完全フィクション
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・・・荒野だった。一面の。最早そこにあった全てが
夢幻であったかのように何も残されていない。廃墟ですらも。
夢幻であったかのように何も残されていない。廃墟ですらも。
かろうじて水が残っているだけでも救いがあるのかもしれない。
否、この状態で救いを考えているこの頭こそがどうかしている。
我々は戦った。自分の為。家族の為。他人の為。何かの為。
それは恐ろしく意味のあることであったが、今となっては、
全てが終わってしまった今となってはその意味も無くなってしまった。
君は自分の為ではなく、大切な人たちの為にもがき苦しみ、
絶望を繰り返し、それでも君の出来る事を尽くして前を見ていた。
それはとても形容しがたい、形の無い美しさを携えていた。
「虚しいね・・・。」
君は呟いた。今までの努力が?それとも今のこの状況が?
全てが終わった、結末の後に、問い質す気にもなれなかった。
全てが終わった、結末の後に、問い質す気にもなれなかった。
人は過ちを繰り返す。だから君は泣いているんだね。
そして、結果的に何の力にもなれなかった自分に。
程なくして命は全て終わるだろう。そしてこの場から消える。
何も無くなった世界。虚無の舞台の上に役者は要らない。
全てが終わった後は、雨が降っていた。この場所だけなのか
それとも世界中に涙のように降り注いでいるのかもわからない。
不意に出来た水溜りの上に立つ、この結末の後に場違いな
可愛らしい出で立ちの君は、この世の全てを悲しんで泣いた。
もうなくなってしまったのだから、この世の全てと言っても何も無いけど。
そんな、可愛らしい出で立ちに身を包み、裾を掴んで、悔しいのか
悲しいのかわからない表情で下を向いて泣く君は、この雨に打たれて
水たまりの上に立つ君は、全てが終わってしまったと言うのに
不謹慎ながらも、とても美しいと思ってしまった。
きっとそれは最後になる、心からの感動なのだと思う。
その光景を焼き付けるように目を見開いた後、平和だった
あの頃、失敗ばかりしていた君の悲しそうな顔や、何をしたら
いいのかわからない寝起きの退屈そうな顔を、ひとつひとつ
振り返るようにして、最後になるかもしれないのに、目を閉じた。
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「うぃ~っす」
「おお、お疲れさん」
「どうだい調子は。」
「悪いわけがなかろうて。」
「いつまで続くんだろうねえ。」
「いつまで続くんだろうねえ。」
「全生物が滅びでもしなければ続くんじゃない?」
「ああ、なるほど・・・その通りかもね。」
「大丈夫?」
「いやあ、精神的に参ってしまってね。時々人間が羨ましくなるよ。」
「崇め奉られてるのはありがたいけどね。」
「終わりのある人生ってものがどれだけありがたい事なのか。自分の意思で変えることも出来れば逃げる事も出来る。非常に羨ましいよ。」
「我々の選択肢はたった一つだからねえ。」
「なかなか我々を滅ぼそうなんてのもいないだろうし。」
「悪魔だって今は落ち着いちゃってるもんね。」
「別に誰も望んで争いたくは無いんだろう。・・・て事は結局は滅びたくはないのかな。」
「矛盾しているねえw」
「そうだな。しかし安定しているからこそ考える事もある。ただそれだけだよ。」
「満足って、ひとつのゴールだからね。退屈を感じるのもわかる。」
「人間を見ていると、生きてるって感じがするよ。」
「まさしく生きてるわけだしねえ。だから死ぬ事だって出来る。」
「我々は、生きていないんだろうか。」
「君のその様子を見ていると、どうやら死んでいるようだけど。」
「だけど、それすら適わない・・・。望んでいるわけではないのだけれど。」
「やるべき事をこなさなきゃ。」
「そうだな。」
神々の戯れ言。
「大体さあ」
「何?」
「人間も浅はかだよね。」
「いきなりどうしたw」
「いや、私たちが人間にわかりやすいように人間の形で現れてやってるって事、少し考えれば気付きそうなもんじゃない?」
「それ以前に本当に見えてるのかって話だけどね。」
「大体あんた火の車輪ってw」
「いやあんただって羽邪魔じゃないの?」
「邪魔だよ?でも天使って言ったら羽でしょ。」
「確かにそうなんだけどさ。」
「天使にもハッタリは必要でしょ。」
「わからないでもない。」
「普通に考えて神様が空飛ぶのに二枚で十分な生物を作ってるんだからさあ。」
「え、それって楽なんじゃないの?」
「割と神経使うよ?ぶつからないように。」
「初歩的問題w」
「いやでもあんたなんか悪魔とか妖怪とか言われても仕方ないよね?」
「下界でも天界でも、個性は大事だと思う。それが俺の正義(ジャスティス)」
「いや、確かにあんた正義そのものだけどね?いやあんた某下界掲示板の見すぎじゃないの?w」
「人間って、本当に面白いんだよね。色々。」
「確かに。合理的じゃないしね。」
「天使が合理的じゃない姿をしてるんだから、私たちも人間を責められないわけで。」
「それは言えてる。」
「終末まで暇だしね。」
「ねー。」
今日も天界は平和だった。
古本屋を探すのが好きだ。探すというか見つけるというか・・・。
