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完全フィクション
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「暑いねえ。」

「暑いねえ。」

「ジュース飲む?」

「サイダーがいいなあ。」

「あるかな?」

「似たやつでも良いよ。」

隠れる場所の無いぐらい暑い日に、公園のベンチで休む事にしたけれど、休んでいるだけで体力を失いそうだった彼女との時間の為に、買い物を提案した。

さっき来た道に確か自動販売機があったはずだ。…あった。

「サイダー、サイダー、っと…あった。」

小銭を投入して一本。…そこで下心を沸かせた自分を、誰が責められよう。密かでささやかな企みを胸に、購入したサイダーを持って、彼女の元に向かった。

「はい、お待たせ。」

「ありがと。汗が噴き出て来ちゃう。」

「だから水分補給だよ~。」

ゴキュ、ゴキュ。と喉を鳴らして彼女が美味しそうにサイダーを流し込んだ。それでも、彼女はそんなに炭酸が得意なわけじゃなかったらしく、一休み。

「飲まないの?」

「飲むよー。」

「はい。」

おもむろに彼女に渡されたサイダー。彼女は、何も気にしていないのだろうか。それとも…。

「ありがとう。」

彼女からサイダーを受け取る。

「私が全部飲み切れないってわかってたんでしょ?w優しいな~相変わらず。」

逃げ道まで用意してくれたと考えてしまうのは、心が汚れているからなのかな。その言葉が彼女の本心からだったとしたら、やばいよ。惚れ直しちゃう。っと…。

「そういえば、炭酸好きだけどいつも飲み切れないってぼやいてたもんね。」

思い出した。

「うん…。」

「じゃ、いただきます。」

本当は手が震えるぐらい緊張してるんだけど、出来るだけ平静を装って彼女と目が合わないように、我ながらなんだか照れくさくて煽るようにサイダーを乾いた喉へと流し込む。

「…っぷはー!たまらないねえ、この一杯!」

「あんたは酒飲みかw」

何事も無かったかのように、サイダーを飲み干した。





一日遊び回って、彼女の笑顔をたくさん楽しんで。時間が来て、ちょっと残念そうで物足りなさそうな彼女を可愛いなと思いながら、ちゃんと家まで送った。

一人になった帰り道。自ずと思い出し笑いが込み上げる。実はさっき見てしまったのだ。サイダーのペットボトル越しに見えた、彼女の顔。

上目遣いで、間接キスをしている事を、どこか彼女も気にしていることに気付いたのだ。頬を赤く染めた彼女が見えた。

「あんなに美味しいサイダーを飲んだのは、初めてだなあ…。」

心に美味しい好きな人の照れた表情に染まった桃色サイダー。あの瞬間がまた味わえると良いな。
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「ねえねえ、ピンクと水玉、どっち好き?」

「何かさ、ピンクが好きなんだけど、ピンクって選ぶとちょっといやらしいイメージ。」

「じゃあ水玉?」

「自分の中では水玉ってなんかダサいイメージ。」

「ドット柄とか言って可愛いとか言われてるけどね。」

「言い方変えただけでしょ。あ、でもひらがなにするといやらしくないかも。」

「どういうこと?」

「ひらがなで、ぴんく」

「なんかバカっぽいw」

「仰る通りwでもいいなあ。ピンクよりぴんくかあ…。」

「桃色もなんかね。下心を感じます。」

「それはあなたに下心があるからだと思われます。」

「やめてください死んでしまいます。」

「死にはしないだろう羞恥心や後悔で。」

「仰る通りw」

「真似スンナ。」

雨上がりの帰り道。君と二人で。とりとめの無い会話をする。それはとても楽しくて嬉しくて。そんな時間がずっと続けば良いなあって思ってる。それを実現するには二人でずうっと留年しなきゃね。二人でずうっと…。いればいいのかな。

「なんかさあ。」

「何?」

「この時間がずうっと続けばいいね。」

「…私もそう思ってた所。」

良いのかなあ。二人でずうっと。一緒にいても。だって二人が同じ事考えてるんだから、何も問題無いよね?

