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彼女は無垢な子供のように、
血が止まったばかりの僕の傷をなめ続けた。

欲情してしまうほどにくすぐったくて気持ちが良いのだが、
血が止まったばかりの傷口は彼女の唾液によって
再び血をにじませてその存在を主張してくる。

「痛い?」

いたずらっぽく笑う彼女が、上目遣いで僕に呟く。

「痛くはないけど、また血が出てしまうよ。」

「いいじゃない。私、血の流れる様を
見ているのが好き。傷つけるのは嫌いだけど。」

彼女の好みに呼応するかのように、じんわりと
傷口から再び血が溢れ出した。
それをいとおしそうに彼女がなめ取る。

いつまでもこのままでいたいけど、
いつまでもこうしていたら傷口がふさがらない。
いや、もしかしたらこうしていればふさがるのだろうか。

美しい吸血鬼のように血を口元に携えているのを
彼女はまるでごちそうをたらふく食べた後のように
その美しくも白く細い腕でぬぐった。

白い腕と血の澱んだ赤がコントラストになって
彼女の美しさをより一層飾りつける。

「僕は何度も死にたいと思っているのだけれど、
いつも君に助けられてしまうね。」

「あなたに死んで欲しくないからよ。
だってこんなにおいしい傷口を
作ってくれるのにもったいないじゃない。」

わかってはいるのだけれど、愛しているわけではないのかな、
と苦笑しながらも手の届かない美しさに目を細める。

「あなたの性欲は満たしてあげてるんだから、充分でしょ?
そして私はあなたが作った傷口を味わうの。合理的じゃない?」

うっとりとしたその目は、まぐわう時には見せてくれない
淫靡で、魅力的な光を放っていた。

そう、彼女はいつも僕が死のうとすると、どこからか
その気配を嗅ぎ付けて来て、僕を救い、ひとしきり傷口を
味わうとご褒美と言わんばかりにひとつになってくれる。

僕は、甘酸っぱいような、背筋が凍るような、
なんだかよくわからない気持ちで、彼女を受け入れる。

「私があなたを欲している限り、あなたは生きている価値があるの。
だから死のうとするのはあなたの自由だけど、私は救い続けるわ。」

困ったなぁ・・・・。僕は今すぐにでもこの世界に別れを告げたいのだけれど。
ああ、でも彼女の笑顔を見れなくなるのは、少し寂しいな。

「君に挑戦し続けることにするよ。君が救ってくれるのがありがたいけど、
僕は今すぐにでも死にたいと思っているから。理由なんてないけれど。」

そう、理由なんていくらでも考えられる。
本当は何か大きな理由があった気がしたけど、
若干血が足りなくてボーっとしているのと
彼女とのやり取りの中で忘れてしまった。

きっと僕と彼女は、明日も同じことを繰り返す。
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耕助
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37
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誕生日:
1987/01/14
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フリーター
趣味:
音楽鑑賞
自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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