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それは壮大な裏切りであり、実験である事には間違いが無かった。
誰もが羨むその人間を、憧れる人間だけで実行しなければならない。
理由なんてどうでも良かったのかもしれない。小さな事が積み重なって、
皆が裏切られたと感じる頃には、私は少しづつ話を進めていくことにした。

希望者を募る・・・と言っても途方も無い時間が掛かると思われた。
しかしながら人の興味というものはどうやら予想以上に力を
持っていたようで、噂を流すだけで自然と集まる動きが、
そしてひとつのプロジェクトとしての流れが出来上がって行った。

発案者は私であったが、自己顕示欲の強い者たちが自分が自分がと
名乗り出てくれたおかげで、少なくとも主犯格にならずに済みそうだった。

もしかしたら・・・いや、成功する可能性は少ないかも知れないと思っていた。
しかしながら復讐するにあたって、殺すことよりも苦しませる方が、より長く
悔恨と、理不尽さを彼自身が思い知る結果になるであろうことにほくそ笑む。

会場に集まるのは希望者のみでなければならない。
被害者が増える可能性があるからだ。しかし彼以外の人間には
情報が万遍なく伝わるはずである。スタッフも裏切られたと
感じていることを何度も確かめ、良く精査した上で確信を得た。

彼の知名度は高いが、人間的には褒められたものでは無かったのかもしれない。
それでも皆が憧れるだけのカリスマ性があったが、それに応えるだけの
誠意が足りなかったのだろう。可愛さ余って憎さ100倍。そんな言葉が
頭を掠め、これ以上無い状況を表す語句だなと苦笑した。

当日のチケットはSOLD OUT。至極当然の事だっただろう。
それだけの人数が皆、復讐をしたいと思っていたのだ。
事前に用意された耳栓は、それぞれの耳に嵌められた。

これ以上無いほどにそれぞれが正確に時計を合わせて来た事だろう。
成功しないにしても、息がピッタリと合わなければ実行すら出来ない。
それにしても耳栓をしても、大きな音は聞こえるものだなと、
身体で感じながら、精一杯会場全体が楽しむフリをしていた。

彼は自分が復讐されるなどと思ってもいないだろう。
誰か彼に伝えるような裏切り者がいなければ、の話だ。
中には半信半疑の興味本位で参加しているものもいるかもしれない。
成功すれば確実に、一生残る傷を与えられるというのにだ。



アンコールを迎え、シンと静まり返った。



時間だ。



全く同時にたった一度の拍手。楽器の音が彼の鼓膜を。
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誕生日:
1987/01/14
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音楽鑑賞
自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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