一緒にいたいな。ずっと二人で。それって適わない事なのかな。難しい事なのかな。今はこんなに簡単なのに。こんなに二人で、二人ずうっと一緒に入れたらなあって、二人が思ってるのに。適わないわけないよね。だって二人が望んでるんだから。うん、大丈夫だよ。二人でいれば、きっと大丈夫。

「ずっとさ。」

「うん?」

「ずうっと二人でいようね。」

「…ね。」

死んじゃったらどうかとか、これから二人の進む方向が違ったらとか、そういう事は一切考えなかった。問題が起きたら二人で解決していけばいいんだもん。それだけのこと。二人でいる事を最優先していれば、きっとずっと、ずうっと一緒にいられるよね。

神様とかわかんないけど、何となく神様にお願いする気持ちになった。でも本当は、二人がお互いにお願いする事なのかもしれないね。だって神様がいたとしても、二人の事は神様の事じゃないんだから。自分たちの事は自分たちで決めるべきだよね。神様だってそう思うでしょ?

これからもずうっと一緒に。そればっかり頭の中で考えてた。それが一番重要で大切で。それが幸せで全てだった。湿気があるのに突き抜けるような青空と、モクモクとした白い雲が浮かぶ夏の日。
鬱々とした雨の中、窓際で一人、退屈さに身を任せていた。

この時間は何もない。アンニュイと言えば聞こえはいいが、結局のところ何もする事が無いだけで、かと言って何かする事を見つけようとはしていない。怠惰に時間を過ごしているだけなのだ。

自分自身、そういう過ごし方は悪いとは思っていない。生き急いで何になると言うのか。結局は人類皆自己満足。他人が個人の時間を害する事など絶対に許されないのだ。

人が集まれば、誰かが操作したがる。だがそれは、所詮いつか死んでしまう人間たちの中で、お山の大将を気取って何かをした所で、大したものは何も残らないのだ。自分自身が為すべきと思ったことに没頭して、誰にも迷惑を掛けず、誰も巻き込まずに生きている人間の方がいくらか上等に思える。変わり者は見ていて痛快で美しい。

なんて事を考えていてもこの時間に何か変化を与えられるわけでも無く。退屈を楽しむ事で人生に彩を付けているのだとでも思っていれば、誰にも迷惑を掛けずに生きて行く事が出来る。ただ、最期まで、と言うのはさすがに無理ではある。我が死体を放り出しておくわけにも行かないだろうから、天寿を全うするにしても、誰かしらがその始末を被らなければならないからだ。死んでしまっては別に後の事などどうでも良いとは思うのだが、気にはなる。

「あ~…やんじまったな。」

雨が上がると、何故か何かしなければいけないような気になって、支度をして、外に出る。多分コンビニか何かで何かしら買って、結局家に戻る事になるのだろうけれど。それこそ途中で車にでも轢かれない限りは、日常は続いていく。

誰にも邪魔をされないのであれば、それこそがささやかな幸せなのだろうと思う。異論を唱えるのは一向に構わないが、俺のいない所で勝手にやってくれ。何しろ面白い事や自分の時間を邪魔されるのが何よりも嫌いだからな。誰かの邪魔などしないから、俺の邪魔もさせない。ごくごく当たり前の事だ。何も問題は無いだろう。

人は人と関わりたがり、誰かの時間を食い潰そうと躍起になっている。それは見ていて本当に邪魔だなあと思うし、そういう人間たちはそういう人間だけで勝手にやっていればいいと思う。害するなら害されることも当然覚悟してでの事だよな?と答えを待たずにこちらも平気で邪魔をする事だろう。自分が大丈夫で他人はダメなんて理屈は通らない。エゴで生きて行く事は出来ないのだから。

ただ静かでいたい。
台の上の球突きに興じていても退屈を感じてしまう今日この頃。

女子の入ったプールの水を本当に飲みたいなんて人がいるのかなあなんてぼんやりと考えながら

「あ、でも塩素が入ってるから健康上は大丈夫なのだろうか。」

と呟いてみたりする。あまり塩素の強い水と言うのも何だか物凄く身体に悪そうな気がしてならないがその辺は頭の中と自分の違和感をスルーして口笛なんて吹いてみる事にした。

所が唇が乾燥しているからか上手く吹けないので、リップクリームを塗ってからなんだこれは水分では無いじゃあないかと、なんとなく自分のしたことがオカマかゲイの仕草である様な気がして個人的に気味が悪いと苦笑自嘲しながらも、何よりも私の容姿は中性的とは程遠い、かと言って中世の騎士、そして騎士道精神とはこれまた程遠いのでは無いかと自分を鑑みてはため息を吐くばかりであった。

