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墓参りの道すがら、休憩を取った道端に猫じゃらしが揺れている。
こんなに間近で、頭が空っぽのまま見たのは久しぶりだ。

休憩を終えて出発すると、車窓から見える焔の様な稲穂。
こんな穏やかな気持ちで自然に触れるのは久しぶりだ。

ワクワクでも、虚無感でもなく。安心でも、悲しみでもなく。
心に何もない状態で見るのは、非常に美味しい。
目に入る光景をあるがままに受け入れる。
本来の自然な自分になんだかほんわか和んだ。
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「こんにちはぁ。」

何やらせっせと納屋の掃除をしているおじさんに声をかける。
麦わら帽子が似合っているなぁ。

「やぁ。どうしたんだい?」

「いえ、ちょっと近くに立ち寄ったもので。」

「ちょっと待っててね。」

首に巻いたタオルで汗を拭きながら
おじさんは家の奥へと引っ込んでいった。

ほどなく麦茶を持ってきたおじさんに、
納屋の奥の縁側へと通された。

「もう秋だなぁ。」

実はおじさんとは直接の交友があるわけではなく。
この家に以前住んでいたおばあちゃんと
よくお話をしていたものだった。

おじさんと葬儀に参列した時に
初めて顔を合わせたのは春のこと。

特にお互い話すこともないのだけれど、
なんとはなしに近くを通る時になって覗いていく。

おじさんも嫌な顔ひとつせず出迎えてくれる。
小一時間の短い時だけれど、縁側でそれとなく
過ごすのが通例となっている。

一言二言交わすと、後は景色を眺めるだけで終始無言。
麦茶を飲み干して、しばらくすればおいとますることになる。

理由なんて、どこにもない。
すれ違った先に得た、ちょっとした人情。

「ごちそうさまでした。おいしかったです。」

「またいつでもおいで。」

会釈しておじさんの家を後にした。
戦争のない世界にしたい。

誰も傷つけたくないし、
誰にも傷ついて欲しくなんかない。

本当は憎みたくもないし、
頭の中を怒りなんかで満たしたくはない。

みんなが仲良く、平和に暮らす世界。
それぞれの主張や思想を尊重し、
お互いを敬い、差別もなく。

本当の意味で心の底から
お互いを平等に見つめ合える世界。

理想論かもしれないけれど、
この地球上の全てが平和で。
争いごともなく、愛し合える。

負の感情もどこかへ置き去りにして。
ただただ生きることを幸せに思う。

楽園のように輝く、そんな世界が





そんな世界が





あ る わ け ね え だ ろ

少しだけ人生の路地が交差点として交わったあの人は、
私がひとつの場所に留まっていないことと同じように
あの人はあの人で別の旅路を一歩一歩進んでいる。

あの人が変わっていくということは、まがりなりにも
成長しているということ。『無駄なものなんてないんだよ』
とは、とある作品のセリフ。なるほど、経験は全て糧となる。

糧となるとカテドラルって似てませんか?
まぁ、それはさておき。

私は浮かんだり沈んだり。一定のモチベーションでは
いられませんが、自分の欠点や反省点を自分なりに
解釈し、三歩進んで二歩下がりながら歩いています。

しかしながらただ進み続けるよりも失敗と試行錯誤、
そして懊悩を繰り返していくことこそ、背骨の幅を
太くしていくことだと思うのです。

研ぎ澄まされた刃は、折れやすいから。
それは一部分だけで後は太くした方がいい。

ゴールすらも次々と作り出して目指すのかもしれませんね。
だからこそ、人は成長するのだと思います。
家のベッドで寝ていたはずなのに、
目を覚ますと明らかに外にいた。

起き上がると、目の前に見たことのない他人がいる。
よく見ると死んでいた。でも死体は語りだした。

「やあやあ。よく来たね。」

来たねも何も、寝ていただけなのだが。

「何をそんなに怖がっているんだい?」

怖がっているのだろうか。特に何にも感じていない。
日常からあまりにもかけ離れすぎて、実感がないから。

「人に愛されないと自分を保てないのかい?」

誰のことを言っているんだ?
一人の時間を大事に感じる自分に、
そのセリフは余りにも的外れだ。

なんてことを考えていると、後ろに気配を感じて振り返った。
女性が眠っている。そうか、彼女に話しかけていたのか。
でも彼女は眠っているのだから、聴くことは出来ないのに。

何やら女性に対して死体は語り続けていたが、
飽きたので聴く耳も持たずに辺りを歩いてみることにした。

よく見ると道端には死体が累々と横たわっていたり佇んでいたり。
それぞれが何かに話しかけているようだが、相手がいない。

「憎しみを一体誰に向けているんだい?」

「身体の繋がりでなければ実感を持てないのかい?」

「求めるものすら、あなたにはわからないのかい?」

「自分に言い聞かせても、考えがまとまらないんだね。」

「結局はただ、ありのままに欲望を満たすだけの人生。」

「中身がないから、浮かれたり蔑んだり出来る。」

「自分という存在だけしか考えられない。」

「とても哀れだね。それをあなた自身だけが気付かないだけで。」

そこらじゅうで死体の独り言が聞こえる。
それはとても耳障りで、心地良い。

しばらくすると扉が現れた。かと言って扉だけで家があるわけでもなく。
この扉の向こうに何があるのだろうか。興味本位のままに、
その扉を開けると、向こう側は真っ暗だった。

覗き込んで、一歩、踏み入れる。
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1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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