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完全フィクション
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繰り返される、マイナス思考の波。
偽りの希望は、ゾンビの群れを作る。
死んだように生きている。努力しても
報われない。そんな毎日の中で。

いつか見たような政治家の言葉が
今日もまた繰り返される。ああ、そうか。
また僕たちはこんな茶番を見せられている。

インターネットを初めとする情報からは、
TVからもラジオからも新聞からも、
事実は一切伝えようとしていない。
そこには歪曲された情報が転がるのみ。

何処かで見たような気がするのは、
きっと使い古された手口だから。
前向きに生きていく事なんて、
滅び行く地球の上の僕たちには出来なくて。

誤魔化しながら生きて行くしか無いんだ。
誰も彼もが諦めた顔で平静を装う。
同音異義語なんて大層なものでもない、
時代の名前が皮肉にも同じ発音で転がる。

失敗を無かった事にした所で、
何の解決にもなりはしないのに。

「僕たちはもう夢なんて見ない。」

世界はそれほどまでに希望を奪い去り、
出来うる限りの絶望をばら撒いて行った。

「さあ始めよう終末の舞踊を。」

加速する悲哀の中で前向きを気取ったところで、
先の見えない、明るく無い未来に何を見ろと言うのか。
口を揃えて何もかもがやり直せるような事を言う。

「出来るわけが無い。ただ終わりに向かうのみ。」

気休めも励ましも何の意味も持たない。
ここにあるのは、破滅への13階段。

もう少し。もう少しで全てが終わる。
それは今までの上辺だけの希望を
真っ黒に塗り替えるぐらいの絶対的な。
無限に広がる、星々の残酷なドラマ。
気味の悪いぐらい淡々と、現実は下がり行く。

「自分だけが大丈夫だと、本気で思っているのかい?」

それはまるで現実逃避そのもので。
誰もが体感するこの世の終わり。

「もう何をやっても無駄だから。」

全ては応急処置的なものでしか無い。
さあ始めよう諦め切った目のゾンビの群れ。
世界中がソレ色に染まる程に。
だからこそ現実は残酷なままでいる。

逃れられないのだから、楽しもうじゃないか。
それはまるで一つの生き物のような。
けれども決して強い意志の元に
集うようなものでも無く。

耳を劈く様な轟音よりも、何をされてるのか
わからない、鼓膜を震わせる無音の耳鳴り。
頭がおかしくなりそうだ。もう止まらない。

三日月がまるでチェシャ猫の笑う口に見える。
首をかしげてみて初めてそれに気付く。

「さてこの事実が、現実が君には何かわかるかい?」

ふと空を見上げれば、総人類が一人残らず。
NEGATIVEに笑われる。
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ポニーテールってのが流行っていた時期がありまして。
これはその時代のお話。



あの人と同じクラスになってからと言うものの、
毎日あの人に会うのが楽しみで。今日もたくさん
話した。だって目の前にあの人が座ってるから。

「ねえ、好きな髪型とかってある?」

あの人の好みを聞き出したい。

「・・・ポニーテールかな。」

意外とわかりやすい髪形。最近男子に人気あるもんなあ。

「て言うかそれしか無いでしょって感じかな。
好きな人にされたら一発で参っちゃうかも。」

・・・これって、私にしてくれって事なのかな・・・。そうだといいな。
明日は文化祭だし、ちょっと勇気を出してあの人に見てもらおうかな。



そんなこんなで文化祭の日を迎えた。あの人は朝から
部活の出し物でいないみたい。よ~し、見せ付けるぞ。

ふと見ると、友達がポニーテールにしている。あれ?

「・・・なんか今日はそんな気分になっちゃって。」

あの人の前に座ってる私の友達も、同じ髪型。
もちろん私もポニーテール。友達もあの人と仲良いけど、
もしかしてあの人の事好きなのかなあ・・・。



とにかくあの人に見せない事には始まらない。
文化祭のクラスの出し物は無難にこなして、
自由時間をもらってあの人を探した。



・・・いた!



あの人に近づいて行って、肩を叩く。振り返るあの人。
動きが止まる。大きく目を見開いて、微動だにしない。
驚いてる驚いてる。

「どう・・・かな?」

「・・・・・・え、ああ、おう、うん。・・・似合ってると思うよ。」

顔が耳まで赤くなって目が泳いでる。少しは効果あったかな?

