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私は、父に犯され続けていた。

幼少の頃から、それが当たり前だったし、
かと言って嬉しくも気持ち良くも無かった。
子供ながらに、家族だから仕方が無いのかなと思っていた。
他人に他言してはならないと言う父の言葉を守り続けた。

時折繰り返し求める父のせいで、痛くなって
病院に行ったりもした。妙に目立たない、怪しい病院だった。

私には母がいなかった。だから、割と早くから家事全般は
こなせるようになった。父に褒められて、悪い気はしなかった。

母は私を産んで死んでしまったそうだ。
最初からいないから寂しくもないし、親と言えば
父が出て来てくれるので、特に不便さを感じた事も無かった。

学生になって、私に恋人が出来た。初めての経験だった。
身体を重ねる事に嫌悪感は無かったし、そういうものだと
知識では理解していたので、無難にこなした。

ペアのペンダントも買ってみた。私がハートの鍵で
彼がハートの錠。二人で一つ。繋がりを示すには充分だった。

ある日、彼に言われた。

「君は、本当に僕を愛しているの?」

何故そんなことを言うのかわからなかった。
身体の関係もあり、多くの時間を過ごしている。

彼と付き合い始めてからは父に抱かれる事も無くなった。
拒否し続けているので、暴力は増えていたが、痣が出来る程度で
彼への誠実さが守れるなら、特に苦痛を感じる事は無かった。

彼は私を心配していたが、大丈夫、心配ないと彼をなだめた。
最近、左手首に包帯が巻かれている事が気になったが、
話したく無い事を詮索しても失礼かなと思い、聴かなかった。

ある日、家に帰るとたくさんのパトカーと野次馬に囲まれていた。
当然家には入れない。警察に連れて行かれて話を聴いた所、
私のいない間に彼が父の元を訪れ、父を問い質し、
事実を知った彼が父を殺してしまったのだと言う。

彼は彼で、抵抗した・・・と言うか半ば一方的に半殺しに
した父の暴力で、重症になってしまったと言う。

彼も父も、私のいない間に勝手な事をしてくれたものだと苦笑した。
警察に気をしっかり持ってと言われたのだが、特に動揺も無かった。

彼の意識も戻らないし、父もいなくなってしまったので、
つまらない人生だなと思った私は、首を括る事にした。
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「ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷらんらんらん♪」

「懐かしい歌歌ってるなあ・・・。」

近所の子供たちが嬉しそうに合羽と長靴を着けて、
水溜りを飛び回りながら歌っていた。

「雨が楽しいなんて気持ち、俺にもあったかなあ・・・。」

思い出してみても、思い当たる節が無い。
と言うか実は、子供の頃の記憶は無い。
特に何があったと言う訳ではないのだが、
記憶喪失のように学生時代まで丸々忘れてしまった。

だからと言って別に何か辛い思いをしたと言う訳でもなければ
孤独だったわけでもいじめられていた訳でもない。

思い出す事は出来ないが、平々凡々な生活であった事は
実感としてある。家族円満。疎遠ではあるが両親も健在だ。

ただ、何か忘れているような気がしてならないのだが・・・。
まあ忘れてしまうような事なら、さして重要ではないのだろう。

コンコン。

ドアをノックする音に、玄関を開けると、友人たちがやって来た。
友人たちは入れ替わり立ち代わり、様子を見に来てくれる。

親のすねかじりであるニートな俺を面倒見てくれるのだから、
何しろ素晴らしい仲間たちだ。いつも通り馬鹿話をしては笑い、
散々世間話から政治に至るまで華を咲かせて帰って行く。
親の金ながら俺はご馳走でもてなし、後片付けをする。

