完全フィクション
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男はここに半年前、死体を埋めた。
カッとなったとはいえ、殺人を犯してしまったのである。
今のところニュースで報道されている気配はない。
誰にも見られていない・・・はずだった。
犯人が現場に戻ってくるというのは本当だな・・・
男はそう思いながらも、埋めた場所が気になって深夜車で山奥に来ていた。
埋めた場所は覚えている。まさか目印をつけるわけにもいかないから、
自分でも見つけるのは容易ではないと思っていたが、思った以上に
男の罪悪感は強かったようで、風景をまるで写真に写したかのように
覚えていた為、埋めた場所を見つけることが出来た。
きっと他人から見ればなんてことはない山の風景なのだろう。
夜目が慣れてきたとはいえ、暗闇の中でなんの変哲もない場所を
見つけ出すのだから、男の記憶の中に相当強烈に残っているようだ。
・・・大丈夫。掘り返されたりはしていない・・・
見た目は何の変哲もない、埋めた場所に変化がないのを確認し、
きびすを返したその時だった。
「こんばんは」
この時の男の心臓は、外に聞こえるぐらいにドキッとしただろう。
「こんな夜中にこんな山奥で何をしてらっしゃったんですか?」
それはこちらが聞きたい。男は心の中で思った。
見たところ、おとなしそうな青年がこんな山奥で何をしているんだ・・・?
そして、意地悪そうな笑顔を、青年は浮かべた。
「まさか、埋めた死体がどうなってるか確認しに来たんじゃないですよね?」
男の心臓は、まるでエンジンのように激しく鼓動を打ち始めた。
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