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完全フィクション
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運動をしていてケガをしてしまった私は、クラスメイトの男子におんぶされて保健室へと向かった。こんな時でも無ければ男の子に抱きつく機会なんてそうそう無いから、ぎゅっと落ちないように抱き付いて、離れないようにしていた。いい匂い。

「あれ?先生いないのか・・・。」

耳を赤くしたままでドアを開けた彼は、私の預け所を見失ってしまった事で困惑しているようなので、助け舟を出す事にした。

「とりあえず重いだろうから、ベッドに下ろして?」

わざと耳元で言ってみる。ビクンと震える彼。

「あ、ああ・・・。そうだな。」

安心したように思いやる気持ちのわかる優しい下ろし方に好感を持った。

「大丈夫?」

「うん。大丈夫だけど、ちょっと痣になっちゃったな。」

正直言っておぶってもらうほどのケガではなかったのだけれど、彼がチャンスとばかりにすかさずおんぶしてくれたので、甘える事にしたのだった。

彼の目が泳いでいる・・・。が、私の痣がある太ももの内側に目が引き寄せられているような・・・あ。そうか。パンツ見えそうかも。

「ま。いっか。」

「え?何?」

「こっちの話。ね、鍵閉めて来てよ。ちょっと休みたい。」

「え?あ、うん。」

「それから、痣になるの恥ずかしいから、キミが包帯巻いてくれる?」

鍵を閉めに行った背中に頼んでみる。

「・・・わかった。」

鍵を閉めて戻って来た彼はちょっと緊張した顔で棚から包帯を出して来た。

「痛かったら、言ってね。」

彼の鼻息が荒くなったように感じる。多分彼の目には、私の今日履いている白いパンツがしっかりと見えているはずだ。

「ん。ありがと。包帯って、なんかちょっと感触気持ち良いかも。」

「それ、なんかわかる。」

「キミの手も。」

「え?」

「気持ち良い。」

「・・・。」

「ね、舐めたい?」

「えっ?」

「私の脚。」

二人の時間が一瞬止まるが、鼻息の荒い赤くなった彼の頷きによって再び動き始める。

白の上に赤が這う。私は気持ち良さに仰け反って声を漏らす。彼の頭を撫でる。愛しくてたまらない。

「凄く・・・気持ち良い。」

彼はこちらを強い目で一度見て、すぐに夢中になって目を閉じる。私は我慢出来なかったから、自分の敏感な部分を触って、彼の頭を撫でながら果てた。

「・・・ありがと。二回目だね。お礼言うの。」

彼はとろんとした目で私を見つめる。カーテンは閉まっている。私は、まな板の上の花。彼に食べられる事にして、自分の皮を綺麗に剥いた。白い果実が露になった。
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ここには今、何も無い。

この世界で知らない人間はいないだろう。と言うよりも何人残っているかすらもわからない。

荒れ果てた荒野に広がる、本当に何も無い、起伏すら感じられないどこまでも続く平地は、人類が犯した最大の過ちによって平らにされたものだった。

始まりはほんの些細な事だったと思う。

自分の欲望や支配欲を優先する人間が集まり、それを淘汰しようとする国同士がぶつかってこうなったのだ。

あれ以来、何も感じられない。まるで自分が生きているかのような気分でいるが。もしかしたら死んでいるのかもしれない。それを確認する相手もいなければ、物すらも存在しないのだ。地面と空だけが世界の全てになってしまっていた。

目覚めた時はもう何も無かった。とりあえず出来るだけ歩き回ってみた。最初の場所に目印の服を置いて。目の前にどこまでも続く広がる荒野を見て、それほど広い範囲で歩かずに諦めてしまったけれど。

けれども自分だけが無事に?こうしている理由もわからなければ、どうしてこうなったかすら、ショックでなのか以前の事をうすぼんやりとすら思い出せずにいた。理由だけが頭の中にあって、直接的な要因は思い出せなかった。

地獄絵図のような記憶が頭の中に無いだけ却って良かったのかもしれない。ただ、このままだと飢え死にしてしまうのは明らかだったが、何も無い以上、生きる意味も無いのかもしれないとひどく達観した気持ちで思考だけが動き続けていた。

