10分。後ろに人がいるだけで怖くなる。
自然と駆け足になりそうになる。もちろん、相手は何をしようと
言う気持ちも無いだろうが、万が一と言うこともある。
気を付け過ぎて悪いと言う事は無いはずだ。
今日の後ろを歩く男性は、どうにも私の後ろを着いて来ているような
気がしてしまう。怖い。暗闇に壊れた電灯がチカチカと点滅する。
秋の虫も今は少し心強いぐらいに、私の心は寂しくなっている。
もしも、襲われたらどうしよう。そんな目に遭った事は一度も無い。
だけど、妄想と思われても、怖いものは怖いから。こればかりは
抑え込もうにも本能が恐怖心を感じる限り、自分ではどうしようもない。
「・・・。」
まだ着いて来ている。同じ方向なのか・・・早く自分の家を見つけて、
鍵を開けて入り口に入ってはくれまいか。どう見てもご近所さんでは
無いし、思い違いだったと、早い所安堵させて欲しいのに。
何度か、振り返ってみる。私と彼の距離は空いたままだ。別段、
何か出来るような距離でもない。でも、私の気付かない間に
側に来ていたらどうしよう。そんな怪談話のような妄想すら、
今の私には現実的に思えてしまう。怖い。怖い。逃げ出したい。
私の家が近づいて来た。どうしよう。失礼かもしれないけど
走り出したい衝動が盛り上がって来て、心を苛む。
あの人は私に何もしてないのに。
「どうしよう・・・。」
振り返って、距離を確認してしまう。彼から見たら挙動不審の
私の方が怖いかもしれない。でも仕方が無いの。本当に身体が
震えているし、抑え込みたくても抑え込めなくなって来ている。
恐怖で足がもつれて転びそうになる。転んだら、動けなくて、
その間に何かされてしまうかもしれない。どうしたらいいの・・・。
頭の中がぐちゃぐちゃになって来て、段々相手の事なんて
考えられない位に心の余裕が無くなって来た。
私ってこんなに臆病だったかしら。後で思い出したら
どう考えてもおかしいと思うのはわかっているのに。
もうダメだ。我慢出来ない。意を決して私は走り出そうとした。
震えてなかなか速度を上げる事が出来ない。もうすぐ私の家。
覚えられたら困る。逃げなきゃ!
やっとの事で走り出した私に、浴びせられた言葉。
「思い上がるな。ブス。」
いつも通りの国道沿いの帰り道、いつも
通り過ぎていた個人商店のコンビニが潰れて、
大手コンビニに建て直していた。
別に通っていた訳では無いし、特に思い入れが
ある訳でも無いんだけど、少し寂しく感じた。
いつだったか、夕暮れに赤く染まる地元の
寂れた街並みを見ていたら、ここで育ったのは
間違いないんだけれど、一つ一つの場所を見ると、
子供の頃の風景とは大きく違っている事に気付いた。
それは時の流れの中で必然的な移り変わり
なのだけれど、やっぱり地元を離れてしまっても、
帰る場所は変わって欲しく無いなあと無いものねだり。
何しろ地元を離れてしまっては、売上に貢献
するどころか冷やかす事すら出来ないのだから、
非常に身勝手な希望でしか無いのだけれど。
インターネットだってそうだ。パソコン通信や
テキストサイト、掲示板、FLASH、動画、
ブログ、SNS、コミュニケーションツール
と流行り廃りで移ろい往く。
気が付けば当たり前のように通り過ぎては、
適応して行く。寂しがっても慣れてしまう。
いつまでも縋り付いている訳には行かないし、
次々と新しいものが望む望まぬに関わらず、
溢れ出すように生まれてくる。
寂しがってばかりもいられないのだ。
思い入れも、行き着けも、思い出もあるけれど。
懐かしみ振り返るその気持ちこそが、
無くしてはいけないものなのだと思う。
歳を重ねて。何もかもが変わってしまったとしても。
その場所を懐かしく思う気持ちは、よく考えたら
おかしな話で。それと同時に寂しさを感じてる。
その複雑かつ単純明解な思考回路が、年齢を
増すごとに加速して行くのだろう。
家族が増えて。いつしか独りになって。
「この街もすっかり変わってしまったなあ。」
なんて遠い目をすることが多くなって。
それもまた老いると言う醍醐味なのかもしれない。
「昔ここはこうだったんだよ」と、若者が
反応に困るような話をしたくなるのも、
仕方が無い事なのかもしれない。
本来それが歴史となり、言い伝えられるはずが
世代感のコミュニケーションが薄くなってしまった。
人生の先輩方に学ぶ事は、たくさんあるんだよ。
「お年寄りを大切にしましょう。」
これは当たり前の話で、本当の意味は
「お年寄りの話を聴いて色々と学ぼうね。」
のような気がする。
温故知新。自分が体験しなかった事を話で
聴く事によって、本来体験する事の無い
経験をイメージトレーニングする事が出来る。
それって日本古来の文化では、生活の中に
当たり前のようにあった事なんだけどね。
通り過ぎていた個人商店のコンビニが潰れて、
大手コンビニに建て直していた。
別に通っていた訳では無いし、特に思い入れが
ある訳でも無いんだけど、少し寂しく感じた。
いつだったか、夕暮れに赤く染まる地元の
寂れた街並みを見ていたら、ここで育ったのは
間違いないんだけれど、一つ一つの場所を見ると、
子供の頃の風景とは大きく違っている事に気付いた。
それは時の流れの中で必然的な移り変わり
なのだけれど、やっぱり地元を離れてしまっても、
帰る場所は変わって欲しく無いなあと無いものねだり。
何しろ地元を離れてしまっては、売上に貢献
するどころか冷やかす事すら出来ないのだから、
非常に身勝手な希望でしか無いのだけれど。
インターネットだってそうだ。パソコン通信や
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と流行り廃りで移ろい往く。
気が付けば当たり前のように通り過ぎては、
適応して行く。寂しがっても慣れてしまう。
いつまでも縋り付いている訳には行かないし、
次々と新しいものが望む望まぬに関わらず、
溢れ出すように生まれてくる。
寂しがってばかりもいられないのだ。
思い入れも、行き着けも、思い出もあるけれど。
懐かしみ振り返るその気持ちこそが、
無くしてはいけないものなのだと思う。
歳を重ねて。何もかもが変わってしまったとしても。
その場所を懐かしく思う気持ちは、よく考えたら
おかしな話で。それと同時に寂しさを感じてる。
その複雑かつ単純明解な思考回路が、年齢を
増すごとに加速して行くのだろう。
家族が増えて。いつしか独りになって。
「この街もすっかり変わってしまったなあ。」
なんて遠い目をすることが多くなって。
それもまた老いると言う醍醐味なのかもしれない。
「昔ここはこうだったんだよ」と、若者が
反応に困るような話をしたくなるのも、
仕方が無い事なのかもしれない。
本来それが歴史となり、言い伝えられるはずが
世代感のコミュニケーションが薄くなってしまった。
人生の先輩方に学ぶ事は、たくさんあるんだよ。
「お年寄りを大切にしましょう。」
これは当たり前の話で、本当の意味は
「お年寄りの話を聴いて色々と学ぼうね。」
のような気がする。
温故知新。自分が体験しなかった事を話で
聴く事によって、本来体験する事の無い
経験をイメージトレーニングする事が出来る。
それって日本古来の文化では、生活の中に
当たり前のようにあった事なんだけどね。