初夏だと言うのに真夏日が続いたり雨が続いたり、なんだじゃあ梅雨かと考えるとそうでも無いらしく、天気予報の番組では梅雨入りでは無いと全否定されながらも、毎年事後承諾で嘘を吐かれていたなそう言えばと、見た目で選ばれたようなお天気キャスターが映る画面に白い歯を剥いてみるが相手に伝わる事も無いだろう。

だから安心して牙を剥こう。今この場に知人家族がいたら大丈夫かと心配されそうではあるが、何分この時間帯は孤独の予定なのである。別に寂しさも感じないが退屈は感じている。

コップに氷を入れて新しく発売されたサヰダアなんぞを注いでみると、そういえば先刻のプールを炭酸や氷で満たしてみたらどうなるであろうかと妄想を巡らせる。炭酸はマッサージのような効果を得られそうではあるが、氷は間違いなく風邪を引いてしまうだろう。

それではサヰダアで満たせばいいと頭に電球を飛ばしてみるも、砂糖が入っているのだ、べとべとで気持ち悪くて仕方が無いだろうと、なぜか自分でもわからない落胆ぶりに少し可笑しくなってみた。

カランとコップが氷の溶けた合図をくれたので、頃合いかと冷やして無かったはずのサヰダアを一気に喉へと流し込む。快感だ。炭酸の刺激が喉を取り過ぎて、暑さと湿気で不快だった脳内にそよ風を吹かせてくれる。

「液体なのになあ。」

喉を通すにしても中に入るにしても水分は空気中に混ざらなければ快適な時間を与えてくれるものなのだなと感心する。何しろ生物には無くてはならないものなのだから。だったら空気中でも頑張れ。
たとえば人の評価を得たとして、本当の自分なのかと問われると、全く以てそれは偏見でしかないし、主観でしかない。その場その時に見えた『私の欠片』であり、それで全てを判断されたくはないが、そこでしか接点の無い人間にはそれしか判断材料が無いのだから、致し方ないと言うおはなしになってくる。

良く好みを語るようなミーハーな文章や女性男性たちの会話の中で、ギャップと言う言葉が出てくる。

「怖そうに見えて実は優しい」

「無趣味だと思ってたけど多趣味だった」

「普通の人だと思ってたのにマニアック」

「優しさだけじゃ…と落胆していたら叱ってくれた」

要するに刺激がほしいと言う事なのだろう。オルタネイティブな性格や資質では飽きてしまうと、自分の事は棚に上げて、のたまう事評論家の如し。

恋愛自体に刺激を求める輩も多いので、こればかりは趣味趣向の性質的に必然なのかもしれない。右へ倣う事を嫌う心こそが、刺激を望んでいるのだと矛盾を内包しつつ自問自答してみたりして。

話が脱線してしまったが、要するにこの文章を読んでくれているあなたがたにとっての感じる『私』は真実でもあり、欠片でしかないと言う事になる。

これはとても面白い事だ。もしかしたら想像されている人格とはまったく違うかもしれないのにそれは現実的な事実、実感として存在している。

一体私はどういう存在なのだろうと考えると哲学的になって、個人的には途端にうさんくさく感じてしまうのも失笑を込めて自嘲気味に吐露しよう。

言葉と言うものはコミュニケーションに必要な道具だが、同時にそこに必ず勘違いが生まれていることを前提として頭の片隅に置いておかねばならない。

そうすれば相手にがっかりする事も無くなれば、「こんな一面もあったんだ」と素直に相手に対する敬意と新たな喜びを生み出す事が出来るのだろうと思う。

そう簡単に偏見を払拭するのは容易では無いが、意外とそれが相手に対する好意への要因となるかもしれないと予測すると、それは非常に重要な事のように思えてくるから不思議だ。

もし興味があるなら、私の、そしてあなたの『欠片』を拾い集めて、パズルのピースのように繋ぎ合わせて見ると良い。ひとつ繋げては全体を眺めて、変化を楽しむのもわびさびがあって良いのかもしれない。決め付けるのは簡単だが見届けて楽しむ事で相手も知れるならこんなに良い事は無いんじゃないかと思う。

良い所だけを見つけるのは難しいけどね。
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