完全フィクション
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目の前の暴れ馬に乗るには相当に身体の負担が掛かる。
しかしこれもまた苦労=快感を見出してしまった
自業自得と言えば自業自得。日課ほどでは無いが
この大きな振動・・・荒波に飲み込まれてしまった自分がいる。
呼吸だってままならない。
肩を動かすぐらいに大きく深呼吸して、いざ出陣。
「1、2・・・1、2、3・・・GO。」
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
ひづめが地面を蹴る音は反抗的態度を体現する
馬の意思と共に踊り狂う。わざと体重を乗せるように
飛び乗った俺は、その理不尽な揺さぶりを誘発したのだ。
「たまんねえ・・・。」
舌を噛むぞ、と他人が呟いていたら突っ込んでいただろう。
もちろんコントロールなんて微塵も出来るわけも無く、
必死にしがみついて振り落とされないように踏ん張っても、
哀れ吹き飛ばされて地面に口付け。おや、天地がひっくり返ったようだ。
「あっはっはっはっは!楽しいなあ!」
馬はまるで『楽しいのはお前だけ。俺は大変なんだよ』と
言わんばかりに横目でこちらを見下して来る。
「・・・上等じゃねえか。」
ニヤリと薄笑みを浮かべる今の自分は賊と呼ばれそうな小悪党か
大悪党を夢見る中二病患者に見えなくも無い。・・・いや、そう見えるだろう。
他人がどうこうとかどう思われてるとか、そんなことはどうでもいい。
再び呼吸を乱して威嚇する暴れ馬の横に立ち、一足飛びに飛び乗った。
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
先程よりも大きく波は荒れ狂い、
何かの必殺技でも喰らったかのような勢いで宙を舞う。
普通に落ちればまだいいものの、擦り傷を作る滑りっぷりで
豪快なズサーッ!と言う音と共にローリングダウン。
生傷作って天罰覿面だなあ・・・楽しくて自分でもどうしてこんなにも
こんな痛い思いをしてマゾでもないのに楽しんでいる事が
わからない事自体も楽しくて仕方が無い。イヒヒ。
馬に乗ってみろなんて言うしね。考えるよりまた乗ってしまえ。
「1、2・・・1、2、3・・・GO。」
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
結果はいつでもいつも通り。誰もいない荒野で、
馬と自分だけの一騎打ち。さあ、まだまだこれからだ。
しかしこれもまた苦労=快感を見出してしまった
自業自得と言えば自業自得。日課ほどでは無いが
この大きな振動・・・荒波に飲み込まれてしまった自分がいる。
呼吸だってままならない。
肩を動かすぐらいに大きく深呼吸して、いざ出陣。
「1、2・・・1、2、3・・・GO。」
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
ひづめが地面を蹴る音は反抗的態度を体現する
馬の意思と共に踊り狂う。わざと体重を乗せるように
飛び乗った俺は、その理不尽な揺さぶりを誘発したのだ。
「たまんねえ・・・。」
舌を噛むぞ、と他人が呟いていたら突っ込んでいただろう。
もちろんコントロールなんて微塵も出来るわけも無く、
必死にしがみついて振り落とされないように踏ん張っても、
哀れ吹き飛ばされて地面に口付け。おや、天地がひっくり返ったようだ。
「あっはっはっはっは!楽しいなあ!」
馬はまるで『楽しいのはお前だけ。俺は大変なんだよ』と
言わんばかりに横目でこちらを見下して来る。
「・・・上等じゃねえか。」
ニヤリと薄笑みを浮かべる今の自分は賊と呼ばれそうな小悪党か
大悪党を夢見る中二病患者に見えなくも無い。・・・いや、そう見えるだろう。
他人がどうこうとかどう思われてるとか、そんなことはどうでもいい。
再び呼吸を乱して威嚇する暴れ馬の横に立ち、一足飛びに飛び乗った。
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
先程よりも大きく波は荒れ狂い、
何かの必殺技でも喰らったかのような勢いで宙を舞う。
普通に落ちればまだいいものの、擦り傷を作る滑りっぷりで
豪快なズサーッ!と言う音と共にローリングダウン。
生傷作って天罰覿面だなあ・・・楽しくて自分でもどうしてこんなにも
こんな痛い思いをしてマゾでもないのに楽しんでいる事が
わからない事自体も楽しくて仕方が無い。イヒヒ。
馬に乗ってみろなんて言うしね。考えるよりまた乗ってしまえ。
「1、2・・・1、2、3・・・GO。」
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
ダッタカ!ダッタカ!ダッタカ!ダカダカ!