幸い暑くも無く寒くも無い気温ではあったし、眠るのには苦労し無さそうだった。とりあえずはここを拠点にして生きれるだけ生きてみよう。

大きく四角い枠を地面に足で描き、とりあえずそこをそう名付ける事にした。昔の住所の記憶があったので、一番最後の数字を取ったのだ。

先程から口の中が血の味がするが、もしかしたら実際に生きていて、もう長く無いのかもしれないな。悲しみや恐怖に慄きながら最期を迎えるよりは、何も無い諦めの付くこの状態が、慈悲深い何かに救われているのかもしれないとすら思った。

そして、自己を認識出来ているそのことこそが、あっさり消えて無くなってしまったであろう人たちよりも幸福なんじゃないかとすら思えていた。





広島や長崎に落ちた原子爆弾の被災者は、ちょっとした障害物のおかげで助かる者もいたと言う。その後病魔の様な被ばくに苛まれる事になってしまう者もいたのだが、それ以上の兵器がもたらす地獄は、想像もつかない。
のんべんだらり。

意味とか語源は良くわからないけど、雪国の真冬は雪に埋もれて、雪かきすらも意味の無い物となれば、当然家の中に引きこもる事となる。する事なんて何もない。

本当にたまたまだったけれど、あなたが家に遊びに来てくれて、帰れない事が不謹慎ではあるけれど嬉しかった。二人の距離が縮まる為には、小心者の私にはどうしても、少しでも長くと引き留める事は不可能だったから、自然の力でも借りなければこうなる事は出来なかっただろう。

「雪が止むのを待つか。」

そう言って残ってくれたあなたの横顔が少し嬉しそうに見えたのは私の勘違いじゃないって思いたい。先程まであなたとじゃれて遊んでいたウチで飼ってる白い猫も、飽きてしまったのか、部屋の真ん中にある私とあなたが入ったこたつの中で丸くなって眠ってしまっているようだった。猫好きなあなたのする事がひとつ減ってしまって退屈そう。

いつ取られてしまうか毎日心配しながら何も出来ない私は、内気を通り越してただの暗い無口な女に見えるんだろうな、と溜息を吐く。

「退屈か?ごめんな。俺がもっと話し上手だったら良かったんだけど…。」

退屈なんてとんでもない。不甲斐無い自分に嫌気が差してるだけです。

「…そうじゃないよ。」

頭の中ではこんなに饒舌なのに、どうして私はこれしかしゃべれないんだろう。

私の一言で、あなたはこちらを見る。私も見つめ返す。見つめ合ってしまい、顔が耳まで赤くなる。ああダメだ、私はどうしようもないくらいにあなたが好き。どうしたらいいのかはわからないけど、本当に。いつも頭の中はあなたでいっぱい。何もしてなくても、あなたに会えなくても。だから、いつもこうして何も言わずに会いに来てくれるあなたに感謝してる。あなたが好きだから。本当に好きなの。言いたい。でも言えない。拒絶されたら悲しいから。私の全てが終わってしまうから。ああ、どうしたら良いの。

「…すき…」

「え?」

え!?私、なんて言った?今言っちゃったの?ひいい!恥ずかしい!

「…そっち行っても良いか?」

先程よりも自分の顔が真っ赤になっているのがわかる。夢にまで見たあなたの問い掛けに、頷く事しか出来なかった。

こたつの向こう側にいたあなたが、私と同じ場所に入る。身体がくっつく。気持ち良い。

他にする事なんて何もないから。後はあなたに任せて、する事は一つ。

あなたと私の吐息が、部屋中に満ちて行く。



部屋の中には、あなたと私と、
何もかもに満足していた。家族も子供たちが孫を作り、健やかに育ってくれたし、変に真面目過ぎる事も無く、私はとても幸せだった。

妻も良くここまで寄り添ってくれている。何一つ不満なんて無かった。他人にとっては欠点と呼ばれるような部分も、自分にとってはいとおしいと思えてしまうのだから、不満なんてあろうはずがない。

若い頃はスリルを求めた事もあったが、老い先短い今となっては、ただただ家族が平和に楽しく、時には壁を乗り越えながら成長し経験を積んで行って欲しいと思うばかりだった。

