完全フィクション
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幾多のヒーロー達の制止を振り切り、ここまで来た。
世界征服。
星の数ほどの悪の組織がいて、
それを目的とする奴らはいるだろうけど、
その後どうするのかを決めている奴は少ない。
世界征服とはゴールでは無い。
そして、我欲を満たす為だけの物でも無い。
本来ならばヒーロー達にご助力願いたい程だ。
まずは、砂漠まで海底パイプを繋ごうと思う。
水の無い国に、綺麗な水を安定供給する為だ。
もちろんメンテナンスの為のスペースも忘れずに。
食料も存分に、飢餓など未来永劫起こらぬ様に
全地域へ漏れなく届けられるルートを確立する。
もちろん自然を残しながらの交通機関も万全にする。
欲にまみれた政治家は全員クビだ。世界中の人々の為に
時間と努力を惜しまない人間を起用して全力を尽くす。
もちろん働かなければ一定の収入は得られぬよう配慮する。
その分病気や怪我などで働けない人間の厳密な判別と、
働けないのであれば手厚い福祉とサポートを打ち立てる。
スタッフなどに自分だけ利益を得ようなんて人間は置かない。
他人の為に自分を尽くせる人間こそが、利益を得るべきだ。
医療・科学の平和的な発展に関しては予算を惜しまない。
政府の無駄な資金が一番の悪。食事なんて弁当屋で充分。
国で誰もが美味いと思える弁当屋をチェーン展開したって良い。
学業も、誰もが一定のレベルまでは授業を受けられるように
おかしな思想の下で動かないようなまともな教師を揃えて、
生徒達の事を第一に考える教師を選別し、現場に揃える。
勉強だけではダメだ。今まで教えて来なかった、
建前などでは無い、人間にとって本当に大切な事も
大人になる前に充分に教えなければならない。
災害対応は私の一存で動いてもらい、全責任は私が取る。
治水対策も万全にしなければならない。
そして世界征服の為に尽力してくれた仲間達への
一生涯の生活保障と、見返りは充分にしてやろう。
「以上が私のビジョンだ。諸君には
命を賭けて遂行してもらう。頼んだぞ。」
『イー!』
全く。こんなこと私の様な人間が世界征服を
してまで遂行するような事でもなかろうに。
どうして今まで誰も実行してこなかったんだろうか。
やはり自分の利益が一番大切な人間が上に立っていたと言うことか。
結果的にそれが、自分の過ごしやすい
幸せな世界を作り上げる事になると言うのに。
「これから忙しくなるぞ。」
窓際で外を眺めながら、この世界の行く末を案じ
世界中の誰もが幸せになれる事を、心から祈った。
世界征服。
星の数ほどの悪の組織がいて、
それを目的とする奴らはいるだろうけど、
その後どうするのかを決めている奴は少ない。
世界征服とはゴールでは無い。
そして、我欲を満たす為だけの物でも無い。
本来ならばヒーロー達にご助力願いたい程だ。
まずは、砂漠まで海底パイプを繋ごうと思う。
水の無い国に、綺麗な水を安定供給する為だ。
もちろんメンテナンスの為のスペースも忘れずに。
食料も存分に、飢餓など未来永劫起こらぬ様に
全地域へ漏れなく届けられるルートを確立する。
もちろん自然を残しながらの交通機関も万全にする。
欲にまみれた政治家は全員クビだ。世界中の人々の為に
時間と努力を惜しまない人間を起用して全力を尽くす。
もちろん働かなければ一定の収入は得られぬよう配慮する。
その分病気や怪我などで働けない人間の厳密な判別と、
働けないのであれば手厚い福祉とサポートを打ち立てる。
スタッフなどに自分だけ利益を得ようなんて人間は置かない。
他人の為に自分を尽くせる人間こそが、利益を得るべきだ。
医療・科学の平和的な発展に関しては予算を惜しまない。
政府の無駄な資金が一番の悪。食事なんて弁当屋で充分。
国で誰もが美味いと思える弁当屋をチェーン展開したって良い。
学業も、誰もが一定のレベルまでは授業を受けられるように
おかしな思想の下で動かないようなまともな教師を揃えて、