結果はいつでもいつも通り。誰もいない荒野で、
馬と自分だけの一騎打ち。さあ、まだまだこれからだ。
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ともかく私は、ヒーローズギルドの受付になってしまった。
なってしまったと言う言葉遣いに違和感を覚えた読者諸君。
諸君らの感性は全く以って鋭さを褒め称えて余りある。
ヒーローってカッコイイものじゃない?
女である私が、いえ、この町の女性みんなが
うっとり思い出して語られるような。理想かもしれないけどね。
白馬の王子的な妄想なり憧れを抱くのは当然じゃないですか。
もちろん私もあわよくば・・・ゴニョゴニョ・・・な展開も期待した上での下心。
そう。願わくば諸君らに気の迷いであったと、全力で言い訳させてもらいたい。
ウチのヒーローズギルドは全く以ってやる気が無い。ヒーローのヒの字も無い。
そのくせ、町にはこれでもかと言わんばかりにモンスターがやって来る。
もちろん他力本願な町人や私のようなか弱いヲトメ・・・(私だよ私。
ほら、そこ唾吐いてんじゃねーよ蹴っ飛ばすぞ)が咎めるのが筋違いなのも
読者諸君らの指摘であれば甘んじて受け入れる所存ではございますが・・・。
正義感の無いヒーローってどうなのよ。まがりなりにも下心丸出しで受付に
受かってしまった・・・そう、受かってしまった私を石投げて笑ってくださひ。
モンスターが来てもあくびはするわ、泣き出す奴はいるわ、寝るわ・・・
ある意味肝が据わっていてそこら辺がヒーローなのかもしれないけどね。
「ぼらんてぃあ?しらねーよ報酬寄越せ」だの「生きたもん勝ち」だの
ぶつくさ言いながら壊れる町を見ながら酒盛りを始める始末。
それでいて実力はあるからタチが悪い・・・いや、本当に。ドラゴンぐらいなら
モンハンやりながら・・・おっと失礼。片手間で倒せちゃうぐらい強いのです。
「モンスターが出たぞー!」
町人の声に窓の外を見ればトロールですよ。二階建ての一軒家が小さいぐらいの。
仕方が無いのでギルド内のヒーロー・・・もとい飲んだくれの酔っ払いどもを
けしかけるために、か弱いヲトメ(だから私だっつってんだろ)である私が
操を守りながらやる気を出させるしかないのです。
町のクレームは受付である私に集中するので。
「今回の報酬はほっぺにちゅーです」
「ふざんけんなー!」
「乳もませろー!」
「嫁入り前の美少女になんてことを・・・。」
「誰がびしょうj・・・いえ、なんでもないです。」
私の上目遣いに恐れをなs・・・もといやられちゃったのかしら。
(二つの意味で。)仕方無いなあ・・・。
「なんかモンスター倒してくれたら酒おごってくれるとか言ってたけどなあ。」
俄然色めき立つヒーロー?たち。こののんべえどもが・・・。
「やったろうじゃねえか!」
「お茶の子さいさい!」
「酒じゃ酒じゃ酒じゃ!」
集団で出てったよ・・・。あ。トロール泣いてる。
まあ、ある意味集団で個々を撃破するのは常套手段だし、何とか言う
ヒーロー番組なんかでも弱いものいじめにしか見えない5対1とか
あるからなあ・・・。寄ってたかってタコ殴り。めでたし、めでたし・・・か?
なってしまったと言う言葉遣いに違和感を覚えた読者諸君。
諸君らの感性は全く以って鋭さを褒め称えて余りある。
ヒーローってカッコイイものじゃない?