いつの間にか左手首に巻かれている包帯がかゆいが、
何かしら傷が付いているのだろうから、掻かない方がいいのだろう。

洗い終えて一息付き。いつの間にか首に掛けられている
柄にも無いハートの錠型ペンダントを指で弄ぶ。

今日も幸せな一日だった。

何一つ不自由無い生活、規則正しい毎日。些少の怪我はあっても、
特に病気をしている訳でも無い。平穏な気持ちで、眠りに付くのだった。
深夜に創作をしてはいけないと言われた事がある。
ロマンチックな方へと偏りがちになるからだ。

書斎とも呼べない、子供の頃買ってもらって
何十年も使い古した机の上で頭を捻った。

「複合的アイデアって…どうすりゃいいんだ…。」

そもそも、複合的なアイデアとはどういうものか
多分私には理解出来ていない。素人の浅知恵、
下手の横好き。自分を蔑んだ所で答えは出ない。

「お悩み中ですなー。」

いつも家に勝手に来ては勝手に帰る幼なじみがやって来た。

「複合的なアイデアとはなんぞや!」

「なんだあ?また例の小説かあ?」

買って来たプリッツのサラダ味の袋を開けて、
煙草よろしく口の端に咥える幼なじみ。
何かを企んでいるようなニヤリとした顔に
見えて吹き出しそうだったが、そこは堪えた。

「アドヴァイスを頂いたんですけどね…。」

「自分の解釈で書いて見ればいいんじゃねーの?」

ベッドに寄り掛かり、膝をポンと叩いて提案して来る。

「ワンアイデアの作品が多いと言われたんだ。自分なりに、勢いをつけて書く思い付きの文章が、一番ナチュラルで美しい物が書けると思ってたんだ。」

椅子から立ち上がり、幼なじみのプリッツを一本拝借。
幼なじみは文句も言わず、軽く頷いて許可を下す。

「でもそれが単純過ぎて深みが無いと思われたのかも。」

「ま、そうやって試行錯誤して書いてりゃいつかはたどり着けるんじゃ無いの?」

二本目をヒラヒラと虚空に揺らしながら、のたまう幼なじみ。

「失敗を恐れて立ち止まる事の方がマズイだろ。」

幼なじみの話を聞きながら、自分の椅子に戻る。

「いつものやり方が一番気楽で早いんだけどなあ。」

頭の後ろに両腕を回し、椅子でウイリーするように
バランスを取って、天井を見上げながら思案を巡らせる。

「何事も経験。自分の苦手なスタイルでやって見るのも、何か発見があるかもよ」

いつの間にか数本同時に口に咥えた幼なじみ。
ヘビースモーカーかお前は。いや、この場合
プリッツァー?いやイーター?そんなの漫画でいたな。

「ほいじゃまあ、頑張ってみますかね。」

フンッと頭上後部に両手を伸ばして伸びをする。

「おお、頑張れ頑張れー。」

俺が書く体勢に入るのを見越してか、幼なじみが
側にある本棚に手を伸ばす気配を感じた瞬間、
それは突然にして必然、見事な弧を描いた。

ゴスン!

後ろにあるテーブルに、往年のFMWばりに危険な
一人バックドロップを投げっぱなしで放つのだった。










チカチカして見えなかった視界が回復して来た頃、
目に飛び込んできたのは、盛大にプリッツを
撒き散らしながら爆笑する幼なじみ。

笑いたいなら笑うがいいさ。でもな、
その口から吐き出した無数のプリッツは、
ひとつ残らず綺麗に片付けてもらうからな!

コンチキショーめ。
「キミがやってたSNSのサイト、あれどうなった?」

「訪問者が少なくてね。閉鎖する事にしたよ。」

「勿体無い!せっかく作ったのに。」

「いやいや、無料じゃないからね。慈善事業でやってるわけじゃないから。キミみたいな反応する人も多いんだけどね。何の変わり映えもしない、更新も無いサイトなんて見る気ある?」