生徒達の事を第一に考える教師を選別し、現場に揃える。
勉強だけではダメだ。今まで教えて来なかった、
建前などでは無い、人間にとって本当に大切な事も
大人になる前に充分に教えなければならない。
災害対応は私の一存で動いてもらい、全責任は私が取る。
治水対策も万全にしなければならない。
そして世界征服の為に尽力してくれた仲間達への
一生涯の生活保障と、見返りは充分にしてやろう。
「以上が私のビジョンだ。諸君には
命を賭けて遂行してもらう。頼んだぞ。」
『イー!』
全く。こんなこと私の様な人間が世界征服を
してまで遂行するような事でもなかろうに。
どうして今まで誰も実行してこなかったんだろうか。
やはり自分の利益が一番大切な人間が上に立っていたと言うことか。
結果的にそれが、自分の過ごしやすい
幸せな世界を作り上げる事になると言うのに。
「これから忙しくなるぞ。」
窓際で外を眺めながら、この世界の行く末を案じ
世界中の誰もが幸せになれる事を、心から祈った。
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俺はキャバクラなんて行った事無かったから、先輩に無理にでも行こう、
社会勉強だからなんて言われても乗り気では無かった。
大体金を払って女性とお話に行く意味がわからない。
話したいなら話しかければいいし、騒ぎたいなら
男同士でも男女混合でも友達を誘えばいい。
実際に無理矢理連れて行かれた先で、特に面白みも無く
きらびやかに着飾った女性を、どこか冷めた目で大変だなあ
とか思いながら、ちびりちびりと美味い酒を煽っていた。
「君は素敵だねえ。僕のお家に来ないかい。」
先輩の一人が女性の一人を口説き始めた。
そのあまりの熱心な口説きっぷりに一同爆笑。
もしかしたら口説いている先輩も、口説ける訳無いと
わかっていながらも、この空間を楽しんでいるのかもしれない。
爆笑は何時間も続いた。腹が痛かった。笑い転げるとはこの事で、
いくら飲んでも酔わないぐらいに笑い続けた。
ベロンベロンに酔っ払った先輩方と分かれて、
今夜泊まるホテルにそれぞれ戻った。
翌朝、二日酔いになる事無く朝を迎えて、いやあ昨日は
良く笑ったなあと振り返り思い出し笑いをしていると、
昨日口説き倒していた先輩と顔を合わせた。
「いやあ、昨日は凄かったですねえ。」
「そうかい?あんまり覚えていないのだけれど。」
「みなさんで大爆笑させてもらいました。」
「そういえば、昨日の女の子の名前、なんだっけ・・・。」
絶句。そして再び爆笑。
「せ、先輩。あれだけ熱心に口説いてたのに・・・。」
「いやあ、顔も良く覚えてないんだよねえ。何言ったかなあ・・・。」
ヒーヒー言いながら同席していた先輩と、反芻するかのように
昨日の顛末の確認と、首をかしげて思い出せないと言いながら
朝飯を食べる口説き倒した先輩は、非常に面白かった。
一人、馬鹿になれる人がいれば、キャバクラも笑える場所なんだなと
不躾な事を思いながらも昨日痛くなった腹痛をぶり返しながら思った。
俺には一人で行って楽しむ事など出来ないだろうけど。
わざわざ金を使って楽しもうとは、やっぱり思えないから。
バブル時代の文化の賜物なのかな。
とにかく金を使う事を考えて、綺麗な女性をはべらせるのが
大好きな人たちと、それを食い物にする商売人と女性たちの、
前時代の遺跡のようなものなのかもしれない。
今でもガールズバーなんてのもあるとニュースでやっていたけれど
いつの時代も男って馬鹿な生き物だね。
男の俺が言うのもなんだけどさ。
男に生まれてすみません。自嘲気味に。
社会勉強だからなんて言われても乗り気では無かった。
大体金を払って女性とお話に行く意味がわからない。
話したいなら話しかければいいし、騒ぎたいなら
男同士でも男女混合でも友達を誘えばいい。
実際に無理矢理連れて行かれた先で、特に面白みも無く
きらびやかに着飾った女性を、どこか冷めた目で大変だなあ
とか思いながら、ちびりちびりと美味い酒を煽っていた。
「君は素敵だねえ。僕のお家に来ないかい。」
