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完全フィクション
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ふいに感じた鈍痛と共に、熱さを感じた。

後ろを振り返ると、背中に何かを刺された様で、
見た事もない女性がこちらに身を預けている。
離れると、彼女の両手は俺の返り血で真っ赤だ。

「誰だよ(笑)」

我ながらこの場にそぐわぬ力のない笑みを浮かべると、
背中に刺さっているであろうナイフを両手で確認した。
あー・・・・。こりゃ思ったよりでかくて深く突き刺さっている。

「とぼけないで!私を騙したくせに。」

彼女に罵倒された。こんな女性は見た事も聞いた事もない。
ああ、言葉が不自然か。よく見ると自分の両手も真っ赤。
彼女の両手も真っ赤。お揃いだね。なんて考えてる場合じゃないか。

「知らないよ(笑)人違いで人刺すなよ全く・・・・・。」

何で刺されたのに俺笑ってるんだろう。
あまり非日常的な頭のおかしい逆恨みが
滑稽で仕方がないんだろうな。

何しろ彼女が恨みを向けるべき人間は無傷のまま。
彼女の恨みは晴らせないは、確実に前科者だからなぁ。
哀れすぎて笑えてくるのかもしれない。

「ふざけないで!」

ああ、言葉は通用しそうにない。他人に迷惑かけるなよ・・・・。
しかもこんな形で。これって俺死ぬんじゃね?
おいおい人違いで危害加えられて死ぬのかよ。
たまったもんじゃないな。死人に口無しで
全部俺のせいにされたりしてな。

根本的解決にはなってないからそんなことをしても
何の意味もないけど。あー視界が白けて来たよ。
本格的にヤバイなこりゃ。彼女はなんか泣き喚いてるけど、
聴覚も薄れてきたみたいでなんだかよく聞き取れない。

聞き取れたとしても人の話を聴かずに自分のことだけ
べらべらしゃべってる奴の聞く耳なんて持つ気もないけど。

次に起きた時は、病院か、死後の世界か。
自分一人で賭けてみるのも面白いかもね。
意識も遠のいてきた。案外冷静なもんだな・・・・・。






・・・・・・・おやすみなさい・・・・・・・。
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「触らないで」

彼女は言った。もちろん、私に向けてではなく、この世の全てに。
悲劇の主人公を気取る人間と何度すれ違っただろう。
手を差し伸べようかとも思うが、本当に絶望したこともない
人間の甘えから来るひとりよがりな独り語りにうんざりする。

もちろん人と人とは比べられないものかもしれないけれど。
果てなく気持ちが悪いと思う。幸せに囲まれているくせに。
手を差し伸べられてその手を払っても、なおかつ支えてくれる
そんな人間に囲まれることの幸せを、理解することすらしない。

所詮はうわべの付き合いを求めているのであって、
形式的ではない繋がりを求めているわけではない。

何の気兼ねもなく、安心できる空間なんてなかった。
それが彼女には、まだまだ本当の意味でわかっていない。
彼女のいる空間には、まだかすかにも幸せがあるから。

羨むとか、そういうことではなく。事実を受け止めきれずに
悲しみたがる神経が理解できない。ただの茶番。
笑えることがどれほど大事なのか。泣けることが
どれだけ大切なことなのか。知ることすらしない。

形式的に理屈だけで理解しようとしているだけで、
その本質には絶対に目を向けない。それならば、
放っておけばいいと思う。誰かが必ず彼女を助けるから。

「触らないで・・・・か。」

その言葉は本当は私が言うべきであって、
あなたのための言葉じゃない。

でも、その言葉を発することの出来ない
そんな苦しみすらわからないくせに。

あなたが見ている相手は、決して一人ではないのにね。
代わりがいくらでもいるような人間との付き合いが、
不要であるとは言わないけれど。

絆を貫き通すための努力すらしなかった人間に
本来ならば信頼を求める権利すらないと言うのに。
薄ら寒いその光景を横目で眺めながら、
また一人、真横をすり抜けて通り過ぎた。
アーティストの楽曲を『自分のことではないか』と
勘違いするファンがいるように、今僕が描いている
キャンバスに叩き付けたアートも『自分のことのようだ』
と呟く見物人もいる。僕は自分のために書いているのに。

ここに並べ立てられた作品群はリアルであって
フィクションでもある。全てが散りばめられた欠片
を思うがままに再構築して形にしたもの。
ただ、それだけ。

この作品群を僕自身として捉えること自体、
作品そのものの意義を大きく見失っている。
そのこと自体は別に構わないが、非常に愚かだ。

誰かに向けたものでもなく。自分のために描く。
それを自分のことだと捉えるのは一向に構わないが
それは個人個人のエゴでしかない。驕りでしかない。

そして自分のことだと勘違いしている人間は、
怒ったり、喜んだり。誰を相手にしているのか
知らないけれど、当の作者からすると非常に滑稽だ。

作品を通して自分自身を見つめ直し、戦う。
確かにそれこそがアートのあるべき姿なのかもなと
キャンバスの前でペンキだらけで一息ついて、
缶ジュースのプルタブを開けながら苦笑した。

矛盾が本質を導き出すなんて、なかなか粋だね。
「文章が好きだから小説をよく読むの。」

彼女は何とはなしに呟いた。

「漫画は読まないの?」

「読まない。」

「なんで?おもしろいのに。」

「なんとなく、かな?」

「俺はやっぱり漫画を読むよ。
教科書で教えてくれない大事なことも
漫画で学んだことは多いし。
もちろん音楽もそうだけど。」

「ドラマとかは見ないの?」

「やっぱり媒体としては漫画が一番しっくり来る。
拘束時間が嫌いなんだよね。
映像だと没頭しちゃうから。

小説も稀に読むんだけれど、
やっぱり読んでる量は
漫画の方が圧倒的に多いかな。」

「私は小説。あなたは漫画。不思議ね。」

「育って来た環境が違うから、てやつ?」

「そうかもしれない。」

そしてまた二人は無言の時を過ごした。
性行為や男女関係を人生の中心に置くと、
それだけで破綻する度合いはグンと増す。

適合するパートナーを探すのは至極当然のことだが、
自分の価値観を相手に押し付けて生きることほど
醜いことはないし、なんら意味も持たない。

また、常識外のことを『価値観の違い』で
片付けることも、愚かなことでしかない。

お互いの思いやりと譲り合い、そして見返りを求めない
愛情こそが本来の絆であり、繋がりであると言えよう。
一方的な感情の流れは、兎にも角にも破滅を招く。

それに気付かない限りは、同じことの繰り返し。
いくら理屈では片付けられないと言っても、
ある程度のすり合わせは絶対不可欠なのだ。

人を憎むことよりもまず自分の
言動を思い返してみるといい。

そこで気付けるような人間なら
同じ過ちを繰り返したりはしないはずだ。
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1987/01/14
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自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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