「私は~?」

からかうようにやって来た友達。当然ポニーテール。

「あ、うん。いつもと違うけど良いんじゃないかな。」

もはや挙動不審のあの人。何か可愛いな。

友達が同じ髪型にして来たのは計算外だったけど。
でも前から相思相愛だったなんて噂もあるぐらいだし、
当たり前かな。あの人がよそ見せずに私だけ
見てくれたらいいんだけどな。

今日見せたポニーテールは、私の意思表示。
『私はあなたが好きなんだよ。』って言う、私のあの人への合図。
友達には悪いけど、本人に聞いてして来た私には、
あの人との間だけの大きな意味があるから。

私のあの人への告白みたいなもの。
いつかちゃんと目の前で、この口で言わなきゃね。

明日また朝になれば、あの人に会える。今までと違うかな?
ドキドキするな。だって、私はあの人が心から好きだから。
あの人も私を好きになってくれますように。
猫の多い街は、住み心地が良いと言われている。
職場と家が隣町なので、なんとなく国道沿いを歩く。
運動不足の身体に毎日の鞭打ちって奴だ。
車もたくさん通る国道沿いを、何やらもぞもぞと動く影が。



子猫だ。



そうするとこっ恥ずかしいので自粛するが、気持ち的には
ハートマークを五つぐらい付けたい所ではある。

指を差し出すと何故か匂いを嗅ぐ。不思議そうな
眼差しでこっちを見つめる。人懐っこい奴め。

しばらく歩を進めると、今度は先程よりも一回り大きな影。



猫だ。



こっちはハートマークはいらないな。どちらかと言うと
音符マークを付けたい所だ。八分音符。ビートロック大好き。

話が逸れてしまったな。落語の枕の様に、頭に耳なんて
生やくらかしやがって、毛むくじゃらの、髭なんて
生やくらかしやがって、『な~ご』とか鳴きやがる。
なんて事を考えてたら、実際に鳴きやがった。



「な~ご。」



こちらは大人・・・もとい大猫のせいか、こちらを軽快して
一時停止のボタンでも押されたかの如くビタッと止まる。
こちらとしては別に威圧するつもりも無いのだが、向こうとしては
クソバカデカイ生き物が段々と近づいて来るんだ。
警戒の一つもしなければ猫一族の名がすたる。猫科の生き物代表。

パーソナルスペース・・・ではなく言うなればキャットスペースの
間合いに踏み込んだ瞬間、猫は俊敏な動きで去って行った。



・・・ちょっと寂しい。



そんなこんなであちらこちらに見掛けるようになった猫達。
このうるさい中で良くもまあのうのうとゴミ袋を漁れるもんだ。
線路沿いに住んでいると電車の音が聞こえない静寂の方が
落ち着かなくなってしまうと言うあれか。順応ってやつか。

どうせマタタビなんぞを炊けば大量に寄って来るんだろ?
現金な奴らめ。マタタビなんて実物買った事も見た事も無いけど。

以前飲み屋の横や工事現場の端っこにいた子猫達も
もう大きくなっているだろう。以前は良く買い物がてら
挨拶して通り過ぎたものだが。月日の経つのは早いな。



猫って言うのは昔、車が目の前に迫って来ても引き返さない
と言う話を聴いた事がある。だから道で車に轢かれて死んでいる
猫は、きっとわかっていて轢かれてしまったのだなと悲しく
なった事があったのだが。近年になって車から猫を見掛けると、
ちゃんと引き返すではないか。猫だっていつまでも馬鹿じゃ無い。

別に俺は猫でも無いので胸を張る必要も無いのだが、
誇らしく思いながらも猫と人生を振り返ってみた。
人間不信に陥ってからと言うものの、自分に害を為す人間を
拒否し絶縁していたら、気が付けばひとりになっていた。
必然的に両親や祖父母と密に過ごすようになり、
誕生日の夜も、あろうことか実家にて過ごしてしまった。
実家の私鉄最寄り駅のホームで、音楽を聴きながら終電を待つ。



「これからどうなるかなあ・・・。」



先に見えぬ未来と、大切なものが何も無くなった明日を想い、
冷たい透明な空気の中、白い吐息と共にため息を吐く。

自分が愛する人間に対し、何一つ役に立てずに絶望した。
長年付き合いのあった友人に裏切られ、繋がりを絶った。
新しい何かを作り上げる気にもならず。やる気も持てず。

冷め切った虚空の様なぽっかりと何も無いこの心を、
再び何かが満たしてくれるような時が来るのだろうか。

もちろんそれでも付き合いのある人間もいるのだが、
こう心が冷め切ってしまっていては、自分の人生なのに
何だか他人の人生を見つめるが如く。フィルター越しの
景色は色褪せて、まるでモノクロームに見える。