先輩の一人が女性の一人を口説き始めた。
そのあまりの熱心な口説きっぷりに一同爆笑。
もしかしたら口説いている先輩も、口説ける訳無いと
わかっていながらも、この空間を楽しんでいるのかもしれない。
爆笑は何時間も続いた。腹が痛かった。笑い転げるとはこの事で、
いくら飲んでも酔わないぐらいに笑い続けた。
ベロンベロンに酔っ払った先輩方と分かれて、
今夜泊まるホテルにそれぞれ戻った。
翌朝、二日酔いになる事無く朝を迎えて、いやあ昨日は
良く笑ったなあと振り返り思い出し笑いをしていると、
昨日口説き倒していた先輩と顔を合わせた。
「いやあ、昨日は凄かったですねえ。」
「そうかい?あんまり覚えていないのだけれど。」
「みなさんで大爆笑させてもらいました。」
「そういえば、昨日の女の子の名前、なんだっけ・・・。」
絶句。そして再び爆笑。
「せ、先輩。あれだけ熱心に口説いてたのに・・・。」
「いやあ、顔も良く覚えてないんだよねえ。何言ったかなあ・・・。」
ヒーヒー言いながら同席していた先輩と、反芻するかのように
昨日の顛末の確認と、首をかしげて思い出せないと言いながら
朝飯を食べる口説き倒した先輩は、非常に面白かった。
一人、馬鹿になれる人がいれば、キャバクラも笑える場所なんだなと
不躾な事を思いながらも昨日痛くなった腹痛をぶり返しながら思った。
俺には一人で行って楽しむ事など出来ないだろうけど。
わざわざ金を使って楽しもうとは、やっぱり思えないから。
バブル時代の文化の賜物なのかな。
とにかく金を使う事を考えて、綺麗な女性をはべらせるのが
大好きな人たちと、それを食い物にする商売人と女性たちの、
前時代の遺跡のようなものなのかもしれない。
今でもガールズバーなんてのもあるとニュースでやっていたけれど
いつの時代も男って馬鹿な生き物だね。
男の俺が言うのもなんだけどさ。
男に生まれてすみません。自嘲気味に。
いつも通りの時間に起きて、いつも通りに朝食を食べる。
妻は朝早く起きて朝ご飯を作ってくれた。これもいつも通り。
娘が忙しそうにやってくる。別にこれと言って予定は無いはずだが。
「おはようパパ。」
「おはよう。何もなくてもちゃんと起きれるとは、パパより偉いな。」
娘の頭を撫でてやると、嬉しそうにえへへと笑う。
キッチンから妻の鼻歌が聞こえて来る。
私は今、幸せだ。それを象徴するかのように、
この素敵な誇るべき空間は光に包まれた。
「パパ。おひさまって何であんなに明るいの?」
「うん?・・・ああ、燃えているからだよ。信じられないぐらいの高い温度で、想像も付かないような離れた距離から、地球を照らしてくれている。」
「何で燃えてるの?」
「おひさまも生きているからだよ。」
「生きてると燃えるの?わたしも?」
「燃えてるって表現はおかしいかもしれないけど、体温があるだろ?熱。おひさまは物凄く大きいから、たくさん熱くなって燃えてるんだ。」
「ふーん。おひさまって凄いんだね。」
「そうだね。凄いね。」
自分の娘に勉強させられるとは、私も歳を取ったかな。
確かに普段忘れがちだけれど、太陽の恩恵はありがたい。
近づきすぎれば火傷どころか消滅してしまうだろう。
しかしながら適度な距離を保ちながら、この地球に
生命をもたらしてくれている。それは素晴らしい事だ。
「・・・生きてるって凄いんだなあ。」
「あなた、何言ってるの。」
幸せそうに笑う妻の大好きな顔。
昔見た光景を思い出す。
光とは、希望の象徴として私たちの記憶に焼きついている。
しかし、忘れてはならない。近づき過ぎた太陽のように、
度が過ぎればそれは刃となり、私たちを傷付ける。
それは歴史の中で何度も繰り返されてきた愚考。
神話の時代より浄化と揶揄されつつも、
確実に命を奪い続けてきた悪意の塊。
そう、今私が見ている光景は走馬灯。
度が過ぎた光によって、きらびやかに、そして皮肉にも
この幸せを彩るようで消滅させてしまう悪意がやって来た。
思い出の詰まった家族が、家が、全て吹き飛んでいく。
私も、愛娘も、愛妻も。全て。全て消えて無くなる。