女である私が、いえ、この町の女性みんなが
うっとり思い出して語られるような。理想かもしれないけどね。
白馬の王子的な妄想なり憧れを抱くのは当然じゃないですか。
もちろん私もあわよくば・・・ゴニョゴニョ・・・な展開も期待した上での下心。
そう。願わくば諸君らに気の迷いであったと、全力で言い訳させてもらいたい。
ウチのヒーローズギルドは全く以ってやる気が無い。ヒーローのヒの字も無い。
そのくせ、町にはこれでもかと言わんばかりにモンスターがやって来る。
もちろん他力本願な町人や私のようなか弱いヲトメ・・・(私だよ私。
ほら、そこ唾吐いてんじゃねーよ蹴っ飛ばすぞ)が咎めるのが筋違いなのも
読者諸君らの指摘であれば甘んじて受け入れる所存ではございますが・・・。
正義感の無いヒーローってどうなのよ。まがりなりにも下心丸出しで受付に
受かってしまった・・・そう、受かってしまった私を石投げて笑ってくださひ。
モンスターが来てもあくびはするわ、泣き出す奴はいるわ、寝るわ・・・
ある意味肝が据わっていてそこら辺がヒーローなのかもしれないけどね。
「ぼらんてぃあ?しらねーよ報酬寄越せ」だの「生きたもん勝ち」だの
ぶつくさ言いながら壊れる町を見ながら酒盛りを始める始末。
それでいて実力はあるからタチが悪い・・・いや、本当に。ドラゴンぐらいなら
モンハンやりながら・・・おっと失礼。片手間で倒せちゃうぐらい強いのです。
「モンスターが出たぞー!」
町人の声に窓の外を見ればトロールですよ。二階建ての一軒家が小さいぐらいの。
仕方が無いのでギルド内のヒーロー・・・もとい飲んだくれの酔っ払いどもを
けしかけるために、か弱いヲトメ(だから私だっつってんだろ)である私が
操を守りながらやる気を出させるしかないのです。
町のクレームは受付である私に集中するので。
「今回の報酬はほっぺにちゅーです」
「ふざんけんなー!」
「乳もませろー!」
「嫁入り前の美少女になんてことを・・・。」
「誰がびしょうj・・・いえ、なんでもないです。」
私の上目遣いに恐れをなs・・・もといやられちゃったのかしら。
(二つの意味で。)仕方無いなあ・・・。
「なんかモンスター倒してくれたら酒おごってくれるとか言ってたけどなあ。」
俄然色めき立つヒーロー?たち。こののんべえどもが・・・。
「やったろうじゃねえか!」
「お茶の子さいさい!」
「酒じゃ酒じゃ酒じゃ!」
集団で出てったよ・・・。あ。トロール泣いてる。
まあ、ある意味集団で個々を撃破するのは常套手段だし、何とか言う
ヒーロー番組なんかでも弱いものいじめにしか見えない5対1とか
あるからなあ・・・。寄ってたかってタコ殴り。めでたし、めでたし・・・か?
・・・車椅子に座り、首から下が動かなくなった今でも、
想像力のたくましさと言うか妄想癖がひどい私は、
比較的楽しく毎日を過ごしていた。
ありがたい事に全身不随になってからも友人達は
足繁く私の元に訪れては、外に連れ出してくれたり、
以前のような関係をそっくりそのまま続けてくれている。
もちろん身体が動かなくなった時には死んでしまおうかと
思うほどに落胆もしたものだが、まるでその時の自分が
自分自身でも滑稽に思えるほどに、今の私は幸せだった。
暖かな日差しに照らされて、草木の匂い溢れる公園で
友人に車椅子を押してもらい、少しだけ眠くなる。
「ちょっと寝てもいいかな。はしゃぎ疲れちゃったかも。」
無言で頷く友人の笑顔を確認して、私は眠りに着く。
・・・・・・
「ちょっと寝すぎてしまったかな。」
ホビット達が群れを成して野良仕事に出かける際の
鼻歌だか野良歌だかわからないような歌声が響いて、
それが目覚まし代わりに私は目が覚めたのだった。
伸びをすると人形である私の球体関節が軋んで音を立てる。
少し油が足りなくなっているのかもしれない。朝飯代わりに・・・
いや、ラジオ体操代わりに油を差すことにしよう。
ベッドから身体を起こして、マリオネットなんぞよりも
軽快で滑らかな動きだと自画自賛に苦笑しながらも、
ベッドの下の道具箱の中にあった油差しを出して、
自分自身の球体関節に気休め程度に一滴垂らす。
朝の油差しは非常に気分がいい。比喩が矛盾して