いつ死んでもおかしくはないなと自嘲気味に苦笑しつつ、
終着駅に辿り着いた訳でも無いのになかなか楽しめた人生だったと
これ以上はもう何も無いだろうな、と光の無い眼差しで虚空を見つめる。

街頭の灯りやホームの電気のせいで、この場所からは
夜空の星も見えない。その光景に自分の人生を重ねた。

死にたくても両親や祖父母の事を思うと、自分では死ねない。
いっそのこと誰か殺してはくれまいかと本気で思っていた。
小さな喜びが転がるくらいで、この道の先には何も無いのだから。



あれから数年が経ち、不思議な事に新しい出会いと繋がりが、
今の自分の境遇を幸せなものにしてくれた。諦めていた人生に
たくさんの喜びと温もりがやって来て、自分からも何かをやろうと
言うと気力が沸いて来た。こんな前向きな気持ちは久しぶりだ。

古き良き友人達と再構築した新しい居場所も出来て、夜を明かして
呑んで歌って話して笑って。まるで昔が遠い過去どころか何か
映画か夢でも見ていたんじゃないかと言うぐらいの展開を見せた。

これからの一生を共に出来る、愛する人も見つかった。
偶然の重なりと愛情の積み重ねが成し遂げた奇跡だ。

絶望を知りながら、ひとつひとつ繋ぎ合わせて、組み立てた。
それはきっと信じていないはずの神様に愛されているかのような、
日常のささやかな幸せが心を満たしてくれている。



籍を入れ、かみさんと暮らす事になりました。
生まれ出でた時、周りの人は笑ってくれていて、
私は泣いていた。それからと言うもの、
家族と周りの人たちに愛され、一身に愛情を受けて、
健やかに育つ事が出来たと感謝している。

箱入りと言われても仕方の無いような、
時には厳しく、時には優しく。存分に色々な事を教わり、
背中を見て、自分もこうしようと生きるべき道を
決めるだけの材料は与えてもらったと思う。

もちろんそれは過保護と呼ばれても仕方の無い境遇だし、
だけどそれは誇るべき家族と周りの人たちからもらった
財産だと胸を張って言える。注がれた愛情。



『飴は甘ぇ。』



自分の意思を持ち、一人立ちとは言わないまでも、
夢を抱き、こうなりたい、ああなりたい、こう生きたいと
自分の考えだけで歩き始めて来た道程。

それはまだどうしたらいいかわからず、
夢を思い描きながらもただがむしゃらに
その目的に辿り着く事だけを信じて
ひたすら前を向いて歩き続けた日々。

それは振り返れば無駄な事だったのかも知れない。
しかしながらそれは大きな経験となり、以後様々な
場面で役立つ事となる。ただし、夢に届くには
あまりにも遠く、まるで自分が小さな蟻のように
見上げるそれをただ眺めるが如く。



『アルミ缶の上にある蜜柑。』



たくさんの挫折を知り、自分は夢に、目標に届かない
人間だと諦め、他人に裏切られ、自分が愛すべき
人間に対して何の役にも立てない。それは絶望を味わった
瞬間でもあり、自分の思い通りに行くばかりではないと
痛感した、戒めのような苦痛と悔恨の積み重ね。

失うものと得るものが交差して、混乱しつつも
生きていかざるを得なかった日々そのものであり、
もう繰り返したくは無いと、人間不信に陥っても
尚且つもがき苦しみ、涙すら失ってしまう。

思い知ると言う言葉を何度頭の中で繰り返したのか。
いっそ死んでしまおうかとすら思った。



『カレーは辛ぇ。』



再構築の中で再び色々な大切なものを取り戻し、
愛する人も、大切な友も、家族も。繋がりを取り戻した。

後は生まれた時とは真逆の最期を迎えられたら、
きっとそれは幸せな人生だったんじゃないかと思う。
周りの人は泣いてくれて、私は笑って安らかに眠りたい。

答えを見つけた今は死ぬ事すら恐怖を感じる事も無く。
ただ平等に訪れるゴールを目指して。歩く事さえままならなく
なったこの身体を支える一本のそれは、まるで私が
感じて来た全てを集約するかの如く。



『素敵なステッキ。』



振り返れば、生きて来たのはそんな人生。
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