たった一握りの人間の、エゴと強欲によって、
私たちだけでは無い。莫大な数の人間が、
幸せが、日常が、そして命が奪われる。
バベルの塔を打ち立てた愚かさの様に。
人間が滅びるのは、人間自身が生み出した
他人を奪う為だけの光。それは希望に程遠く。
忘れてはならない。死とは無である事を。
妻は朝早く起きて朝ご飯を作ってくれた。これもいつも通り。
娘が忙しそうにやってくる。別にこれと言って予定は無いはずだが。
「おはようパパ。」
「おはよう。何もなくてもちゃんと起きれるとは、パパより偉いな。」
娘の頭を撫でてやると、嬉しそうにえへへと笑う。
キッチンから妻の鼻歌が聞こえて来る。
私は今、幸せだ。それを象徴するかのように、
この素敵な誇るべき空間は光に包まれた。
「パパ。おひさまって何であんなに明るいの?」
「うん?・・・ああ、燃えているからだよ。信じられないぐらいの高い温度で、想像も付かないような離れた距離から、地球を照らしてくれている。」
「何で燃えてるの?」
「おひさまも生きているからだよ。」
「生きてると燃えるの?わたしも?」
「燃えてるって表現はおかしいかもしれないけど、体温があるだろ?熱。おひさまは物凄く大きいから、たくさん熱くなって燃えてるんだ。」
「ふーん。おひさまって凄いんだね。」
「そうだね。凄いね。」
自分の娘に勉強させられるとは、私も歳を取ったかな。
確かに普段忘れがちだけれど、太陽の恩恵はありがたい。
近づきすぎれば火傷どころか消滅してしまうだろう。
しかしながら適度な距離を保ちながら、この地球に
生命をもたらしてくれている。それは素晴らしい事だ。
「・・・生きてるって凄いんだなあ。」
「あなた、何言ってるの。」
幸せそうに笑う妻の大好きな顔。
昔見た光景を思い出す。
光とは、希望の象徴として私たちの記憶に焼きついている。
しかし、忘れてはならない。近づき過ぎた太陽のように、
度が過ぎればそれは刃となり、私たちを傷付ける。
それは歴史の中で何度も繰り返されてきた愚考。
神話の時代より浄化と揶揄されつつも、
確実に命を奪い続けてきた悪意の塊。
そう、今私が見ている光景は走馬灯。
度が過ぎた光によって、きらびやかに、そして皮肉にも
この幸せを彩るようで消滅させてしまう悪意がやって来た。
思い出の詰まった家族が、家が、全て吹き飛んでいく。
私も、愛娘も、愛妻も。全て。全て消えて無くなる。
たった一握りの人間の、エゴと強欲によって、
私たちだけでは無い。莫大な数の人間が、
幸せが、日常が、そして命が奪われる。
バベルの塔を打ち立てた愚かさの様に。
人間が滅びるのは、人間自身が生み出した
他人を奪う為だけの光。それは希望に程遠く。
忘れてはならない。死とは無である事を。
土手を歩けば、月が綺麗で。もう君に月が綺麗だなんて言える筈も無く。残り少ない時間の中で、取り返しの付かない離れた心の距離を、そして今まで感じて来た喜びや悲しみ、その全ての余韻を味わうかのように、寒空を見上げながら歩いた。それはまるで特急列車が終着駅に辿り着くその直前の線路を徐行するかのように、君はしっかりと前を向いて、僕は時折歩いていくその足を眺めながら、ただ、何も言わずにあてども無く歩いていた。
君が微笑む。眼差しは前を向いたままで。
「楽しかったね。」
「うん、楽しかったよ。」
「終わりだね。」
「うん。終わりだよ。」
ちゃんと終わらせられるという事は、ある種幸せなのかもしれないと思いながら。
「間違ってなかったよね?」
君が呟く。
「うん。素晴らしい出会いだったと思う。」
過去形が白い吐息に混じって消える。
君の手を取り、手を繋いで歩いた。
君との最後の道を、本当は泣きながら。
夜空には雨のような流星群。
もしも雨だったら涙をごまかせたのに。
君も泣いている。涙は拭かないよ。
最後に温もりを忘れないように。
どちらとも無く抱き締め合って口付けた。
震えている君はとても綺麗で。
「愛し合っていても、離れなくてはいけない時もあるんだね。」
そう言って君は、泣きながら笑った。