おかしな話になってしまうがそれはまるで喫煙の如く
私の心を嗜好品として満たしてくれるのだ。
「今日は何をしようかな。」
仕事なんぞ私には無いし、食べなくても動いていられるから、
今日も自由にしたい事をして一日を過ごそうと思っている。
でも少しだけまだ眠り足りないかもしれないな。
油差しをタンスに仕舞いこんで、飛び乗るようにベッドに戻り、
再び二度寝の湖の底へと沈んでいくのであった。
・・・・・・
「あっ。おじいちゃん笑ってるよ?」
「えっ。」
親父が植物人間になってもう何年にもなる。
しかし不思議な事に普段健康なままの時のような
表情の変化を見せるので、実は私たち家族全員を騙して、
意識の無いフリをしているんじゃあないかと思う時がある。
いつも見つけるのは娘だ。だからこそ何だか出遅れた
自分自身の不甲斐無さから来る嫉妬でもあるかもしれない。
「きっと楽しい夢でも見てるんだよ。
元気な時は世界中を飛び回っていたからね。」
親父、本当は起きてるんだろ?そう言いたくなる気持ちで、
本当に寝ているだけのような呼吸をしている親父に苦笑しつつ、
抱きついて来た娘の頭を撫でるのだった。
・・・・・・
マントを翻してピエロが一人。
「はてさて、あなたの見ている世界。それが全てだとお思いかな?
どれが現実か、真実かなんて自我の認識の上でしかない。
どこかのSFのように今の世界が仮想空間だった!なんてことも
・・・・・・あるかもしれませんね。うふふ。」
想像力のたくましさと言うか妄想癖がひどい私は、
比較的楽しく毎日を過ごしていた。
ありがたい事に全身不随になってからも友人達は
足繁く私の元に訪れては、外に連れ出してくれたり、
以前のような関係をそっくりそのまま続けてくれている。
もちろん身体が動かなくなった時には死んでしまおうかと
思うほどに落胆もしたものだが、まるでその時の自分が
自分自身でも滑稽に思えるほどに、今の私は幸せだった。
暖かな日差しに照らされて、草木の匂い溢れる公園で
友人に車椅子を押してもらい、少しだけ眠くなる。
「ちょっと寝てもいいかな。はしゃぎ疲れちゃったかも。」
無言で頷く友人の笑顔を確認して、私は眠りに着く。
・・・・・・
「ちょっと寝すぎてしまったかな。」
ホビット達が群れを成して野良仕事に出かける際の
鼻歌だか野良歌だかわからないような歌声が響いて、
それが目覚まし代わりに私は目が覚めたのだった。
伸びをすると人形である私の球体関節が軋んで音を立てる。
少し油が足りなくなっているのかもしれない。朝飯代わりに・・・
いや、ラジオ体操代わりに油を差すことにしよう。
ベッドから身体を起こして、マリオネットなんぞよりも
軽快で滑らかな動きだと自画自賛に苦笑しながらも、
ベッドの下の道具箱の中にあった油差しを出して、
自分自身の球体関節に気休め程度に一滴垂らす。
朝の油差しは非常に気分がいい。比喩が矛盾して
おかしな話になってしまうがそれはまるで喫煙の如く
私の心を嗜好品として満たしてくれるのだ。
「今日は何をしようかな。」
仕事なんぞ私には無いし、食べなくても動いていられるから、
今日も自由にしたい事をして一日を過ごそうと思っている。
でも少しだけまだ眠り足りないかもしれないな。
油差しをタンスに仕舞いこんで、飛び乗るようにベッドに戻り、
再び二度寝の湖の底へと沈んでいくのであった。
・・・・・・
「あっ。おじいちゃん笑ってるよ?」
「えっ。」
親父が植物人間になってもう何年にもなる。
しかし不思議な事に普段健康なままの時のような
表情の変化を見せるので、実は私たち家族全員を騙して、
意識の無いフリをしているんじゃあないかと思う時がある。
いつも見つけるのは娘だ。だからこそ何だか出遅れた
自分自身の不甲斐無さから来る嫉妬でもあるかもしれない。
「きっと楽しい夢でも見てるんだよ。
元気な時は世界中を飛び回っていたからね。」
親父、本当は起きてるんだろ?そう言いたくなる気持ちで、
本当に寝ているだけのような呼吸をしている親父に苦笑しつつ、
抱きついて来た娘の頭を撫でるのだった。
・・・・・・
マントを翻してピエロが一人。
「はてさて、あなたの見ている世界。それが全てだとお思いかな?