「そりゃあ無くなるよね。」

「キミも義理で登録してはくれたけど、見てないだろう?」

「見て無いねw」

「そんなもんなんだよ。他人の更新を待つだけじゃ、そのまま廃れていくだけ。別に強制じゃ無いんだけどね。」

「マイペースでも、何かしら更新したほうがいいって事ね。」

「そうだとありがたいね。管理人だけで出来る事なんて限られてるし。やっぱり登録している人たちが動いてくれていないと、存在意義は無くなってしまうんだよ。」

「なかなか難しい事だけどね。続けるのって。」

「でも、SNSにしても、サイトにしても、ブログにしてもさ。更新ありきなわけじゃない?発信しなければ、何の意味も無いんだよ。」

「昔取った杵柄じゃ飽きるもんね。」

「ROM専の人も大事なんだけどさ。それだったら俺のブログでいいわけじゃない。みんな惜しんでくれるのはありがたいんだけど。」

「ネット上なのに人間関係もめんどくさかったりしてw」

「それも問題提起としてはあるよ。だってPCで繋いでると言っても、向こうにいるのは人間なわけだし。」

「顔が見えないからと言って、無礼千万じゃそりゃあ人も来なくなるよね。」

「何だか勘違いしてる人が、文句ばかりで更新して無いと、ただただ人を遠ざける事になる。」

「管理者としては嫌がらせ以外の何物でも無いねw」

「全くだよ。『嫌なら見に来なければいいだろう』と、言いたくない台詞まで言わなきゃいけなくなる。」

「管理者って色々大変なんだなあ。」

「そういう人たちも、登録してくれてる人だから、邪険にしたく無いんだけどね。大切だから。でもね、いくら『人の自由』だからと言っても、誰かに迷惑を掛けてる時点で、それは傲慢でしか無くなるんだよ。なかなかその辺の線引きは難しいんだけどね。」

「それぞれ仮想パーソナルスペースと主義主張は違うだろうからなあ。」

「登録してる人全てがそれぞれバラバラに更新してくれると体裁は保てるんだけどさ。」

「反応が欲しい人はなかなかもらえないと飽きそうだしね。」

「それもある。でも、発信を続けなければ反応なんてもらえるわけが無いんだよ。」

「そうだろうね。」

「ここから先は、個人的見解になるけど。更新ってのは、『他人の為』じゃなくてあくまで『自分の為』にするものなんだと思うよ。」

「そこで関係無いやつにあーだこーだ言われたら嫌気も差すだろうねw」

「うん。だからこそ、うまくやって欲しいなあと思うよ。特に現存してるサイトはね。」

珈琲を煽りながら、行きつけの喫茶店でため息を一つ。キミの苦笑が、話題を締め括った。
「あなたに、抱き締められたままでいたい。」

夜空の下で独り想いながら、
積み重ねて来た完成しない
努力を思い返し、吐息。

部屋の明かりを消せば、
外に見えるのは街の灯り。
私にはいつもより暗く見える。

秒針の刻む音を耳にしながら、
なんて静かなんだろうと一人ため息。

想いを募らせれば募らせる程に
私の想いは成就しないのだと思い知る。

朝はまだ来ない。

「あなたに、抱き締められたままでいたい。」

繰り返し口にしても、虚しさが募るだけ。

たとえあなたの肌に触れて温もりを感じても、
私が満たされる事は無いのだと痛感する。

夜が明け始めれば、私の目に見えるのは
真に深い限りなく漆黒に近い青。

憂鬱に心曇らせながら、
何もできず時ばかりが過ぎて行く。

あなたに従い、想い続ける事しか
出来ない現実に、この部屋はため息で
満たされて、私の姿は見えなくなる。

都合のいい存在としての意義に縋り付き、
あなたの気まぐれな声が掛かるのを待ち続ける。

「あなたに、抱き締められたままでいたい。」

私の声は届かない。あなたの耳元で囁いても。
あなたの心には届かない。この場所で私が叫んでも。
求める想いは四散して行く。青く深く溶け込むように。

ノイズに誤魔化されるように、
私の存在意義は薄れて行く。

限りなく漆黒に近い青に身を沈めたままで。
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