その笑顔は、誰よりも素敵で。
僕は忘れない。
君が愛して止まない、この世界の美しさを。
流星降り注ぐ寒空と澄んだ空気の美しさを。
言葉なんて本当は要らなかった。
いくら言葉を紡いでも、君への想いには足りないから。
願わくば君も忘れないで欲しい。
そしてこの別れの淋しさが、流星と共に流れてしまえばいい。
いっそのこと、恨んでくれたら。
悲しいけど楽かもしれないのに。
この別れを僕のせいにしても構わないから。
僕の事を永遠に嫌ってくれて構わないから。
だから、忘れないで。
君の記憶から消えて薄れてしまう方が切ない。
壊れてしまいそうな君の細い身体を、もう一度だけ
抱き締めた。
土手を歩けば、月が綺麗で。もう君に月が綺麗だなんて言える筈も無く。残り少ない時間の中で、取り返しの付かない離れた心の距離を、そして今まで感じて来た喜びや悲しみ、その全ての余韻を味わうかのように、寒空を見上げながら歩いた。それはまるで特急列車が終着駅に辿り着くその直前の線路を徐行するかのように、君はしっかりと前を向いて、僕は時折歩いていくその足を眺めながら、ただ、何も言わずにあてども無く歩いていた。
君が微笑む。眼差しは前を向いたままで。
「楽しかったね。」
「うん、楽しかったよ。」
「終わりだね。」
「うん。終わりだよ。」
ちゃんと終わらせられるという事は、ある種幸せなのかもしれないと思いながら。
「間違ってなかったよね?」
君が呟く。
「うん。素晴らしい出会いだったと思う。」
過去形が白い吐息に混じって消える。
君の手を取り、手を繋いで歩いた。
君との最後の道を、本当は泣きながら。
夜空には雨のような流星群。
もしも雨だったら涙をごまかせたのに。
君も泣いている。涙は拭かないよ。
最後に温もりを忘れないように。
どちらとも無く抱き締め合って口付けた。
震えている君はとても綺麗で。
「愛し合っていても、離れなくてはいけない時もあるんだね。」
そう言って君は、泣きながら笑った。
その笑顔は、誰よりも素敵で。
僕は忘れない。
君が愛して止まない、この世界の美しさを。
流星降り注ぐ寒空と澄んだ空気の美しさを。
言葉なんて本当は要らなかった。
いくら言葉を紡いでも、君への想いには足りないから。
願わくば君も忘れないで欲しい。
そしてこの別れの淋しさが、流星と共に流れてしまえばいい。
いっそのこと、恨んでくれたら。
悲しいけど楽かもしれないのに。
この別れを僕のせいにしても構わないから。
僕の事を永遠に嫌ってくれて構わないから。
だから、忘れないで。
君の記憶から消えて薄れてしまう方が切ない。
壊れてしまいそうな君の細い身体を、もう一度だけ
抱き締めた。
土手を歩けば、月が綺麗で。もう君に月が綺麗だなんて言える筈も無く。残り少ない時間の中で、取り返しの付かない離れた心の距離を、そして今まで感じて来た喜びや悲しみ、その全ての余韻を味わうかのように、寒空を見上げながら歩いた。それはまるで特急列車が終着駅に辿り着くその直前の線路を徐行するかのように、君はしっかりと前を向いて、僕は時折歩いていくその足を眺めながら、ただ、何も言わずにあてども無く歩いていた。
ガガギギガガ…
「うーん、油が切れて来たみたいだね。注してあげるよ。」
「アリガトウ。」
「その代わり、終わったら僕にも油注してね。」
化学は発展し、UFOなんて当たり前の時代。
時計職人なんかの歯車技術が劇的に発展して、
機械といえば何かと歯車を複雑に用いて作られている。
基本動作に関しては、複雑なコンピューターなんかよりも
歯車を細かく組み合わせた方が、手っ取り早くて良い。
もちろんそれはコンピューターにもメンテナンスが
必要なように、こうやって定期的に油注さないといけないけど。
僕らのようなサイボーグを作り出すことに成功したのも、
歯車職人の繊細且つ複雑な技術のおかげに他ならない。
時計職人からサイボーグ職人へ。それは当然の流れ
だったと思う。動作を歯車に頼る分、サイボーグにも
感情が持てるぐらいにまで、コンピューターで制御