最近とみに物忘れが激しい。頭に浮かんでいるはずの言葉が出て来ない。不思議に思った。それにそこかしこに痛みもある。一体私はどうしてしまったのだろう。



診察を受けてみたら、と妻に促された。もちろん言う通りにしたし、安心したかったのだが、逆に覚悟を決めるきっかけになってしまった。

病名は、認知症とガン。全身に転移していて、手の施しようが無いらしい。

特に思い残す事は無いのだが、容易に愛する家族に多大なる迷惑を掛ける事は明白だった。しかも、その先で家族が報われる事無く私は旅立つことになるだろう。

ふと夜妻と見ていたニュースを思い出した。現代はとても便利な時代だ。インターネットで調べ、準備をした。我が国では許されていないので、目的地へと赴く必要がある。幸い蓄えはあったので、家族全員のチケットを取れるような下準備をしておいた。

そこからは少しだけ時間が掛かった。通訳や担当の人間を呼んで手続きの確認。家族への説得。ありがたいことに反対してくれたのだが、時間を掛けて説得し、私の決断を理解してもらったのだ。

一番怖かったのは、痛みでは無く、愛する家族の事がわからなくなってしまう事。痛みだけだったなら、潔く戦う事を選択したかもしれない。しかしわからなくなってしまうと言う事は、本当に悲しい。私にはとてもではないが耐えられなかった。



夫は、本当に人生で最高のパートナーでした。家族全員のチケットまで用意してくれていて、私たちのすべきことは、夫の決断を飲む事だけでした。最後にはとても楽しい時間を過ごして、最後の確認をした後、夫は致死量の薬品入りシロップを飲み干したのでした。

とても安らかな、満足した笑顔で夫は旅立って行きました。家族たちは皆、泣いていました。そこに集まった誰もが、自分にとって最高の家族だと再認識した瞬間でした。



私は次の手を打った。マスコミを操作し、安楽死と言う選択肢を心の中に植え付ける事にした。私がいる間に実現するかどうかはわからないが、合法化する必要がある。

ありがたい事に我が国には古き武士道に基づいた死に美徳を見出す死生観がある。人権を逆手に取って法案を通せば、いつしか自らの判断で数を減らし、納得して天に召される事の出来る時代になるだろう。

人が選択すべき最期の決断。その一つが安楽死になる為に。
テレビを見ていて。新聞を見ていて。そして周りの多過ぎる旅立ちを見ていて。確信に近い不信感を募らせていた。

家族は世代が旅立つ時期なのだと言う。誰もが天災で済むはずの人災が引き起こした、取り返しのつかない過ちを、未だ解決すらしていないと言うのに忘れようとしていた。

いや、ただただ考えたくなかったのかもしれない。

先送りにしたからと言って現状が変わるはずも無く、日々過ちは肥大化し続けている。しかしながら誰もが話題に出さなくなった。危険なはずなのに。話題に出す事を愚かだと笑う人間すらいる始末。

この現状を見てそう思うと言うのなら、狂っているとしか自分には思えない。しかしなんら個人に手立てすら無いのは明白で、国が、政府が、焼け石に水のポーズだけを取っているのはこの国の…いやこの星の誰もが止める事すらできないのは明らかだった。



「これで本当に良かったのでしょうか…。」

「考えても仕方の無い事だよ。」

わざとらしいほどの政権交代は茶番劇。増え過ぎてしまった高齢者を支える若者の負担を減らす為に、腹黒い古狸達を説得、もしくはコントロールする事は事実上不可能だった。

必要悪と言ってしまえば言い訳になるかもしれない。しかし現状、多くの人間を欺き、高齢者の数を減らす事が、現時点での唯一の有効な方法だった。そうでもしなければ若者の未来を、私も含めた老害が暗闇で押し潰してしまうであろう事は、火を見るより明らかだった。

「誰だって人を殺したくは無い。だが、今どきの若者はなんて言えなくなるほどの、理不尽な状況が先に待ち構えているのがわかっていて、何もしないなんて事は出来ないだろう。」

多くの犠牲を払ってしまったが、これは未来を少しでも明るくするための英断。結果若者にも犠牲は出るかもしれないが、無駄な長生きなど、穀潰しも良い所だ。政府公認のすねかじりを増やす訳には行かない。

悪魔と呼ばれようとも、私の行動は全て間違っていないと考えている。いや、確信しているのだ。願わくば頼りがいのある若者が、多くこの国を支えて行って欲しいものだ。



タレントであるのを良い事に、好き勝手やって来た。正直もうやる事が無くなってしまった。未だ銭ゲバで貯め込むのもやめられないが、そろそろ世代交代。可愛い後輩達に稼がせてやらねばなるまい。

引退を決意していた時だった。タイミングの良さに神様を信じた。

「検査の結果、あなたの病名が分かりました。ガンです。」
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