どれが現実か、真実かなんて自我の認識の上でしかない。
どこかのSFのように今の世界が仮想空間だった!なんてことも
・・・・・・あるかもしれませんね。うふふ。」
此処は、妖精たちが集まる井戸端会議の場所。
ともすれば幽体となった僕が、彼等に気付かれる
事も無く、いや、もしかしたら気にすら止めて
もらえないであろう存在として席を並べていた。
議題は専ら人間界、つまりはここで言う下界の話
ばかりなのだが、イマイチ自ら命を絶ったばかりの
僕には欠片も興味を持つ事が出来ず、無神論者且つ
死後の世界やオカルトをこれっぽっちも信じて
いなかった自分がまるで実感を持てずに漂っていた。
何だかまだ悪い夢でも見ているかのような感覚。
本当は人間なんて存在していないんじゃないかと
思える程の天地が引っ繰り返るような体験を
していても、どうにもピンと来ていなかった。
しかしながら遠くに見える鼻だかなんだか
わからないモノをブラ下げたバクが鎮座
している所を見ると、どうやら悪夢では無いらしい。
「て言うか何なんだ此処は。天国でも無ければ地獄でも無い。」
僕の考えからすると天国も地獄もあってもらっては
困るのだけれど。いや、別に困る事は何も無いか…。
妖精たちはより一層けたたましく下界談義に
花を咲かせて、その声はさらに僕の存在を
薄く消し去ろうかとしているかの如く、
透き通った僕の身体をすり抜けて行く。
それはまるで生きていた頃と何ら
変わりのない状況に、自虐的に苦笑する。
それよりもそうだ、自分の身の振り方を
考えなければならないか。それとも流れに
身を任せてナンセンスな未来予想図など
破り捨ててしまえばいいのだろうか。
よくよく思い返してみると、そうだ、
今日は大晦日だったでは無いか?
下界と同じかどうかはわからないけれど、
今日ぐらいは自分だけの年越しでも祝おうか。
そんなことを考えていたら何だか自分が
ここに来た理由とか、急に馬鹿らしくなってしまった。
現実逃避どころか現実離れしたこの状況。
いっそのこと自分が人間だった事すら
忘れてしまえばいい。いや、こうなって
しまうと人間だったかどうかすら怪しいものだ。
それを証明するのは自分のおぼろげな記憶だけだし。
思考展開が突飛なまま暴走しているうちに、
気のせいか、背中に羽まで生えて来た。気がする。
今見えている羽が僕の妄想であるかもしれない
可能性は捨て切れないし、普通に考えて羽
なんて生えて来る訳が無いのだから。
存在意義なんて自己満足の形骸化でしかありえないし、
僕…俺…私が誰かなんて事すらもこの際どうでも良い事で。
いつの間にか妖精たちに混じって、自分もクルクル
と廻りながら飛び続けている事に気が付いた。
認識を誤認として妄想していただけかもしれない。
そうだ、私は悪い夢を見ていただけなのだ。
全てをリセットした気持ちで、やらなければ
ならない事があるのを自分では良くわかっている。
それはありきたりな行事でもあったような
気がするが、それもこの際どうでも良い。
自分の決めたやるべき事をとりあえずこなすとしよう。
下界の煩悩108つを消す除夜の鐘までの崩壊序曲。
「5…4…3…2…1…0!」
ともすれば幽体となった僕が、彼等に気付かれる
事も無く、いや、もしかしたら気にすら止めて
もらえないであろう存在として席を並べていた。
議題は専ら人間界、つまりはここで言う下界の話
ばかりなのだが、イマイチ自ら命を絶ったばかりの
僕には欠片も興味を持つ事が出来ず、無神論者且つ
死後の世界やオカルトをこれっぽっちも信じて
いなかった自分がまるで実感を持てずに漂っていた。
何だかまだ悪い夢でも見ているかのような感覚。
