完全フィクション
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
社長が突然亡くなった。
そこそこの規模である、ウチの会社を引っ張ってきた社長の経営手腕は、
同業者の別会社の社長からも評価されていた。
それだけに、突然の訃報でありながらも、葬儀にはたくさんの人たちが訪れた。
僕はただの平社員だったが、下っ端から見ても社長は凄いヤリ手だな、と思っていた。
当然僕も葬儀に参加した。皆口々に「惜しい人を亡くした」とつぶやき、
それが嘘でないことは一様にして読み取れた。
・・・しかし、ちょっとした違和感に気付いた。
訪れている人は、皆悲しんではいるのだが、泣いていない。
もちろん、僕もだ。家族ですら涙を浮かべはしているものの、
何だか冷静ですらあった。奥さんも同様だ。
「おじさんの会社の人ですか?」
1人の青年が話しかけてきた。・・・知らない顔だ。おじさん?社長の甥なのか?
「あ、いきなりビックリしますよね。すいません。
僕はおじさん・・・亡くなった社長の息子のいとこです。」
「ああ・・・このたびはどうも、惜しい方を亡くされて・・・。」
「会社の方ですか?」
「ええ。」
「不思議に思っていたでしょう?今。葬儀にしては皆が悲しんでいないな、と。」
・・・なんだ?心でも読めるのか?
驚いて呆気に取られていると、青年は言葉を続けた。
「伯父は、誰に対しても自分を優位に持っていこうとする人でした。
ここに参列している人の半分以上は・・・いや、もっとかな。
伯父を尊敬していながらも、常に自分を優位に持っていこうとし、
人を見下したような態度に嫌悪を示していたと思います・・・。」
青年は、葬儀を見つめながら言葉を続ける。
「その蓄積が、この葬儀の違和感の答えだと思いますよ。」
反論するつもりはなかった。家族のほうがはるかに僕よりも身近に接しているだろうし、
社長であるからには、そういった威厳と言うのも必要になってくるだろう。
事実、その社長の態度を疎んでいた人間は少なくはないはずだ・・・それが、家族であっても。
「別に伯父が間違っていたというつもりではありません。
ただ、伯父の態度からこういった状況を生み出しているとしたら、
本人が原因とはいえ、寂しいですね。誰に対しても優位に立とうとしていましたから・・・
それが自分の会社をここまで大きくしたんでしょうけど。」
言葉がなかった。僕も別に社長が嫌いなわけではない。
かといって、甥である彼の言葉を遮ったり、否定したりする理由が見つからなかった。
「そんなことを考えると、天はそう簡単に二物を与えないんだなぁと思いましたよ。」
そう、誰ともなく苦笑する彼の言葉は、葬儀中の夜空に消えていった。
そこそこの規模である、ウチの会社を引っ張ってきた社長の経営手腕は、
同業者の別会社の社長からも評価されていた。
それだけに、突然の訃報でありながらも、葬儀にはたくさんの人たちが訪れた。
僕はただの平社員だったが、下っ端から見ても社長は凄いヤリ手だな、と思っていた。
当然僕も葬儀に参加した。皆口々に「惜しい人を亡くした」とつぶやき、
それが嘘でないことは一様にして読み取れた。
・・・しかし、ちょっとした違和感に気付いた。
訪れている人は、皆悲しんではいるのだが、泣いていない。
もちろん、僕もだ。家族ですら涙を浮かべはしているものの、
何だか冷静ですらあった。奥さんも同様だ。
「おじさんの会社の人ですか?」
1人の青年が話しかけてきた。・・・知らない顔だ。おじさん?社長の甥なのか?
「あ、いきなりビックリしますよね。すいません。
僕はおじさん・・・亡くなった社長の息子のいとこです。」
「ああ・・・このたびはどうも、惜しい方を亡くされて・・・。」
「会社の方ですか?」
「ええ。」
「不思議に思っていたでしょう?今。葬儀にしては皆が悲しんでいないな、と。」
・・・なんだ?心でも読めるのか?
驚いて呆気に取られていると、青年は言葉を続けた。
「伯父は、誰に対しても自分を優位に持っていこうとする人でした。
ここに参列している人の半分以上は・・・いや、もっとかな。
伯父を尊敬していながらも、常に自分を優位に持っていこうとし、
人を見下したような態度に嫌悪を示していたと思います・・・。」
青年は、葬儀を見つめながら言葉を続ける。
「その蓄積が、この葬儀の違和感の答えだと思いますよ。」
反論するつもりはなかった。家族のほうがはるかに僕よりも身近に接しているだろうし、
社長であるからには、そういった威厳と言うのも必要になってくるだろう。
事実、その社長の態度を疎んでいた人間は少なくはないはずだ・・・それが、家族であっても。
「別に伯父が間違っていたというつもりではありません。
ただ、伯父の態度からこういった状況を生み出しているとしたら、
本人が原因とはいえ、寂しいですね。誰に対しても優位に立とうとしていましたから・・・
それが自分の会社をここまで大きくしたんでしょうけど。」
言葉がなかった。僕も別に社長が嫌いなわけではない。
かといって、甥である彼の言葉を遮ったり、否定したりする理由が見つからなかった。
「そんなことを考えると、天はそう簡単に二物を与えないんだなぁと思いましたよ。」
そう、誰ともなく苦笑する彼の言葉は、葬儀中の夜空に消えていった。
PR