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深夜に創作をしてはいけないと言われた事がある。
ロマンチックな方へと偏りがちになるからだ。

書斎とも呼べない、子供の頃買ってもらって
何十年も使い古した机の上で頭を捻った。

「複合的アイデアって…どうすりゃいいんだ…。」

そもそも、複合的なアイデアとはどういうものか
多分私には理解出来ていない。素人の浅知恵、
下手の横好き。自分を蔑んだ所で答えは出ない。

「お悩み中ですなー。」

いつも家に勝手に来ては勝手に帰る幼なじみがやって来た。

「複合的なアイデアとはなんぞや!」

「なんだあ?また例の小説かあ?」

買って来たプリッツのサラダ味の袋を開けて、
煙草よろしく口の端に咥える幼なじみ。
何かを企んでいるようなニヤリとした顔に
見えて吹き出しそうだったが、そこは堪えた。

「アドヴァイスを頂いたんですけどね…。」

「自分の解釈で書いて見ればいいんじゃねーの?」

ベッドに寄り掛かり、膝をポンと叩いて提案して来る。

「ワンアイデアの作品が多いと言われたんだ。自分なりに、勢いをつけて書く思い付きの文章が、一番ナチュラルで美しい物が書けると思ってたんだ。」

椅子から立ち上がり、幼なじみのプリッツを一本拝借。
幼なじみは文句も言わず、軽く頷いて許可を下す。

「でもそれが単純過ぎて深みが無いと思われたのかも。」

「ま、そうやって試行錯誤して書いてりゃいつかはたどり着けるんじゃ無いの?」

二本目をヒラヒラと虚空に揺らしながら、のたまう幼なじみ。

「失敗を恐れて立ち止まる事の方がマズイだろ。」

幼なじみの話を聞きながら、自分の椅子に戻る。

「いつものやり方が一番気楽で早いんだけどなあ。」

頭の後ろに両腕を回し、椅子でウイリーするように
バランスを取って、天井を見上げながら思案を巡らせる。

「何事も経験。自分の苦手なスタイルでやって見るのも、何か発見があるかもよ」

いつの間にか数本同時に口に咥えた幼なじみ。
ヘビースモーカーかお前は。いや、この場合
プリッツァー?いやイーター?そんなの漫画でいたな。

「ほいじゃまあ、頑張ってみますかね。」

フンッと頭上後部に両手を伸ばして伸びをする。

「おお、頑張れ頑張れー。」

俺が書く体勢に入るのを見越してか、幼なじみが
側にある本棚に手を伸ばす気配を感じた瞬間、
それは突然にして必然、見事な弧を描いた。

ゴスン!

後ろにあるテーブルに、往年のFMWばりに危険な
一人バックドロップを投げっぱなしで放つのだった。










チカチカして見えなかった視界が回復して来た頃、
目に飛び込んできたのは、盛大にプリッツを
撒き散らしながら爆笑する幼なじみ。

笑いたいなら笑うがいいさ。でもな、
その口から吐き出した無数のプリッツは、
ひとつ残らず綺麗に片付けてもらうからな!

コンチキショーめ。
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37
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1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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