本当は人間なんて存在していないんじゃないかと
思える程の天地が引っ繰り返るような体験を
していても、どうにもピンと来ていなかった。
しかしながら遠くに見える鼻だかなんだか
わからないモノをブラ下げたバクが鎮座
している所を見ると、どうやら悪夢では無いらしい。
「て言うか何なんだ此処は。天国でも無ければ地獄でも無い。」
僕の考えからすると天国も地獄もあってもらっては
困るのだけれど。いや、別に困る事は何も無いか…。
妖精たちはより一層けたたましく下界談義に
花を咲かせて、その声はさらに僕の存在を
薄く消し去ろうかとしているかの如く、
透き通った僕の身体をすり抜けて行く。
それはまるで生きていた頃と何ら
変わりのない状況に、自虐的に苦笑する。
それよりもそうだ、自分の身の振り方を
考えなければならないか。それとも流れに
身を任せてナンセンスな未来予想図など
破り捨ててしまえばいいのだろうか。
よくよく思い返してみると、そうだ、
今日は大晦日だったでは無いか?
下界と同じかどうかはわからないけれど、
今日ぐらいは自分だけの年越しでも祝おうか。
そんなことを考えていたら何だか自分が
ここに来た理由とか、急に馬鹿らしくなってしまった。
現実逃避どころか現実離れしたこの状況。
いっそのこと自分が人間だった事すら
忘れてしまえばいい。いや、こうなって
しまうと人間だったかどうかすら怪しいものだ。
それを証明するのは自分のおぼろげな記憶だけだし。
思考展開が突飛なまま暴走しているうちに、
気のせいか、背中に羽まで生えて来た。気がする。
今見えている羽が僕の妄想であるかもしれない
可能性は捨て切れないし、普通に考えて羽
なんて生えて来る訳が無いのだから。
存在意義なんて自己満足の形骸化でしかありえないし、
僕…俺…私が誰かなんて事すらもこの際どうでも良い事で。
いつの間にか妖精たちに混じって、自分もクルクル
と廻りながら飛び続けている事に気が付いた。
認識を誤認として妄想していただけかもしれない。
そうだ、私は悪い夢を見ていただけなのだ。
全てをリセットした気持ちで、やらなければ
ならない事があるのを自分では良くわかっている。
それはありきたりな行事でもあったような
気がするが、それもこの際どうでも良い。
自分の決めたやるべき事をとりあえずこなすとしよう。
下界の煩悩108つを消す除夜の鐘までの崩壊序曲。
「5…4…3…2…1…0!」
マーチのような歩を刻むリズムで幕を開けた。
個性的で多彩な才能の光を個々に放ち、
それでいてぶつかる事無く複雑に混ざり合っていく。
時にアヴァンギャルドで、セクシー。
時に滑稽で、狂気に溢れた激しさを放つ。
ダンサブルに楽しませたかと思えば、
しっとりと包み込むような愛の歌を奏でる。
それでいて、唯一無二の大きな蠢きとなって、
この空間を満たす空気をかの色に染める。
それがげに美しき、異彩を放つはずの
多様な世界観は、たった一つの塊として
この目に焼き付けられて離れない。
弦が紡ぐ音すらも、個性と言うには
あまりにもカラフルでユニーク。
極彩色の孔雀を目の当たりに
しているかのような錯覚に陥る。
「さああなたも、百鬼夜行に混じろうぞ。」
そう誘われて、いつの間にか溶け込んでしまう
妖の魅力。もう戻れないのは、果たして誰なのか。
異形の舞と妖艶な紳士が同居する舞台。
骨太に肉付けて、彩り鮮やかに化粧を施す。
手にした道具を様々に持ち替えて、
色とりどりの世界を広げて行く。
区切りがつく度に広がる光景は様々で。
飽きさせ無いサブリミナルを繰り返し、
この脳内を手際良く洗脳して行く。
興味の浅かった私でさえも、魅力に引き込まれ、
いつの間にか興奮して震えていた。