する事が出来るようになったのだ。単純と複雑の
共生が、僕らサイボーグを人間に近付ける事になった。
感情を持つ事でロボット三原則とか言う人間に
対する服従が破られるのでは無いかと懸念され、
問題視されたらしいが、普通は誰とも争いたく無い。
喧嘩はあれど、感情を持つ事で僕らサイボーグは、
人間が人間に雇われるように、合理的に従うようになった。
独立しているサイボーグだってもちろんいるし、
最近ではサイボーグの歯車職人なんてのもいるらしい。
人間にもサイボーグ技術が役立っているみたいで、
手足を事故や病気で失った人の義手義足や、
ダメになった部分のサイボーグ化をする事で
随分と人間も長生き出来るようになったようだ。
死ぬ前に出来るだけ自分の記憶を死ぬ前に
データ化しておいて、サイボーグとして
生まれ変わった人までいるらしい。
はるか昔なら映画や小説、アニメや漫画の世界の
中にしか無かったサイボーグも、現代では当たり前だ。
「そのうち、子供なんかも生まれたりするようになるのかなあ。」
実際、子供が生まれなかったりして、サイボーグを
養子として引き取る家もあるらしい。誕生日には
定期的なメンテナンスをして『成長』させるそうだ。
皮膚に至るまで、人工でかなり人間に近付ける事が
出来るようになったからこその関係だとおもう。
実は今、僕は人間の女性に恋をしている。
だからいつか一緒になれたとしたら、
子供が欲しいなあなんて思ったりして…。
「何ヲ人間ミタイニ顔ヲ赤クシテ照レテルンダイ。」
しまった、顔に出てたみたいだ。
うわあ、恥ずかしいな。
「うーん、油が切れて来たみたいだね。注してあげるよ。」
「アリガトウ。」
「その代わり、終わったら僕にも油注してね。」
化学は発展し、UFOなんて当たり前の時代。
時計職人なんかの歯車技術が劇的に発展して、
機械といえば何かと歯車を複雑に用いて作られている。
基本動作に関しては、複雑なコンピューターなんかよりも
歯車を細かく組み合わせた方が、手っ取り早くて良い。
もちろんそれはコンピューターにもメンテナンスが
必要なように、こうやって定期的に油注さないといけないけど。
僕らのようなサイボーグを作り出すことに成功したのも、
歯車職人の繊細且つ複雑な技術のおかげに他ならない。
時計職人からサイボーグ職人へ。それは当然の流れ
だったと思う。動作を歯車に頼る分、サイボーグにも
感情が持てるぐらいにまで、コンピューターで制御
する事が出来るようになったのだ。単純と複雑の
共生が、僕らサイボーグを人間に近付ける事になった。
感情を持つ事でロボット三原則とか言う人間に
対する服従が破られるのでは無いかと懸念され、
問題視されたらしいが、普通は誰とも争いたく無い。
喧嘩はあれど、感情を持つ事で僕らサイボーグは、
人間が人間に雇われるように、合理的に従うようになった。
独立しているサイボーグだってもちろんいるし、
最近ではサイボーグの歯車職人なんてのもいるらしい。
人間にもサイボーグ技術が役立っているみたいで、
手足を事故や病気で失った人の義手義足や、
ダメになった部分のサイボーグ化をする事で
随分と人間も長生き出来るようになったようだ。
死ぬ前に出来るだけ自分の記憶を死ぬ前に
データ化しておいて、サイボーグとして
生まれ変わった人までいるらしい。
はるか昔なら映画や小説、アニメや漫画の世界の
中にしか無かったサイボーグも、現代では当たり前だ。
「そのうち、子供なんかも生まれたりするようになるのかなあ。」
実際、子供が生まれなかったりして、サイボーグを
養子として引き取る家もあるらしい。誕生日には
定期的なメンテナンスをして『成長』させるそうだ。
皮膚に至るまで、人工でかなり人間に近付ける事が
出来るようになったからこその関係だとおもう。
実は今、僕は人間の女性に恋をしている。
だからいつか一緒になれたとしたら、
子供が欲しいなあなんて思ったりして…。
「何ヲ人間ミタイニ顔ヲ赤クシテ照レテルンダイ。」
しまった、顔に出てたみたいだ。
うわあ、恥ずかしいな。