新しい古本屋を見つけては入って店内を見回す。物色する。
個人的に漫画や写真集や本などを探しているが、実の所
コレクション欲を満たす為の物で、多分それがビンの王冠
とかでも同じように楽しく集めていたのかもしれない。
今日、訪れた店も何だか物物しげな薄暗さと、異臭の立ち込めた
マニアック心をくすぐる雰囲気に、のっけから満足していた。
怪しい本がたくさんあった。これは法律に触れるんじゃないかと
言うような残酷な内容から、うさんくさい神秘学を始め、ホラーや
宇宙、果てはUFOに至るまでアングラの粋を極めていた。
この店内に充満する異臭は何なんだろう?と店内を回っていくと、
料理屋の仕込みをする場所のような・・・異様な雰囲気の場所に出た。
木桶がいくつかあって、中にはいくらのような見たことも無い卵と、
牡蠣やアワビのような何かが無造作に混ぜられて置いてある。
店内に人はいない。妙な違和感と危険を感じたので、その店を後にした。
寄り道をしてしまったが、その店舗の上がマンションになっていて、
今日は知人を訪ねて来たのであった。そこはご家族みなさんが
絵に描いたような幸せの一家で、行くたびに心が安らぐのを覚えている。
約束の時間より少し早く知人の家に着いた。インターホンを鳴らす。
頭の中で、ご家族が笑顔で迎えてくれる場面を想像する。
ドアが開くと、そこは想像と違った景色が広がっていた。
出迎えてくれた知人は一人。無表情で、青い顔をしているようにも見える。
どうしたんだ?具合が悪そうじゃないかと声を掛けると、そんなことはない、
いたって絶好調だと力こぶを作る素振りを見せるが、いかんせん生気が無い。
人間、そんな日もあるかと奥に通されると、いつも明るい笑顔で出迎えてくれていた
ご家族が勢ぞろい。しかしながらそこに並ぶのは無表情と青い、顔、顔、顔。
あまりの違和感に辺りを見渡すと、部屋の中には何やら神道で使われそうな、
それでいて全く神聖さを感じない、いや、もっと言えば不気味な雰囲気を
携えた道具がそこかしこに並んでいる。以前には無かったものだ。
知人に、白い皿だけは割ってくれるなと注意を促される。
一体その皿はどうしたのだと訪ねると、大事なものなのだ、
と血走った眼で説明される。鳥肌が立って来た。
ふと、トイレを借りる事を思いつく。部屋を出ても謎の道具は
所狭しと並べられていて、うず高く積まれている。なるべく気にしないように、
早めに切り上げて今日は退散する事にしようと思いながらトイレから
帰る途中、うず高く積まれていた皿のうちの一つを落としてしまった。
そう、白い皿は粉々に割れてしまったのだ。
知人が血眼で大事なものだと言っていた白い皿。
慌てて駆けてくる無数の足音が近づいて来た。
もう遅い。落とした白い皿は、
粉々に割れてしまったのだ・・・。
ふと、耳が痒くなる。
転がっていた柘の耳かきを見つけて、耳の穴に差し込む。
場所で言うと穴の首側より少しだけ後頭部側の辺り、
深さで言うと中間よりちょっと手前の部分が良く痒くなる。
耳垢もこの辺りが良く取れる。
子供の頃から耳かきが好きで、母親だけでなく
家族全員にやってもらった記憶がある。
ある程度の年齢になってからも自分で耳かきを購入し、
毎日、そして一日に二回と、耳掃除をするのが癖になった。
慣れすぎてしまったせいなのか体質なのかはわからないが、
それでも耳垢は無くならない。旅行などで数日やらなかったり、
誰かと会って一日中外を歩き回った後なんかは、大変な事になる。
しかしながらそれが気持ち良くて楽しい。
どんどん取れる耳垢と、眠くなる気持ち良さ。
これは本当にやめられない。まさに日課になっている。
少しずらして後頭部側を掘る。この辺りも痒くなるし、
良く耳垢が取れるのだ。案の定、今日も大漁豊作だ。
ゆっくりとそのまま中間の深さを一周して掘っていく。
たまに気まぐれに外側の溝に這わせたりしてみると、
思ったより耳垢が取れる。外側も狩場として見落としてはならない。
耳掃除をし慣れて来ると、今度は深いところにも耳かきを
挿入して、耳垢を除去する事が楽しくなってくる。
もちろん気を遣ってゆっくりと優しく、奥に行くほど万全の注意を払って手を動かす。
耳垢が乾いているので、ゴソゴソと音がして、綺麗に取れるのが気持ち良い。
ある程度取れたら、綿棒でオイル、なんてのも聴いた事があるのだが、
ここはひとつ綿棒で細かい耳垢を取っていく事にする。
ぐるりと回して、綿に耳垢がついているのを確認する。
何とも言えない幸福。奥に押しやってしまっているかもしれないと、
言い訳のようにもう一度耳かきで奥の方を掘っていく。
完全に取れなくなって気が済むまで耳掃除したら、今度は反対側だ。
同じ手順を踏むのだけれど、上手く説明できないが感覚が違う。
もちろん耳かきを持つ手も逆だし、穴の中も鏡のように反対になる。
しかしながら状態はまた少し違うようにも思う。どうあれ他人からみたら
やっていることは変わらないのだけれど。何かの原因で固まった、
壁にへばり付いている耳垢を耳かきでガリガリ強めに掘ってみる。
傷がつくとか血が出るとか言うけれど、滅多にそんなことにはならない。
本当に奥深くまで掃除して、痒みや違和感が無くなると終了。
また綿棒で掃除しても良いし、気が済んだらやめても良い。
あー今日も気持ち良かった。そろそろ寝るとするかな・・・。