身体を動かさずにはいられなかった。
大きな渦は熱狂的な声と共に笑顔に変わり、
幸せと呼ぶであろう時間の共有に心奪われる。
「素晴らしい。」
気付けばそう呟いていた。爆音の中で私の一言など
虚空に消えてしまうけれど、心を奪い去った
目の前の美しく且つ妖艶で異形な光景への最大の賛辞。
大きな区切りを迎えても。
「もっともっと!」
それはこの場で魅せられた全ての人々の代弁であり、
ひとつとなった心を顕在化した大いなる言霊。
きっとみんな恋をしているんだ。うっとりと凝視して
手元の芸術を大きく映し出したスクリーンを眺める。
言葉にすれば本当に陳腐になってしまうというのに、
その声は届く事は無いであろうことがわかっているのに、
脳内から溢れ出す賛辞が私の身体中を満たし、外まで溢れ出す。
全てが終わりを迎える頃には、仰々しくも無く、
ただただ自然な言葉で締め括られるのだ。
「また遊びましょう!きっと何とかなるでしょう!」
私の心に、頬に描いた落書きのような刻印が
しっかりと消えないように刻まれてしまったのだった。
それは心奪われてしまった私の記念日。
タイトルはその刻印にちなんで冠としましょう。
どうもありがとう。
『BーT』
個性的で多彩な才能の光を個々に放ち、
それでいてぶつかる事無く複雑に混ざり合っていく。
時にアヴァンギャルドで、セクシー。
時に滑稽で、狂気に溢れた激しさを放つ。
ダンサブルに楽しませたかと思えば、
しっとりと包み込むような愛の歌を奏でる。
それでいて、唯一無二の大きな蠢きとなって、
この空間を満たす空気をかの色に染める。
それがげに美しき、異彩を放つはずの
多様な世界観は、たった一つの塊として
この目に焼き付けられて離れない。
弦が紡ぐ音すらも、個性と言うには
あまりにもカラフルでユニーク。
極彩色の孔雀を目の当たりに
しているかのような錯覚に陥る。
「さああなたも、百鬼夜行に混じろうぞ。」
そう誘われて、いつの間にか溶け込んでしまう
妖の魅力。もう戻れないのは、果たして誰なのか。
異形の舞と妖艶な紳士が同居する舞台。
骨太に肉付けて、彩り鮮やかに化粧を施す。
手にした道具を様々に持ち替えて、
色とりどりの世界を広げて行く。
区切りがつく度に広がる光景は様々で。
飽きさせ無いサブリミナルを繰り返し、
この脳内を手際良く洗脳して行く。
興味の浅かった私でさえも、魅力に引き込まれ、
いつの間にか興奮して震えていた。
身体を動かさずにはいられなかった。
大きな渦は熱狂的な声と共に笑顔に変わり、
幸せと呼ぶであろう時間の共有に心奪われる。
「素晴らしい。」
気付けばそう呟いていた。爆音の中で私の一言など
虚空に消えてしまうけれど、心を奪い去った
目の前の美しく且つ妖艶で異形な光景への最大の賛辞。
大きな区切りを迎えても。
「もっともっと!」
それはこの場で魅せられた全ての人々の代弁であり、
ひとつとなった心を顕在化した大いなる言霊。
きっとみんな恋をしているんだ。うっとりと凝視して
手元の芸術を大きく映し出したスクリーンを眺める。
言葉にすれば本当に陳腐になってしまうというのに、
その声は届く事は無いであろうことがわかっているのに、
脳内から溢れ出す賛辞が私の身体中を満たし、外まで溢れ出す。
全てが終わりを迎える頃には、仰々しくも無く、
ただただ自然な言葉で締め括られるのだ。
「また遊びましょう!きっと何とかなるでしょう!」
私の心に、頬に描いた落書きのような刻印が
しっかりと消えないように刻まれてしまったのだった。
それは心奪われてしまった私の記念日。
タイトルはその刻印にちなんで冠としましょう。
どうもありがとう。
『BーT』