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ある町の片隅に、小さな喫茶店がある。そこは年中無休でやっていて、常に2、3人の客が入っている。

そこの客は何も話さないし、皆無言である。しかし、みな安らかな顔をしている。

俺はこの喫茶店が本当に好きだった。誰も何もお互いに知ろうとはしないが、どこか共通の連帯感があった。この場所を心の拠り所として、挨拶するわけでもないのに目が合うとお互い微笑んだりした。

この店の店長は高齢だったが、彼の淹れるコーヒーは本当においしかった。嫌味のない洗練された親しみやすいその味は、まるで飲むだけで疲れを癒してくれるような味だった。

だから、店長が倒れた時は誰彼ともなく皆協力した。適切な延命措置を施すもの、救急車を呼ぶもの、知り合い皆に連絡するもの、誰も指示していないのに自分の出来ることを果たした。

しかし、店長は天に召されてしまった。身寄りはいないという。

客みんなで金を出し合い、葬式を行った。ここに来たものはこんなにいたのかと思うほど、たくさんの人間が訪れ、冥福を祈った。

店長は無事に葬られ、この皆の拠り所となっていた喫茶店も閉店となった。

そこにいたものは、今度は皆店長の墓を訪れ、持参したコーヒーを飲んでいくらしい。
そして、以前のように誰もが何も語らず、心を癒していくそうだ。

俺もたまに店長の墓に訪れるようになった。一輪の花を墓に添え、手を合わせ、小一時間コーヒーを飲んでいく。すれ違いに客だったろう人が訪れていた。皆忘れずにいるのだろう。あのコーヒーの味を。店長の佇まいを。あの場所に流れていた、ゆったりとした時間を。

何かに疲れたとき、またこの場所に来よう。そう帰り際に思った。
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1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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