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ねぇ

私を覗いて楽しい?

ねぇ

私を騙して楽しい?

ねぇ

私を傷つけて楽しい?

ねぇ

私を苦しめて楽しいの?



「フフ・・・・。」

ここまで書き終えて私は、微笑んだ。
自分の状況があまりにもおかしかったから。



私を覗いて騙して傷つけて苦しめて来た
あなたが私を見てどう思うのか楽しみだわ。



最後にあなたの名前を書いて、
汚れないようにビニールで包む。

思いを込めて触れるだけで切れるほどに
研いだ刃物を、頚動脈に当てて思いのまま引いた。
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私は自殺するつもりで、鋭いナイフで手首を切り続けた。
馬鹿みたいなためらい傷を作るような真似はしない。
最後には目の前にある崖から飛び降りようと思う。

痛みは痛すぎてなんだか麻痺してきた。
骨も見えたがゴリゴリと骨を切断する。
もう少しで皮一枚というところまで切り裂いた。

このままでも出血多量で死ねるだろうけど、
念には念を入れて飛び降りることにした。

いざ、飛び降りようという時に後ろから呼ぶ声がする。
私を愛してくれた人だ。私を愛しているのなら、
私の決断を鈍らせないようにして欲しいのにな。

予定通り、私は飛び降りる。
間一髪、私の手を掴む私を愛してくれた人。
でもね、蜘蛛の糸じゃ私を助けられないんだよ。

骨さえも切断した私の腕は千切れて、
手だけをあの人の手に残して、私は生涯を終えた。
カジモドは自分の心が美しいと思ったことがあっただろうか。
思ったことがあるのなら彼の心は醜いだろう。
自分の行動が正義と信じて疑わなかったフロローのように。

『鐘』である必要なんてないじゃないか。
信頼を手に入れて、目的を果たした彼にとって
名称など小さな問題に過ぎない。

ユーゴーもヴィクトルもラヴァーンも
愛するエスメラルダや良きライバルである
フィーバスも同じことを思っていたはずだ。

そう、胸を張れる生き方をしていたのならば
ただの『せむし男』だって構わないのだ。

心が美しくないとしても、カジモドのような
人間でいられたなら素晴らしいことだ。
きっと皆『せむし男』になりたがるはずだ。
さらさらと流れる小川を見つめていると、
足を滑らせて小川に踏み入れてしまった。

何とはなしに川沿いに辿り着いた所で靴と
靴下を脱いでいたので、裸足ではいたのだが。

「冷たっ。」

思っていたよりも水は冷たく、澄んでいる。
ゴツゴツとした石の感触が足裏を伝う。

するりと、水面をさえぎる足首の間を
魚がゆうゆうと通り過ぎた。

「気持ちがいいな。」

秋だと言うのに水は冬のように冷たい。
風邪を引いてしまうかなと、考えながらも
なんだか色々な事柄が忘れられるような気がしていた。

頭の中を空っぽにして、小川を眺める。
珍しく空は雲ひとつない青空で。
何者にも邪魔されない空間が、
心を洗い流してくれるかのようだった。

ふと首を回せば、森林の生い茂る風景も目に入る。
もちろん、この自然すらも人の手によって創られたものだが。

目を閉じて、水の流れと音を楽しんだ。
気の留めていなかったせいか、小鳥のさえずりや
木々のざわめきがこの耳に流れ込んでくる。

そう、まさに水流のように。

リセットは出来ないけれど、焼け石に水でも
心に良い作用をもたらしたのだなと実感した。
車を走らせながら片腕を出していたら、
いつの間にか肩から先がなくなっていた。
血がドクドクと噴出しているが、悪い気分
ではないのでそのまま放置しておいた。

だんだん血が足りなくなってきたのか、
なんだか寒くて眠くなってきたので、
人気のない脇道に車を止めた。

座席を倒して横になる。その間も
肩口からどんどん血は失われていく。

臙脂色のシャツだから目立たなくて良かった。
車内が汚れるのは仕方がないか。

目を閉じると、今までのことが
走馬灯となって脳裏をよぎる。

不思議と救急車を呼ぶ気にはならなかった。

意識も失いかけてきたころ、真っ暗闇の中で
血流もだんだんと落ち着いてきていた。そろそろ
身体の中がからっぽになりつつのあるのだろう。

あ、でも致死量は三分の一だっけ?
そうするとからっぽなわけではないな。

まぁどうでもいいか。どうせ終わりなんだし。

特にこの状況を改善しようとも思わず、
薄目を開けて何も考えずに時を待った。
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耕助
年齢:
37
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男性
誕生日:
1987/01/14
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趣味:
音楽鑑賞
自己紹介:
夢人に付き合わされた哀れな若輩者
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